Memoria:20 境界線は困窮の内に曖昧へと
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
―変わっていないな……ここも……それどころか……あの頃よりも状況は悪くなっている……
「教官、また昔の事考えてたの?」
「あ、ああ……」
痛ましげに街の状況を見つめ、物思いに没頭する自分に歩んで来たソフィの問いかけが的を射た為かマリクはどもった返答を返した
過去に没頭する姿に自分を重ねたのかソフィはマリクに昔の事を考えると苦しいか二つ目の問いを投げかける
「……そうだな、なすべき事をなせなかった己の弱さのせいでこの今があると思うと……」
「なすべき事を……なせなかった……」
―わたしも昔に何かをしようとしていた気がする……アスベルたちを守る事?ううん、違う……もっと大切な何かを……
「ソフィ…?」
「大輝石に関する情報が手に入るかもしれません、町の人間に話を聞いてみましょう」
マリクの次はソフィが過去に没頭してしまうもののヒューバートにその場をしきられ、行動も決められた事から二人は過去から現実に立ち戻った
街の人間に話を聞くも話題は大輝石よりも先程見た道程にあるクレーターばかりが話に持ち上がる、街の入口から北東の空き地へ向かうと二人の小さな少女と少年がせっせと地面に落ちている何かを拾っているのを見つけた
「あの子たち、何を拾っているんだ?」
「こんなに寒いですのに……」
「……砂ほどの大きさしかない輝石のかけらだ」
「輝石のかけら……?」
「そんなものを拾ってどうする気でしょうね」
「……かけらを集めて、ストーブの燃料にするんだ」
「ストーブの……?」
シェリアの問いかけに答えず、マリクは輝石のかけらを拾い続ける子供達に歩み寄るとかけらの収集は滞りなく進んでいるかと聞くものの子供達はあまり集められていないと声色を落とす
子供達が言うには自分達の家は宿屋なので自分達の分だけでなく客の分も集めなければならないもののかけらは少なく、子供達は帰りに帰られない様であった
「燃料用の輝石は流通していないのか?」
「この国は輝石の産出量が少なく、そのほとんどを帝都に住む富裕層が利用している
人々の暮らしが困窮しているにもかかわらず政府は動こうとしない……それがこの国の現実だ」
「じゃあこの街の有り様はそのせいで……」
「輝石が手に入らないなんてラントじゃ考えられないな」
「ストラタだって誰でも好きなだけ使えるというほど出回っているわけじゃありません。しかしこの状態はあまりにも……」
―これが……今までずっと敵国だとしか思っていなかったフェンデルの実態なのか……?
「はっくしゅん!にいちゃん、寒いよぅ」
今まで敵国としか見なかったフェンデルの内部事情を目の当たりにしアスベルは声をなくしている、この国程の困窮を彼らは知らないから尚の事絶句したのだろう
くしゃみをした少女は寒さに体を震わせており、兄である少年が妹の額に手を当てた所、熱がある事に気付くと先に家に帰る様に気遣う、だが妹はかけらが集まっていない事に渋る
「でも……まだぜんぜん集まってないよ」
「大丈夫だって、いざとなったらストラテイムの角を取って来るよ」
「ストラテイム!む、無理だよにいちゃん、やられちゃうよ」
「む、無理でもなんとかするさ。おれだって男だ、まかせとけ」
「ストラテイム……それは子どもでも倒せるような魔物なんですかね」
「いいや無理だ、ストラテイムは輝石のかけらを食べる魔物で非常に凶暴だ
ストラテイムの角には摂取した輝石のかけらの原素が蓄積するんだ、そのため取ろうとするものが後を絶たないが……毎年のように犠牲者が出るのだ」
「ストラテイムの角か……」
「ちなみにここへ来るまでにオレたちは既に何個かストラテイムと戦っている」
「そうだったんですか?なら角も……」
「魔物が落としたものは確かパスカルが……」
「ちょっと待って、数えてみるから。えーと……」
ラティアが言った様にいつの間にかパスカルはストラテイムと戦った際に落としていた角を回収しており、彼女が数えた所、その数は十分なものだった
自分達には不必要なもの、尚かつ戦って偶然的に拾ったものに執着はなくその角を子供達に手渡すと突然の出来事に狼狽えてしまう、更に風邪の兆候を見せる少女に近づき、シェリアが診る
「……風邪のようね、早く暖かいところで休ませた方がいいわ。あなたがお家に連れて帰ってあげて」
「で、でも……」
「たまたま拾っていた物だ、気にしなくていい。それよりも早く妹さんを休ませてあげたほうがいい」
「引き時が肝心ですから今から十分に休んだらすぐに良くなると思います、たくさん水を飲んで、たくさん眠れる時は寝させてあげてください、お大事に」
「ありがとう、お兄ちゃんたち。いくぞ、立てるか?」
角をしっかりと手に持ち、妹を引き連れて少年は家への帰路についた、この時ばかりは自分達が拾ったものが役立った事に良かったという声が漏れた
その後も聞き込みを続けたもののめぼしい情報は手に入らず、気温が下がって来た事に夜が近づいている事を悟り、聞き込みを打ち切ると宿屋へと向かう
街の奥に位置する宿屋の前では一人の女性が待ちかねていた様にラティア達へと駆け寄って来た、彼女は先程の二人の子供の母親だと言う
「まあまあまあ、あんたちだね!うちのチビたちに貴重なストラテイムの角を譲ってくれるなんて……」
「たまたま持っていただけです、どうか気にしないでください」
「いやぁ……たまげたね……ストラテイムの角は燃料になるってわかっててもうちらじゃとても手が出ない
本当にありがとう、大切に使わせてもらうよ」
「……あのお嬢ちゃんの様子はどうですか?」
「ああ、大分落ち着いてきたよ。あんたたちのおかげさ
ストラテイムと戦って疲れたろう、お代はいいからうちの家に泊まっていっとくれ」
「いや、俺たちはそんなつもりでは……」
「チビたちの恩人にささやかなお礼だよ、じゃあ部屋をあっためて待ってるからね」
.