Memoria:49.5 我が心を現すネメシアの花
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「フォドラに行く前に……アスベル、一度ラントに戻りませんか?」
「ラントに?」
アンマルチア族の里を出て、いざフォドラへとシャトルに乗り込んだラティアの躊躇いがちに発せられた言葉にアスベルは意外そうに瞳を瞬かせた
フォドラで原因解明に勤しむとなると今よりも時間を有するのは回避出来ないだろう、それと併せて今までの時間経過でラントに溜まっているであろう仕事を換算すると今が帰還の頃間と彼女は判断したのだ
「アスベルは今やラントの領主だからね、長く席を空けると後が大変だと思うよ」
「そう、だな……パスカル、皆、悪いがいいか?」
「ほいさー!ラントに向けて、しゅっぱーつ!」
活気に満ち溢れた声を乗せ、パスカル操るシャトルはラントへと方向転換した
そのラントではラティアが思った通りに、否もしくはその倍の者達がアスベルの帰還を待ち望んでいた、それというのも…
「そんなに長く空けてると思わなかったけど、こんなに仕事が溜まってるなんて……」
椅子へ腰を下ろしたアスベルを隠す程に高く積まれた書類の山に思わず、アスベルの視界がくらり、と揺れたのは気のせいではないだろう
だが逆を言えば、これ以上の書類が溜まる前に帰還出来て良かったのだろう、まだまだ自覚が足りないな、と思う反面、ラティアの自分の役割に対する姿勢は感心するものがある
「手分けして片付けましょう、私も勿論お手伝いいたします」
「ああ。頼むよ、ラティア。そういえば……皆はどうしたんだ?」
領主邸の扉を潜るまでは確かに共にいたので、ラントの街中で別れたという事はない筈
一体どこに仲間は消えたのかと首を傾げるアスベルの言葉に書類を纏めていたラティアはああ、と反応すると共に微笑を向ける
「客間にお通しして、お茶とお茶菓子を出しておきました。事情もご承知してくれましたよ」
「凄いな!もしかするとラティアは俺より仕事が早いんじゃないか?」
「い、いえ、昔からの習慣なだけです……さあ、早速取り組みましょう」
秘書として当たり前の事をしたまでとするラティアにとって、アスベルからの純粋な自分のやった行動に対する賞賛は心をくすぐり、羞恥心が顔に集まるのを感じた
「……よし、これで一通り急ぎの書類は片付いたな。もう夕方か……結構時間が経っていたんだな」
背後の窓から射し込む橙色の光は書類の文面に凝らしてきた目には少々厳しく、瞳が細く伸びた
「話しかけるのも躊躇われるくらいの集中力でしたから、アスベル。お疲れさまでした」
「ラティアの補佐があってこそだよ」
いつの間にか用意されていた紅茶に手を付け、飲み干すと口内に調度良い糖分が広がり、疲労を覆い隠すかの様だ
しかし一体、書類整理に同じ様に追われていた筈のラティアはどうやって紅茶を短期間で煎れたのだろうか、そこの裏事情がどうにも気になった
「今日のご飯、皆さんの分の材料足りないと思いますので買って参りますね」
「一人で大丈夫か?」
「はい。アスベルはゆっくりなさっててください!すぐ戻ります」
やんわりと同行を断られ、行き場をなくしたアスベルだったがこんな事は今回は初めてではない、ラティアはいつも一人でやってしまうのだ
最初の方こそ、一人でやらせる訳にはいかないと何とか彼女を説得しようとしたのだが、いかんせん彼女自身が上下関係を重んじるばかりにその説得が功を制した事はない
ならばもう彼女の好きな様に、自由にしてもらおうと彼女の背中を見送る事にしたのだ、いつか自分の言葉に頷いてもらう日まで
「アスベル、お仕事終わった?」
「ああ。なんとか一通りに終わったよ」
「さっき一人でラティアが出かけて行きましたが……」
「それなら、今夜の夕飯の材料を買いに……」
「一人で行かせたの?!」
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