Memoria:55 ハナミズキの花を私からあなたに
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「アスベルとラムダだけに危険なことを任せるなんて、そんなこと……」
「俺は大丈夫だ」
「っ……お願いです。もう危険なこと、しないで……
私、またアスベルが危険な目に合う所を見たく、なんかない」
そう心苦しそうに告げるラティアの脳裏にはかつてのエフィネアの星の核での出来事が過っていた、ソフィがラムダと対消滅するのを防ぐ為、アスベルの精神がラムダに連れて行かれた時のことだ
あの時もラティアは魂の抜けたアスベルの体を抱き締め、その帰りを生きた心地がしないままに待ち続けていた、それをまた繰り返さなければならないというのか
「ラティア……それでも、俺は……」
「……ごめん、なさい」
幾ら思い人からの言葉だとしても、尚アスベルの意志は揺らがない、ラティアに心苦しい思いをさせる事が分かっているからか、彼の眉も苦しげに歪む
だがどうした事か、ラティアは思いをぶつける事から一変、気丈に微笑もうと繕いながら謝罪の言葉を口にしたのだ
「ラティア……?」
「アスベルがどんなに強くて……頑固なのか、ずっと見てきたから……分かってたつもりなのに、それなのに……だめですね、私
私がどう言っても、あなたは行ってしまうんだってわかっているのに……だから、私はあなたとあなたが信じたラムダに賭けてみようと思います、ですから……」
今にも感情が震えるがまま、滲む視界が溢れそうになるがそれを堪え、震える声がゆっくりと彼女の痛みに揺れる
罪悪感をも揺さぶるラティアの言葉にアスベルは真正面から受け止めようと静かに耳を傾け続ける
「どうか……私のこの想いを、一端でも良いから……知っていて、ください
私やこの場にいる方達は本当にアスベルの身を案じているのだということを……」
決してラティアは涙を流そうとはしない
泣いてしまえば、自分の言った言葉自体を、アスベルやラムダを否定する事になると知っているから
「ラティア……」
彼女の幼馴染みとして、同じ同性として感じる所があるのか、シェリアはラティアの背をあやす様に撫で、二人の間を取り持つ
本来ならば、その役目は他ならぬ自分がすべき所なのだろうが今の自分では彼女を傷付けるだけでシェリアに任せる事を自分に強いた
「他の方法を探している時間はない。みんな、賛同してくれるか?」
「……わかりました。核は兄さんに任せましょう
ラティアが言ったように兄さんはやると言ったら、反対しても聞かないでしょう」
「ああ、確かにな」
「なんだかんだでこれまでラムダと同居してこれたんだし……
ま、なんとかなるのかな?ね、リチャード」
誰よりも反対を強く申し出ていたリチャードは賛成も否定も口に出さず、パスカルからの呼び掛けにも反応を示さない、彼もまたアスベルのやろうとしている事を受け入れようと必死なのだろう
重苦しい雰囲気をひしひしと感じ取り、いじいじと居心地悪そうに挙動するパスカルの横を不意にリチャードがアスベルへと歩み寄る
「アスベル……本当にそれでいいのかい?」
「ああ」
迷いのない友の姿、そしてラティアでさえも引き止められなかったアスベルを自分に引き止める術はないと痛い程に察し、悔しさに歯を食いしばると誰に当たるでもなく、その場を立ち去ってしまった
重苦しい雰囲気を残したままの部屋、このままではフォドラの核をどうにかする前にこちらの精神が滅入ってしまうと危惧し、マリクが行動に出た
「……まあ今日はここらで解散だな。万全の期すために出発は明日にしよう」
「了解~!」
この状況下でも明るいパスカルの存在は非常に大きく感じられた
解散命令を受けたラティアは小さく仲間へ頭を下げるとその場を立ち去る、そのいつもよりも小さく見られる背中をソフィが心配そうに視線で追いかけていた
「アスベル、口ではああ言っていたもののちゃんと話して納得させてやるんだぞ
何があってもお互いに心残りの無いように。いいな」
彼女の言葉に甘えるだけでなく、自分からも彼女の心の重荷を軽く出来る様にもしなければならない、自分達の問題にも立ち向かわなければ
マリクや仲間達が次々と退室した場に残ったのはソフィ、彼女もまたリチャードの件を思い出し、不安に押し潰されそうになっていた
「アスベルがラムダになってしまったら……わたし、また……」
「大丈夫、そんな事にはならない。もうあの時のラムダとは違うんだ
俺の中のラムダを信じてあげてくれ」
表情を和らげるアスベルの左目を見上げ、ソフィはその中の存在を見つめる
ここからではラムダと会話する事も、彼が何を思っているかも感じ取る事は出来ない、けれど唯一ラムダと意思疎通が出来るアスベルが信じるのなら――
「ラムダを……信じる……」
それは神に祝詞を述べる様な、微かな祈りを届けるかの様に紡がれた
ハナミズキの花を私からあなたに
(強くありたい)
(君を信じ切れる様に)
(君を不安にさせない様に)