Memoria:13 宛らくるくると回る旋華のよう
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「記憶がなくても私は私…昔の記憶が全てでなく、無くした分よりもたくさんの思い出と今の私達の絆を築く…」
「!ラティア、それは…」
「ちゃんと覚えています、7年前に取り残された私にアスベル様がかけて下さった初めてのお言葉ですから…」
「…そうか」
つい先程まで一緒にいた取り残された彼女にかけた言葉をしっかりと胸に刻み、アスベルを見上げ柔らかく微笑むラティアに彼もまた微笑み返した
ああ、本当に彼女は帰ってきたのだなと再認識し、三人は未だに戦いの傷跡が残るラントへと戻って来た
戦いによって削られた地面には傷だらけの兵士や領民達が倒れており、彼らをシェリアや救護班が慌ただしく診て回っている
そんなシェリアにバリーが包帯と薬が入った箱を手渡した所でラティア達が歩み寄った
「アスベル様、ラティア……」
「何か手伝う事はあるかな?」
「……自分たちの事は自分たちでやれますから肝心な時にいなくなっていたお方に頼るほど、俺たちは愚かではありません
頼るならヒューバート様を頼ります」
「…バリーさん、変わりましたね…私の知ってる貴方がいなくなった事に少なからず悲しく思います、何も…分かろうとしないなんて貴方らしくない」
「知った様な口を…」
「ラティア、良いんだ」
「…ごめん、なさい…」
バリーは心からラントを愛してるが故、何も出来ずに領地を戦いに巻き込んだアスベルが許せないでいるのだろう
それでもそれが分かっていてもラティアには彼に対する侮辱を許せず、静かな口調の中に微かな怒りを滲ませてしまった
「バリーさんは……誤解してるんです……」
「バリーは俺が七年間、王都へ行ったきりだった事も含めて、ああ言ってるんだろう
俺がずっと不在だったのは事実だしな、立場をわきまえず、自分の事だけ考え行動していた
俺は……ラントにいない方がいいのかもしれないな……」
「またいなくなってしまうの……ヒューバートだって、もしかしたらいなくなるかもしれないって言うのに……」
「ヒューバート様が…?」
「どういう事だ、シェリア?」
「ストラタ軍の方に聞いた話なんだけど……なんでもヒューバートのやり方がストラタ本国によく思われていないらしいの……それでヒューバートに本国への召還命令が届いたとか……」
「召喚命令……?それでヒューバートはどうするつもりなんだ?」
ストラタの軍人に聞いたと言っても、ヒューバートの意志までは分からないとシェリアは申し訳なさそうに呟いた
今、バリーも頼っていると彼がいなくなれば、ラントは手薄になる、どうにかしてヒューバートを引き止める為にアスベルは領主邸へと駆け出す
―またみんな……離ればなれになってしまうの……ラティアも折角帰ってきてくれたのに…そんな……そんなの……
「シェリア様…っ?」
続いて、シェリアまでもがアスベルの後を追って駆け出し、その場にはラティアとソフィが置き去りとなってしまう
自分はどうするべきか、だが幼いソフィをここに置いて行く訳には…そんな風に迷っていると袖を引かれる
「ソフィ…?」
「行って、ラティア」
「え…でも…貴女が…」
「わたしなら平気、だから…ね?」
「…ありがとう、ソフィ…直ぐ帰ってくるからね」
柔らかく微笑むソフィの気遣いに感謝し、その頭を再び優しく撫でると二人の背を追って、ラティアも駆け出した
*** * ***
「ヒューバート、ストラタから召喚命令が来たと言うのは本当なのか?」
「誰にそんな事を……ええまあ事実です、大統領閣下の名で出された指令ですから、抗う事は難しいでしょうね」
「お前のやり方はストラタ本国の意向に沿っていないと聞いた、もしそうだとするとお前が向こうに戻ると……」
「総督の地位を解かれ、二度とここへは来ない可能性もあるでしょうね」
「本国の意向に背いているのはラントの為か?」
「目先の利益を追うより、将来的な展望に基づいて事を運ぶ方が得だからですよ
ぼくはストラタの軍人です、それが当たり前でしょう」
「俺は……お前にはここに残って欲しいと思ってるんだ、今のラントにはお前が必要だ。
この地が置かれている状況を目の当たりにして痛感した、お前にはラントの今後の指針を定め、かつそれを実現するだけの力がある
悔しいがどちらも俺にはないものだ……今のラントを守れるのはお前だけなんだ、頼む……!ヒューバート!」
自分の非力さを痛感し、尚かつラント領民が必要としているのは自分でなくヒューバートであるのを分かった上で眼鏡の奥の瞳に向かって訴える
それに対して、名目上の現領主としての言葉とは思えず、この土地を他人に支配される事にどうとも思わないのかという領主としての在り方への問い、だがアスベルは首を横に振った
「他人じゃない、お前は俺の弟だ」
「な……」
「今、俺がラントの為にできる事はお前の力になる事だけだ。お前ならラントの事を思ってくれると信じているから……」
「せめて時間があれば……」
「時間があればなんとかなるのか?」
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