Memoria:14 綻んだ距離に紫立った花弁で埋めて
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「いや~青春だねぇ~」
「茶化すな、パスカル。よし、それでは無事に解決した事を報告に帰るとするか」
パスカルの言葉に会話を切るタイミングを見出し、ラティア達はマリクの言葉通りに二人の無事を伝える為にラントへと戻る
領主邸の執務室の丁度対岸の部屋でベッドに寝かされたレイモンと帰りを待っていたヒューバートがいた
「ラティア!シェリア!無事で良かった……今回の件は全てぼくの管理不行き届きが原因です、申し訳ありませんでした」
「私たちはこうして無事に帰って来れました、だからこの事は水にお流し下さい」
「過ぎた事はもういいわ、それより……」
頭を深く下げるヒューバートを責める事なく、気にしていない素振りと言葉をかけるとシェリアはベッドに寝かされているレイモンに近付く
彼の息は浅く、服に滲んだ血の量から見ての症状にシェリアは眉をひそめる
「ひどい傷……」
「一体どうして…」
「追いつめられて発作的に自らを刺してしまったんです、なんて浅はかなまねを……」
「もう大丈夫ですよ。今、治療しますからね」
あろう事かシェリアはラティアと共に自分を死に追いつめたレイモンに治癒術を展開し始めた
彼女の行動が理解出来ずに呆然としていたレイモンは問う、危機に貶めた自分をどういうつもりで助けたのかとその言葉にシェリアは首を横に振る
「もうその事はお互い忘れましょう」
「会話の途中に失礼します、酷い汗ですので…出来れば後で替えの服を持って来て頂いて下さい
そのままでは傷の熱ではなく汗が冷えて体を壊してしまう可能性がありますから…」
「あなた達……」
「これからは無茶な事はしないで下さいね」
「……は、はい、わかり……ました……」
シェリアの治癒術が済んだのを見計らい、ラティアはレイモンの額に浮かんだ汗を近くに置いてあった手拭いで拭い、他のケアも忘れない
二人の気遣いの言葉にレイモンは何か思う事があったのか、最初の頃の会話にあった棘がなくなっていた
「では俺たちは予定通り信書を届けにストラタへ行こう……ラティアとシェリアもついて来てくれるか?」
「あ、うん、もちろん!」
「はい、アスベル様のお力添えをさせて下さい」
「よ~し、それじゃしゅっぱーつ!」
「あ、ちょっと待って下さい。これを
広場で渡そうと思ったんですが、あんな騒ぎになっていて渡せなくて……」
騒ぎが収束し、いよいよストラタへ向かおうとするラティア達を引き止め、ヒューバートは小袋をアスベルへと手渡す
小袋に首を傾げるアスベルにヒューバートは言葉を濁しながら、それはお守りだと伝えた、彼なりに兄が心配なのだろう
「さあさあ、行くなら早く行って下さい!」
「ああ行ってくるよ、ヒューバート」
「行って来ます、ヒューバート様」
急かされるがままに部屋を後にした背中達を見つめながら、ヒューバートはその眉間の皺を緩め、ただ一言
「……気をつけて」
綻んだ距離に紫立った花弁で埋めて
(共に成長した少女達は青年の背でなく、隣に歩む)