Memoria:49 スノードロップの形をした福音
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「それでラティアと話して決めたことがあるんだ。俺はこれからお前と親子として、一緒に考えていこうと思ってる
ソフィ・ラント。これからは、これがお前の名前だ」
「ソフィ・ラント……?」
ストラタの砂漠遺跡の近くに停泊させていたシャトルに乗り込む前、アスベルに引き止められ、その話を打ち明けられた事をラティアは思い出していた
『ソフィをラント家の養子に?』
『ああ。親父の存在が俺の助けになっているように俺もソフィの支えになってやりたいんだ、父親として
それでラティアの意見を聞きたいと思ってさ、秘書じゃなくて一個人として』
まさか大蒼海石で自分が考えついていた事と同じ様な思考をアスベルも考えていたとは、それだけではない、自分では考えつかない親子という結びつきに彼は至ったのだ
親子、という関係には考えつきもしなかった、ラティアもまた自身の亡き両親から切り口を見出したというのに
秘書としてでなく自身の情人、そしてソフィの母親代わりという立場からアスベルは自分の考えに対する意見を求める彼にラティアは微笑み返す
『……とても素晴らしい考案だと思います。私もソフィが不安にならない様な、私たちの存在を死んでも感じていられるようなそんなものを残してあげられたらと考えていたのです
家族の繋がりを感じられるラントの姓を残せるなら、これ以上にないことだと思われます』
『何か……ラティアにソフィの母親になってほしいと言ったのに、この結論は遅すぎたよな』
『遅すぎた分、今から取り戻せばいいのではないでしょうか?』
つい先刻、自分の言葉にアスベルは苦笑と共に頭を掻いていたというのに今では心を固め、何とも頼もしい表情を浮かべていた
アスベルが見出した結論に俯く事も止め、きょとりと瞳を瞬かせるソフィの頭を彼は優しく撫でる、半年前、自分がソフィに支えられた様に、助けられた様に今度は自分が――
「お前は今日から、俺の本当の家族になるんだ」
安心した様に会話を見守っていたシェリア達は一様にアスベルの答えを微笑んで祝福する、良くやったと誰もが賞賛していた
「ソフィを正式にラント家の子として迎えるという事かい?」
「親父が俺やヒューバートの事を思ってくれたように……そして今でも俺の心の支えになってくれているように」
力強く自分のした選択に責任を持って頷いたアスベルは大きな背中を見上げる様にしているソフィへ振り返る
心の中で生き続けるアストンの様にいつか別離が来ても、ソフィの胸中で永遠の生命に寄り添う事が出来るのではないか、というのがアスベルが至った決断だった
「お前の支えでいられるようになりたいんだ
小さい時は俺の方が子どもだったから、ちょっとおかしな親子だけど」
いつからか年齢が逆転した事に苦笑を浮かべ、他の親子と風変わりな事に違いない事を自分から指摘するアスベルだが、ソフィはそうは思わないらしい
親子の契りの申し出をアスベルから受けたソフィは心からの幸福で満たされ、赤みを指した頬を可愛らしく緩め、自分が欲しいと願った親子を得た事に笑みを零す
「おかしくないよ。とっても……うれしい」
「兄さんの子どもになるなら、ぼくとも家族、ですね」
「そうなると弟くんはおじさんになるのかぁ~」
「なっ!」
先程まで微笑ましそうに見守っていたのも一変、パスカルの一言に言葉を失ったヒューバートの表情がどうにも可笑しすぎて、ラティア達は笑みを耐えるので精一杯だった
「となれば、未来のために魔物の脅威を取り除かないといけないな」
親子として新たな1ページを記していく為にも、魔物の騒動を収めようと新たに誓い合うラティア達
その傍にいて、親子という新たな絆を得て不安が解消されたソフィの脳内であの声が響く
《ヒトの存在は罪》
驚くソフィの目の前にはラントの墓地で見かけた女性が、その女性はソフィの不安をほじくり返すかの様に心を揺さぶる
《永遠を誓えない生き物。曖昧な言葉を信じては、だめ》
不安を煽る様に囁くと女性は消え去る
『どうして、そんな事言うの?あなたは、誰なの……?』
眠りかけていた不安を抉り返されたソフィの顔からは花が綻んだ表情は成りを潜め、再び芽吹き始めた不安に触れる様に胸に手を当てていた
スノードロップの形をした福音
(今はまだ大地に眠る、小さな種だけど)