Memoria:54 籠の鳥が知ってしまった果てない空
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「アスベルッ!!」
リトルクイーンの右腕から人間を滅ぼすのに迷いない、剣先の如き鋭く精練された閃光がアスベル目掛け放たれる
その攻撃の余波はラティア達をも巻き込み、削れた大地が吐く土煙が彼らの安否をリトルクイーン達の無数の瞳から覆い隠す
あの攻撃で無傷でいられる筈がないと確認するまでもなく、リトルクイーン達はその場からいずこかへと消え去ってしまった
だがその思惑から外れ、土煙が晴れた先には円形型の結界が今の攻撃からラティア達を守っていた
「これは……!?」
「……ラムダだ」
難が去った事で役目を果たし、消え去った結界の出所に気付いたアスベルの一言にラティア達は唖然と瞳を瞬かせた
「ラムダがぼくたちを守ったと言うんですか……?」
はっきりと頷くアスベルをラムダが守ったのなら、まだ話は分かる
だがまさかラムダがラティア達までも守ろうと力を働きかけた事は意外であった、一体アスベルはラムダにどんな感化を及ぼしたのだろうと思ってしまう程に
漸く朧げであった意識をはっきりと覚醒させたソフィは今までリトルクイーンがいた場所に立つ、あの時彼女の手を取らなかった事は果たして正しかったのか――
『待っていますよ。フォドラの子』
自分にだけ聞こえるその声を聞き、ソフィはその場に崩れ落ちてしまう
永遠を共に行こう、孤独を癒してあげると彼女は言った、そして今もこうして語りかけてくる
ー待っている……
「行こう、ソフィ」
誘惑に負けそうになるソフィの心を現実に引き戻すアスベルの方にソフィは振り向き、その左目を見つめる
かつての敵であるラムダの存在、力は今や自分よりもラティア達の助けとなっている、それ故に彼らに必要とされなくなる時が来るのでは、という不安を根付かせる
「……う、うん」
ソフィの目の前には二つの道が用意されている、ラティア達と共に痛みを覚悟しながらも進むか、はたまた永遠をリトルクイーンと行き、人を滅ぼすかの道の二つ
今までならば、迷いなくソフィはラティア達と進む道を選んでいただろう、けれど今の彼女にはそれを簡単に選ぶ事は出来ない心境に置かれていた
このまま、ラティア達と進んで行っても良いものかと歯切れ悪く返事するソフィを連れ、ラティア達は丘の脇道から続くシャトルの墜落現場へ引き返す
探索から戻ってきた彼女達を出迎えたのはシャトルの修理に当たっていたサイ、どうやらその様子を見るからにここで出来る修理は済んだのだろう
「サイ、シャトルが直ったのか?」
頷くサイはソフィよりも小さい子供の様だというのに、この短時間でシャトルの修理をやり切ってしまう程の知識を持ったヒューマノイドなのだと実感させられる
「一人で頑張ってくれて、ありがとうございます」
労りの思いを込め、ラティアはサイへと微笑みかける
アスベルもまたサイの行動を賞賛する様にソフィにやるのと同じ仕草で目下の小さな頭を撫でる、それをサイは心地よさそうに受け入れている様だった
「これからどうするんだい?」
「研究所から持ってきたデータを再生したいな」
「だったら、テロスアステュに一度戻ってはどうですか?」
「そろそろ休憩もしたほうがいいしな」
シャトルも飛べる様になった事だしと、幸いにもリトルクイーンの尾行や襲撃も先程の件で一段落ついている今が情報を纏める良い機会だろう
その一方でリトルクイーンの事で心が休まる事がないソフィの状態をラティアとシェリアが見過ごせずにいた、無理を押して来たがここいらが節目時なのかもしれない
俯いたまま、一言も発さないソフィへラティアは歩み寄ると膝を折り、その視線と自分の視線を合わせようと試みる
「ソフィも色々あって疲れたでしょう、ここで一息つきましょう?」
マリクと併せて、ラティアが自分の心を気遣っているのは分かっているものの、ソフィはその言葉に返事をしようとしても出来ずにいた
「ソフィ……」
無理をさせ続け、リトルクイーンの言葉からもソフィを守れなかった後悔がラティアの胸に突き刺さる、あの時、自分が倒れてでもソフィを守らなくてはいけなかったのにと
自分の行動の至らなさを責めるラティアと心に暗い影を落としたソフィ、両者の様子を痛ましくアスベルは感じ取る
もしも、花畑でソフィを引き止めていたら…リトルクイーンの件で心を乱す事をソフィにさせなくて良かったのではと心を痛めさせる必要をラティア一人が追う必要もないというのに――
「アスベル?」
訝しむ様に呼び掛けられたシェリアの声にアスベルは、はっと我に返る
二人があんな様子だというのに自分まで気落ちしてはいられない、何ともない様に表情を取り繕う
「ああ。そ、そうだな。テロスアステュへ行こう」
籠の鳥が知ってしまった果てない空
(知らなければ、こんな心も知らないままでいられたのに)