Memoria:23 もし、この先に別れがあるのなら
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「ねえフェルマー、その入館証、ちょっと貸してくんない?
あたし、前から一度政府塔の中に入ってみたかったんだ」
「ええ?でも……」
「お願い!すぐ返すから、ちょっと中を見物してくるだけ」
「わかったわ、他ならぬパスカルちゃんの頼みですもの」
「フェルマーありがと!恩に着るよ!」
自分の顔の前で両手を合わせるだけでなく頭を低くしてまで懇願するパスカルに折れたフェルマーから入館証を預かり、ラティア達は政府塔手前まで歩み寄る
「ここが政府塔か、カーツさんに会えるといいが」
「カーツという人はあなたの知り合いでしたね、名前が出た時、随分と驚いていたようですが一体どんな方なんですか?
場合によっては戦う事も覚悟しなければなりません、教えていただけませんか」
「元々オレはフェンデル軍の士官学校にいた、カーツはその時の同期だ。オレがいた二十年前からこの国は苦境にあった
ただでさえ気候が厳しい上に大輝石の恩恵もない、国民の大半は生活に苦しんでいた。それなのに上層部の人間は国民を省みる事もなく、私腹を肥やす事に汲々としていたのだ
そんな状況を打破しようと若手将校が中心となった改革運動が盛んになった事がある、オレやカーツも改革の理想に燃え、運動を成功させるために情熱を傾けた」
「その結果は……どうなったんですか?」
アスベルからの当たり前の問いかけにマリクは一瞬の間を起き、返答の言葉を口にした、国の内部での反乱分子であった彼らは保守派勢力の弾圧に当たり前の様に摘まれた
その時に彼は故郷を捨てる意志を固めたがカーツは彼とは違う決断を自分に下したと言う、理由は完全に消えた訳でもない改革の灯を消さない為に
「命は捨てても志は捨てず、オレの知っているカーツとはそういう男だった……国を捨て、志を捨てたオレがアイツに会って話をしても受け入れられるかどうかわからん
カーツは理知的な男ではあるが、同時に鉄のように固い信念の持ち主でもあるからだ」
「それでも俺たちは可能性に賭けてみるべきだと思います」
「……そうだな、カーツの下へ行ってみよう」
かつてのマリクが得て捨てた親交を聞き、ラティア達はいよいよ入館証を携え、政府塔の入り口へと踏み込む
だがやはり政府塔に入るには風貌が怪しい彼らをこの街に来た時と同じ様に兵士達が取り囲んで来た
「お前たち、見ない顔だな」
「フェルマーが体調を崩したものでその代理で来ました」
「代理……?随分人数が多いな」
「……本日の作業には人手がいるので仲間にも来てもらいました」
「良かろう、通っていいぞ。ただしその入館証で入れるのは一階のみだ。それ以外の場所には立ち入ってはいかんぞ」
「はい」
マリクの口八丁に乗せられ納得した兵士達は再び定位置の扉の左右に退き、ラティア達は政府塔内部へと侵入した
「また教官の機転で助かったね」
「まあそうですね……」
「嘘がうまい奴だと思ってくれてかまわんぞ」
「政府塔への侵入にはなんとか成功したが……問題はここからだな」
「そうね、早くカーツさんの居場所を見つけ出さないと」
「軍の方に不審がられない様、慎重に行きましょう」
ラティアが言った様に侵入して兵士達に追い出されては次はない事を脳裏に焼き付け、兵士の目を掻い潜ると階段下のメンテナンス用のエレベーターで39階へと上る
この上の階にはこれ以上メンテナンス用エレベーターで行く事は出来ず、階段で地道に上階へ、42階にまで至るとそれ以上の階に行く為の階段は設置されておらず、代わりに一つの部屋が用意されていた
室内はこの国の大輝石の図形図と世界地図、事細かな文面が走り書きされたメモがボードに張られていたものがある
「ここがカーツ氏の部屋か、どうやら本人は不在らしいな」
「カーツさんいなくて残念?」
「そうだな、だが……いなくてほっとしている気持ちがあるのも事実だ
実際どのような顔をしてあいつに会えばいいのか決めかねている部分もあったしな……とにかく急いで情報を集めよう」
時間がないという事もあり、纏まったままで動かず、単独で各々が大輝石に繋がる情報および実験の情報がどこかにないかと探し始める
そんな中で部屋の中心に設置されていた机に置かれていた書類に目をつけた、それに集まったパスカルがその書類の内容に理解を示した
「ちょっと待ってね、ふんふん……あ~なるほど、あそこにあったのか~帝都を出てすぐ近くにある流氷の中に隠されてるみたい」
「流氷の中…というのは驚きましたが、大輝石の所在はこれでわかりましたね」
「あんな所に……?ここからは目と鼻の先に等しいぞ」
「そんなに帝都に近いともし大輝石に何かあったら大変な事になるわ」
「誰か来る」
自分達の行動に気付いた兵士達の追っ手かと警戒し武器を手に扉の左右へと各々が張り付き、来るべき襲来者へと備える
だが警戒していたというのに室外から現れた何者かは扉の左右に張り付いていたアスベルの首元に武器を突きつけ、もう一方の武器はマリクの武器と交差していた
「アスベル…!」
「マリク……?お前だったのか」
「相変わらずの技の切れだ、さすがだな。カーツ」
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