Memoria:5 朽ちた筈の秒針が息を吹き返す
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「あなた、どこから来たの?
私たち、あなたにとてもよく似た女の子を知っているのよ」
「……?わからない、あなたたち、誰?」
「やっぱり違うわよね……」
「いや、きっとこの子は……」
「ソフィは七年前に死んでしまったのよ
そうやって自分に都合のいいように考えないで」
「ねえ、どうしてその子は死んじゃったの?」
「え……?それは……」
少女をソフィの代わりにしようとするアスベルを叱咤したシェリアに少女は子供特有の無邪気故の残酷な疑問を投げかけた
自分達の心に暗い影を落としたままの思い出、答えを口籠る彼女に変わり、アスベルが答案を出した
「俺たちを守ってくれたんだ、もう一人の大切な幼馴染みと一緒に
きっと彼女達が俺たちを大切に感じてくれていたからだと俺は信じているよ」
「……?もう一人の幼馴染みは死んでないの?」
「ああ、ずっと眠ったままなんだ…街に行ったら会ってみるつもりだから、一緒に会ってみるか?」
「うん、会ってみたい」
そんな約束を作り、ラントへ戻ると真っ先にシェリアは負傷者達の手当に向かい、同行を終えてしまった
フェンデル軍は一先ずは後退はしたものの、未だラント領に入り込んだままだとバリーが気難しい顔で状況説明をする
「奴らは国境砦の手前に野営地を築いておりまして、そこを叩かない限り、本当に奴らを後退させる事はできないと思います」
「野営地の詳しい場所はわかるか?」
「はい、以前アストン様詳しい報告書も提出しています」
「そうか、屋敷へ戻ったら見てみよう」
「あ、それとアスベル様、ケリー様とフレデリックさんがお屋敷でお待ちです」
「わかった、すぐに行く」
伝えるべき事を全て伝い終わったバリーは一つお辞儀をするとその場を後にした
その場で物思いに耽るアスベルを少女が現実に引き戻し、二人はケリーとフレデリック、そして彼女が待っている屋敷へ戻る
「アスベル!」
「母さん……ただいま戻りました」
「よかった……!あなたが帰ってきてくれて、本当によかった
お父様があんな事になって、これからどうなるのかと心配で心配で……」
「心細い思いをさせて、すみませんでした」
アストンの葬儀は無事に済まされた後だったらしい
跡取りである彼が帰ってきた事により、ケリーは後押しをする様に彼を頼りにするが
「……俺が帰ってきたのは母さんやラントの様子を見るためで……」
「アスベル、あなたまさか……こんな状況だと言うのにまた王都へ戻るというのですか」
「母さんの言いたい事はもちろん分かっています、でも少しだけ時間を下さい、考えを……整理する時間を……」
彼が言わんとする事が分かったのか重い雰囲気がその場を支配する
そこからアスベルを助ける助け舟を出す様にフレデリックが間に入る
「アスベル様のお部屋は以前のままにしてあります、今までのようにお使い下さい」
「ありがとうフレデリック、ソフィ、俺は部屋へ行くが来るか?」
「…会いたい人」
「!ああ…フレデリック、ラティアは…」
「こちらでございます」
「アスベル……」
「すみません、母さん」
フレデリックに案内されるがままに逃げる様にアスベルはソフィを連れ、その場を後に
屋敷内部は何も変わっていない、いつも自分を出迎える彼女の声がないくらいである、二階の奥、普段ならば日当りが良いのであろうその部屋に"彼女"はいた
「…!」
「お綺麗になられたでしょう?この七年の間に」
「ああ…一瞬誰かと見間違うくらいだ…」
真っ白なシーツに包まれた少女、否大人に成長し初めている彼女にアスベルは目を奪われた
蒼と紫が入り交じったその髪はベッドから垂れる程に長くなり、顔色は七年前よりも雪の様な純白、女性となったラティアがそこにはいた
「アスベル、この人がアスベルの大切な人?」
「た、大切って…」
「だってアスベルの見る目、とてもあたたかい」
「ああ…そうだな、彼女…ラティアはいつも俺と一緒にいてくれた大切な子だから」
「ラティア…」
「…ラティア、帰るのが遅くなってすまない、それでもあの時よりは強くなった筈なんだ
今ならラティアを守る事も出来る、だから…早く、早く目を覚まして、俺を見てくれ…っ」
細い華奢な手を折れない様に握り締め、アスベルは悲痛な表情で祈る様に呟くがそれでも彼女の瞳が開く事はない
今、焦っても仕方ない、彼女が同じ様に成長し生きている事を喜ぶ事が先決だ
「ただいまラティア、クロソフィの花、摘んで来たよ」
―おかえりなさい
朽ちた筈の秒針が息を吹き返す
(何処か遠くで彼女の声が聞こえた気がした)
(それはここが再び始まりだと言うかの様に、)