TURN-046 泡沫と灰を抱くキュービック
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一瞬でも心地の良い振動に目を閉じてしまえば、眠ってしまいそうになる手招きを綾乃は必死に拒んでいた
草薙が走らせる車内は重苦しい雰囲気に満たされ、自分以外の遊作や尊も口を開く事はない。時折、感じる視線の主はきっと尊で、この雰囲気を作り出す要因は自分にもあるのだと綾乃は知っていた
「…………」
「綾乃、大丈夫…?」
「…ごめんなさい、頭がその…凄くぼんやりしてて……私がこんな状態になってる時じゃないのに」
「無理もないよ、だってその、」
その後に続くであろう言葉を事前に知ったかの様に、綾乃は察しづく事が出来た
自分への哀れみを見せる尊は車が止まったと同時に『先に行っているから』と言って、先に降りて行ってしまった。車が止まった時刻、それは綾乃が自分の失ったものを改めて自覚した瞬間だった
けれど先程言った様に自分がこうしている訳にはいかない、自分よりも重い現実に直面している子の元へ向かわなければ、そうして後回しにしてきたツケが、車から降りかけた綾乃の手首を掴む
「椎名」
「…遊作、くん?」
「アンタは、いつになったら自分を大切にしようとしてくれるんだ」
「…ごめんね」
「俺は椎名のそんな言葉を聞きたい訳じゃない。ただ──いなくならないでほしいだけだ」
分かっている、遊作が本当に欲しい言葉はこんな言葉じゃない事くらいは
痛いくらいに手首を握りしめる手は綾乃の心臓に伸びたかの様で、ツキツキと泣きそうな程に痛んで息苦しい。大切な、大好きな遊作にそんな悲しい顔をさせる自分を罪悪感が蝕んでいく
―私は、これまでもお母さんや葵ちゃん、そして遊作くん達に助けられてきた。守られて、きた
こんな形で恩返しをしても喜んでくれる訳ないのに、自分を盾にする以外にどうすればいいか分からない
「椎名、行こう。アンタの事を財前が待っている筈だ」
「…うん」
家族や幼馴染、そして遊作以外にも自分を支えてくれる人を綾乃は知っている。その人達を自己犠牲という形で裏切り続けても、綾乃に解答は訪れない
とても幸福な事の筈なのに、沢山の人の優しさに触れれば触れる程にがんじがらめになっていく様で──車外で動きづらい自分の足に気遣い、手を差し伸べる遊作の手を本当は取ってはいけない気が、した
「葵ちゃん」
「綾乃…」
「遅くなって、ごめんね」
「……っ」
抱き留めた自分よりも少しばかり大きくて、いつも自分の手を引いて歩いてくれる少女が今はとても小さく、儚く見えた
「暫く葵ちゃんの傍にいてあげたい、いいかな…?」
「そうしてやってくれ、彼女も綾乃ちゃんがいた方が落ち着くだろうしな…」
「また何か分かったら教えてください」
「ああ、分かった」
「綾乃もあまり無理しないようにね」
兄を守れなかったショックの大きさから挫けぬ様にと、葵を綾乃に任せ、遊作達は財前晃を慕う速水という女性が手配した部屋から退散した
そうしていつもの広場に停泊したキッチンカー内で情報を持ち寄る。LINK VRAINSが閉鎖されてからというもの、この広場に訪れる人は以前よりも少なくなっていた
「Aiは何故、自分に関する記憶を綾乃ちゃんから奪ったんだ…?」
「ログアウトした後に綾乃と話してて分かった事だけど、Aiだけじゃなくて不霊夢に関してもあやふやな部分があって…」
「何にせよ、あの子にこれ以上 協力してもらってもいいものか悩み所だな…どうする、遊作」
「いや、椎名にはこのまま付き合ってもらう」
「遊作…!そんな、本当にいいの?」
「椎名に協力を求め続けるには3つの理由がある
1つーAiが椎名から記憶を奪ったのは、確実に彼女が今回の事を引き起こしたAiの確信に接したからなのは間違いないと思っていいから
2つー俺がそう思うのは椎名が人の心の機微に聡いから。3つー記憶を取り戻すのは誰でもない、彼女にしか出来ない事だからだ」
記憶を奪われたとしても結局、Aiの手に彼女の記憶がある内は綾乃との縁が残っているということ
最初こそは晃からの招集と要請で始まったこの一件ではあるが、もうすでに綾乃にとってもこの事件は他人事ではない──その事実に遊作は誰よりも先に気付いていたのだ
「草薙さんに、頼みがある」
「ん?何だ?」
「Aiと再び会う事になった時、椎名のバックアップを俺以上にかけてやってほしい」
「綾乃はすぐに無理するからね…でもさ、そういう言葉を聞くと──」
「…?」
「ああ、そうだな…尊が言いたいのはこういう事だろう?
しっかりと綾乃ちゃんを大事にしてる彼氏の貫禄がついてきたな、遊作ってな」
「…………」
草薙の尊の意図を汲み上げた言葉によって、車内が絶対零度に冷え込む
今更、冗談とも言えない眼光の前にAiのいない現実は笑いが少ない事そのものを指すのだと実感するのだった
草薙が走らせる車内は重苦しい雰囲気に満たされ、自分以外の遊作や尊も口を開く事はない。時折、感じる視線の主はきっと尊で、この雰囲気を作り出す要因は自分にもあるのだと綾乃は知っていた
「…………」
「綾乃、大丈夫…?」
「…ごめんなさい、頭がその…凄くぼんやりしてて……私がこんな状態になってる時じゃないのに」
「無理もないよ、だってその、」
その後に続くであろう言葉を事前に知ったかの様に、綾乃は察しづく事が出来た
自分への哀れみを見せる尊は車が止まったと同時に『先に行っているから』と言って、先に降りて行ってしまった。車が止まった時刻、それは綾乃が自分の失ったものを改めて自覚した瞬間だった
けれど先程言った様に自分がこうしている訳にはいかない、自分よりも重い現実に直面している子の元へ向かわなければ、そうして後回しにしてきたツケが、車から降りかけた綾乃の手首を掴む
「椎名」
「…遊作、くん?」
「アンタは、いつになったら自分を大切にしようとしてくれるんだ」
「…ごめんね」
「俺は椎名のそんな言葉を聞きたい訳じゃない。ただ──いなくならないでほしいだけだ」
分かっている、遊作が本当に欲しい言葉はこんな言葉じゃない事くらいは
痛いくらいに手首を握りしめる手は綾乃の心臓に伸びたかの様で、ツキツキと泣きそうな程に痛んで息苦しい。大切な、大好きな遊作にそんな悲しい顔をさせる自分を罪悪感が蝕んでいく
―私は、これまでもお母さんや葵ちゃん、そして遊作くん達に助けられてきた。守られて、きた
こんな形で恩返しをしても喜んでくれる訳ないのに、自分を盾にする以外にどうすればいいか分からない
「椎名、行こう。アンタの事を財前が待っている筈だ」
「…うん」
家族や幼馴染、そして遊作以外にも自分を支えてくれる人を綾乃は知っている。その人達を自己犠牲という形で裏切り続けても、綾乃に解答は訪れない
とても幸福な事の筈なのに、沢山の人の優しさに触れれば触れる程にがんじがらめになっていく様で──車外で動きづらい自分の足に気遣い、手を差し伸べる遊作の手を本当は取ってはいけない気が、した
「葵ちゃん」
「綾乃…」
「遅くなって、ごめんね」
「……っ」
抱き留めた自分よりも少しばかり大きくて、いつも自分の手を引いて歩いてくれる少女が今はとても小さく、儚く見えた
「暫く葵ちゃんの傍にいてあげたい、いいかな…?」
「そうしてやってくれ、彼女も綾乃ちゃんがいた方が落ち着くだろうしな…」
「また何か分かったら教えてください」
「ああ、分かった」
「綾乃もあまり無理しないようにね」
兄を守れなかったショックの大きさから挫けぬ様にと、葵を綾乃に任せ、遊作達は財前晃を慕う速水という女性が手配した部屋から退散した
そうしていつもの広場に停泊したキッチンカー内で情報を持ち寄る。LINK VRAINSが閉鎖されてからというもの、この広場に訪れる人は以前よりも少なくなっていた
「Aiは何故、自分に関する記憶を綾乃ちゃんから奪ったんだ…?」
「ログアウトした後に綾乃と話してて分かった事だけど、Aiだけじゃなくて不霊夢に関してもあやふやな部分があって…」
「何にせよ、あの子にこれ以上 協力してもらってもいいものか悩み所だな…どうする、遊作」
「いや、椎名にはこのまま付き合ってもらう」
「遊作…!そんな、本当にいいの?」
「椎名に協力を求め続けるには3つの理由がある
1つーAiが椎名から記憶を奪ったのは、確実に彼女が今回の事を引き起こしたAiの確信に接したからなのは間違いないと思っていいから
2つー俺がそう思うのは椎名が人の心の機微に聡いから。3つー記憶を取り戻すのは誰でもない、彼女にしか出来ない事だからだ」
記憶を奪われたとしても結局、Aiの手に彼女の記憶がある内は綾乃との縁が残っているということ
最初こそは晃からの招集と要請で始まったこの一件ではあるが、もうすでに綾乃にとってもこの事件は他人事ではない──その事実に遊作は誰よりも先に気付いていたのだ
「草薙さんに、頼みがある」
「ん?何だ?」
「Aiと再び会う事になった時、椎名のバックアップを俺以上にかけてやってほしい」
「綾乃はすぐに無理するからね…でもさ、そういう言葉を聞くと──」
「…?」
「ああ、そうだな…尊が言いたいのはこういう事だろう?
しっかりと綾乃ちゃんを大事にしてる彼氏の貫禄がついてきたな、遊作ってな」
「…………」
草薙の尊の意図を汲み上げた言葉によって、車内が絶対零度に冷え込む
今更、冗談とも言えない眼光の前にAiのいない現実は笑いが少ない事そのものを指すのだと実感するのだった