Memoria:21 疑心という後ろ道には戻れない
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「本当本当、帝都に来る途中ででっかい穴が道に空いてるの見たでしょ?あれ、輝石の力が暴発して出来たんだよ?しかもこれくらいの大きさの」
彼女が提示するのは自分の目程の感覚を人差し指と親指で広げる、それはきっと輝石に換算するならば小石程度のものなのだろう
小石程度の輝石があれ程の穴を作り上げた、そしてその倍の大きさを持つ大輝石が暴発したとなれば…確かにパスカルの焦りようは頷けた
「ねえパスカル……あなた、どうしてそんな事を知ってるの?」
「あの穴作ったのあたしだから。だからまずいんだって、たぶん大輝石の実験に使われてるのもあたしの技術だよ
闘技島で兵士が持ってた武器がそうだったからね、基本原素が一緒だったからすぐわかったよ」
「実験に用いられているのはアンマルチア族の技術じゃなかったのか?」
「あたし、アンマルチア族だもん」
「そ、そうだったのか?」
「あれ、言ってなかったっけ?」
「だからアンマルチア族が作った地下遺跡の装置も動かす事が出来た、んですね…何だか納得しました…」
ベラニックの街の目の前に値する道の脇にあったあの大穴が彼女の仕業だっただけでも相当の衝撃だというのに、追い打ちをかける様にアンマルチア族である事を打ち明けられ、動揺が彼らの中で広がる
それを構う事なくパスカルはあっけらかんとラティア達に自分―アンマルチア族の里へ行く事を提案する
「そこへ行けば色々詳しい情報が手に入るよ、大輝石のある場所もわかるかも」
「アンマルチア族の里というのはここから近いのか?」
「すごく近いって程でもないけど、一応同じフェンデルの中だから」
「そうか、そういう事なら……」
「待ってください」
アスベルがパスカルの提案を呑もうとするのを遮り、今まで傍観役に徹していたヒューバートが冷たい面差しでパスカルに近付き、誰もが疑問にし敢えて言葉にしなかった事を問う
拒否権を与えない声色は自分達に向けられているものではないというのにこちらまで緊張感を高められ、体の芯が凍ってしまいそうだった
「なぜ今までアンマルチア族だという事を黙っていたんですか、何か都合が悪い事でもあるからなんじゃないんですか」
「え?何も聞かれなかったから言わなかっただけだよ」
あくまでいつも通りのパスカルに今まで積もりに積もっていた怒りと不信感を隠す事なく表情に出しつつ、同時にマリクにも追求をかける
「それとあなたもです、先程の演技はあまりにも堂に入りすぎていた。案外あれは真実だったんじゃないですか?」
「ヒューバート、よせ」
「兄さんは怪しいと思わないんですか?」
「ヒューバート、君の指摘は正しい。オレはこの国の出身だ、もっとも戻ってきたのはかれこれ二十年ぶりになるか」
「やはり……!兄さん、ここまでわかってもこのふたりと行動を共にする気ですか?
彼はフェンデル人である事を隠し、彼女はアンマルチア族である事を聞かれなかったからと言わずにいた
フェンデル人やアンマルチア族は平気で嘘をついたりごまかしたりするんですか?ぼくは……隠し事をする人は昔から嫌いなんです、こんな人たちと行くのはごめんだ」
「ヒューバート……」
「どうして、ですか?」
兄であるアスベルに制止をかけられても止まりはせず、最初からマリクとパスカルを信じるに値しないと潜入感を持つヒューバートにぽつりと呟かれた問いかけ
それは吹雪の中に掻き消されそうな程にか細いものだが確かに聞こえた、発声源は悲しげに瞳を揺らがせながらも真っ直ぐな視線を向けるラティアから
「どうして…二人を信じて下さらないのですか?パスカルは大蒼海石を治す事に惜しみなく手を貸してくれました、教官だって先程私達を助けて下さいました
ヒューバート、がこの旅に加入する前だって何度も二人に助けて頂けました、二人は十分に信用するに値する方です…!考えを改めて下さい…っ」
「ラティアのその言葉は現実から目を反らしているのと同じです、こちらが信用しても彼らは信用していなかった、だから何の弁解もしない、そうではないですか?」
「それは…っ」
「ここにいたぞ!」
「!」
情け深く他者を疑う術を知らず、二人を信じたいという気持ちと共にヒューバートにも彼らを信じてもらいたいという想いをラティアは振り絞るも返ってくるのは同情にも似た変わらない意志
彼の言葉に喉がつっかえたラティア達へと先程退けたフェンデル兵達が再び銃を構え包囲する
「貴様は一体何者だ?マリク・シザースという人物はとうに死亡しているではないか!」
「なるほど、そういう扱いになっていたとはな」
「貴様らの身柄を拘束する、全員集合!こいつらを捕らえろ!」
「まずい……ひとまず帝都の外へ脱出しよう!」
ここで捕まる訳にも行かず、弁解の言葉も発さずにラティア達は街を脱出する為に一目散に当てずっぽうに道なりに駈け出す
坂や階段が多いザヴェートの街はいつもよりも体力の消耗が酷く、直ぐに息が上がってしまう、肩で息をしながら階段を駆け上がる
「っぁ…!」
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