TURN-028 遠回りの果ての答え合わせ
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
口からため息をこぼし、綾乃は校舎一帯をオレンジ色に染め上げている空の光の方へと視線を投げた
早くに家へ帰る選択肢もあったが、どうせ一人になるのなら部活に残る生徒達の気配がある学校に残る方が良かった。何より昨夜の件の後で、両親と鉢合わせるのはどうにも気が進まなかったのだ
『お母さん、お父さん、お帰りなさい』
『ただいま、綾乃。ご飯はちゃんと食べた?』
『ちゃんと食べたから大丈夫だよ、お茶でも飲む?』
家へと帰って来た両親へ綾乃は夕飯の有無は尋ねなかった、夜遅くに二人が帰る時には社員食堂で食事を済ませている事が分かっていたからだ
いつからか一人で食事を取る事にも、両親へ食事の有無を尋ねなくなった事にも慣れてしまった。自分がいない所で二人がどんな話をしているかは気になるし、寂しくはあるけれどそれだけだ
スーツから部屋着へ着替え直した父親が、母親が好きなほうじ茶を台所へ立って用意する綾乃の腕へ装着された決闘盤に眉を顰めたのはその時だった
『…まだLINK VRAINSに入り浸っているのか』
『……』
『あんな所へ一人で行くのはやめなさいと何度言った?ハノイの騎士もどこに潜んでいるか分からないんだ
…こんな事になると財前くんの妹は分からなかったのか』
『っ…葵ちゃんは何も悪くないよ、葵ちゃんは私の為に考えてくれたのにそんな事言わないで』
『綾乃…!』
母にも、そして父にも迷惑をかけている事は分かっていた。分かっているなら決闘は止めるべきなのだろう、でもこれは綾乃が譲りたくないものの一つになってしまった、今更手放す事なんて
呆れる程に頑固な自分の口から再びため息が漏れている事に気付き、一人で苦笑する。気分転換にあの店長さんがいるお店に寄ってみようか、だけどいらぬ事まで言ってしまいそうだ
あの人達がいる空間はとても心地良くて、優しさを求めてしまいそうになる。両親と、そして葵との衝突―溝を作ったのは他ならぬ綾乃自身、甘えるのは筋違いで迷惑となってしまう
「…あれ、遊作くん?」
「椎名か」
「遊作くんもまだ残ってたんだね」
前方に見えた見知った背中に出来る限り、急いで駆け寄る。こうして好意を寄せる彼に会えたのだから、校舎をふらふらしてみて良かったなと単純に思う
遊作のいつもの冷静な面持ちに少しの違和感を感じ、綾乃は首を傾げる。本当に僅かなのだが、遊作の表情に疲れが見えるのは何故なのだろうか
その疑問を綾乃が口にする前に背中越しに誰かが遊作の名を叫びながら近付いて来る気配に振り向きそうになるが、彼女がそうする前に遊作がその背を押して階段を下りる様に促した
「遊作くんの名前、呼んでるみたいだよ…?」
「…こんな時間までアンタが残っているなんて珍しいな」
「そう、だね…」
自分の質問は上手くはぐらかされ、逆に遊作からこの時間まで校舎に残っている事について指摘され、綾乃は思わず言い淀んでしまった
普段の遊作ならそこから立ち入ってもらいたくない事に気付き、踏み込んでは来なかった。だけど今は踏み込んでみたいと思った
「財前との事以外に気にかかる事でもあるのか」
「え…?」
「…悪い、踏み入り過ぎた」
慣れない事なんてするものではないな、と遊作はすぐさまに自分の行動を恥じた。立ち入るなと察しがついていて、こうする事でその反応が来ても可笑しくない事だって気付いていた筈だ
逆に綾乃は初めてこうなっている自分の事情に踏み込んできた遊作に驚きすらはしたものの、葵の事以外に悩みを抱えている事に気付いた彼の観察眼に感服した
「少し、父とギスギスしていて帰り辛くて。私の事を心配してくれているのは分かっているのだけど、病院を退院してから過保護すぎて…
お父さんの言い分も分かるのについ言い返してしまうの、おかげでお母さんも凄く不安そうで…もっと我慢しないと」
「我慢なんてしなくていいだろう」
被さる様に返って来た返事、それは間違う事無く遊作からの言葉だ
我慢しなくていい、と彼は間髪いれずに返してくれた。それはどうして、何故彼はそう思ってくれたのか、その理由を聞こうと綾乃の瞳が遊作を見上げた
早くに家へ帰る選択肢もあったが、どうせ一人になるのなら部活に残る生徒達の気配がある学校に残る方が良かった。何より昨夜の件の後で、両親と鉢合わせるのはどうにも気が進まなかったのだ
『お母さん、お父さん、お帰りなさい』
『ただいま、綾乃。ご飯はちゃんと食べた?』
『ちゃんと食べたから大丈夫だよ、お茶でも飲む?』
家へと帰って来た両親へ綾乃は夕飯の有無は尋ねなかった、夜遅くに二人が帰る時には社員食堂で食事を済ませている事が分かっていたからだ
いつからか一人で食事を取る事にも、両親へ食事の有無を尋ねなくなった事にも慣れてしまった。自分がいない所で二人がどんな話をしているかは気になるし、寂しくはあるけれどそれだけだ
スーツから部屋着へ着替え直した父親が、母親が好きなほうじ茶を台所へ立って用意する綾乃の腕へ装着された決闘盤に眉を顰めたのはその時だった
『…まだLINK VRAINSに入り浸っているのか』
『……』
『あんな所へ一人で行くのはやめなさいと何度言った?ハノイの騎士もどこに潜んでいるか分からないんだ
…こんな事になると財前くんの妹は分からなかったのか』
『っ…葵ちゃんは何も悪くないよ、葵ちゃんは私の為に考えてくれたのにそんな事言わないで』
『綾乃…!』
母にも、そして父にも迷惑をかけている事は分かっていた。分かっているなら決闘は止めるべきなのだろう、でもこれは綾乃が譲りたくないものの一つになってしまった、今更手放す事なんて
呆れる程に頑固な自分の口から再びため息が漏れている事に気付き、一人で苦笑する。気分転換にあの店長さんがいるお店に寄ってみようか、だけどいらぬ事まで言ってしまいそうだ
あの人達がいる空間はとても心地良くて、優しさを求めてしまいそうになる。両親と、そして葵との衝突―溝を作ったのは他ならぬ綾乃自身、甘えるのは筋違いで迷惑となってしまう
「…あれ、遊作くん?」
「椎名か」
「遊作くんもまだ残ってたんだね」
前方に見えた見知った背中に出来る限り、急いで駆け寄る。こうして好意を寄せる彼に会えたのだから、校舎をふらふらしてみて良かったなと単純に思う
遊作のいつもの冷静な面持ちに少しの違和感を感じ、綾乃は首を傾げる。本当に僅かなのだが、遊作の表情に疲れが見えるのは何故なのだろうか
その疑問を綾乃が口にする前に背中越しに誰かが遊作の名を叫びながら近付いて来る気配に振り向きそうになるが、彼女がそうする前に遊作がその背を押して階段を下りる様に促した
「遊作くんの名前、呼んでるみたいだよ…?」
「…こんな時間までアンタが残っているなんて珍しいな」
「そう、だね…」
自分の質問は上手くはぐらかされ、逆に遊作からこの時間まで校舎に残っている事について指摘され、綾乃は思わず言い淀んでしまった
普段の遊作ならそこから立ち入ってもらいたくない事に気付き、踏み込んでは来なかった。だけど今は踏み込んでみたいと思った
「財前との事以外に気にかかる事でもあるのか」
「え…?」
「…悪い、踏み入り過ぎた」
慣れない事なんてするものではないな、と遊作はすぐさまに自分の行動を恥じた。立ち入るなと察しがついていて、こうする事でその反応が来ても可笑しくない事だって気付いていた筈だ
逆に綾乃は初めてこうなっている自分の事情に踏み込んできた遊作に驚きすらはしたものの、葵の事以外に悩みを抱えている事に気付いた彼の観察眼に感服した
「少し、父とギスギスしていて帰り辛くて。私の事を心配してくれているのは分かっているのだけど、病院を退院してから過保護すぎて…
お父さんの言い分も分かるのについ言い返してしまうの、おかげでお母さんも凄く不安そうで…もっと我慢しないと」
「我慢なんてしなくていいだろう」
被さる様に返って来た返事、それは間違う事無く遊作からの言葉だ
我慢しなくていい、と彼は間髪いれずに返してくれた。それはどうして、何故彼はそう思ってくれたのか、その理由を聞こうと綾乃の瞳が遊作を見上げた