Memoria:42 少女誘う白昼夢の声
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「もう大丈夫ですよ。今、治療しますからね」
「た、助かりました」
「ケガはありませんか?」
「私は大丈夫です、しかし兵士の方々が……」
青年が心配する兵達にはソフィとラティアが治癒術をかけている為、心配はいらないだろう
バリーに青年をラントまで案内する様に言いつけ、兵達が青年の警護としてその場を立ち去ったのを見送り、考え込むアスベルの思考と同じ事をバリーが危惧する
「最近、魔物による被害が増えてきていますね」
「そうだな、この一ヶ月で被害件数が上がっている」
「一時はだいぶ減ったんですがね」
「これ以上、被害が拡大しないよう、まずは街道の警備を強化してくれ」
「わかりました、手配しておきます」
早速街道の警備を強化する手続きの為にバリーは兵達を引き連れ、その場を立ち去り、ラティア達三人がその場に残された
星の核にてラムダと決着をつけ、魔物の被害は少なくなり、事態も収束しつつあると思っていたが再びその事態が蒸し返し始めた、その事にラティアも不安を感じずにえなかった
「どうしてまた魔物の出現数が多くなってきたのでしょうか……」
「何も起こらなければいいんだが
ラティア、ソフィ、俺たちも戻ろう」
「はい。帰ってラントの皆さんを安心させてあげましょう」
ラティアの返事はあったもののソフィからの返事はない、その事にアスベルは異変を感じ、どうかしたかと訪ねるものの彼女はただ首を横に振るのみだった
墓参りから帰ってずっと様子が可笑しい事にラティアは気付きながらも、追求出来ずにいた
「ラティア、アスベル」
事態も片付け、領主邸へ戻った二人をソフィが引き止める、やはりその表情はどこか不安に固まっており、呼び止められた二人は首を傾げた
「ん?どうした?」
「ソフィ?」
俯いていたソフィ、顔を上げ、ここに来るまでに払拭出来ずにいた疑問を口にした、その問いは二人が思ってもいなかった言葉だった
「ラティアとアスベルも死んじゃうの?」
「……?!」
「な……」
投げかけられた疑問に言葉を失うラティア達にソフィ、抱き続けていた不安の言葉が堰を切って溢れ出す、自分はいつかラティア達がいない世界に生き、独りぼっちになるのかと
何よりもそれは恐怖で、絶対に逆らいたい運命、二人が死なない様にするにはどうすれば良いのか、彼女なりにラティア達を思って考えた言葉が胸をつく
「アスベルのお父さんのようにラティアとアスベルもいなくなるの?
わたし、二人の事、守る。そしたらアスベルとラティア死なない?」
「ソフィ、それは……」
切羽詰まった様にも聞き取れるソフィの問いかけに応え辛い様にラティアは言葉を濁す、確かに戦いから守るのは死から守られるのと同じこと、だがそれ以外の、運命からは…
深刻そうに眉を寄せるソフィの言葉にアスベルは唐突に噴き出し、瞳を細める
「ソフィの気持ちはとても嬉しいよ。けどそれでもどうしようもない事もあるんだ
例えば不慮の事故にあったり、重い病気にかからないとも限らないし……もし運良くそうならなくても寿命がくれば、いつかは……。けど、それは何十年も先の話だ」
小さな子供の間違いを正す様に諭す言葉、いつもなら素直にそれを知識として吸収するソフィだがこの問題はやはりアスベルのそんな言葉では納得いかない様だった
「すぐだよ、十年も二十年も三十年も……あっという間に経っちゃう
ちょっと前まではわたしよりアスベルの方が背が低かった、アスベルは走るのが今よりずっと遅かった。だけどわたしはずっとこのまま、何年経っても変わらない。わたしはみんなと違うから?」
星の核で見たラムダの記憶、千年前であってもソフィは成長せずにここにいる、それはラティア達を待つ死がないということ、永遠を生きるということ
永遠を生きるという恐怖と悲しさは残念ながら二人には分からない、立っていた場所から少し移動したソフィはアスベルから空へと視線を逃がす
「人じゃないから、みんなに置いていかれてしまうの?ラティアみたいにひとりぼっちになっちゃうの?」
「ソフィ……」
「突然どうしたの…?ソフィ……」
漸くソフィが抱いていた不安を目の当たりにしたアスベルは呆然と言葉を失う、永遠を生きる恐怖等は分からないが、ひとりぼっちになる悲しさは分かるからこそ軽はずみな言葉をかけられないラティアもまた然り
静けさが空間を支配する中、その静けさが興奮していた感情を抑えたのかソフィは眉を下げ、二人へ振り返る、もうここにいても不安に対する答えはないと分かったのか
「ごめんねラティア、アスベル。わたし、先に帰る」
空間の重い雰囲気に耐え切れずにソフィは二人の横を通り過ぎ、逃げる様に領主邸へ駆け込んで行ってしまった
その小さな背中が抱える不安を察する事も出来ずに、彼女を繋ぎ止める事も出来ずに二人は呆然と小さな背中をただ、見送った
「ソフィ、一体突然どうして……」
少女誘う白昼夢の声
(それは救済か毒か)