Memoria:49 スノードロップの形をした福音
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ー私に置いていれたのは寂しさと虚無感……
幼い心に重くのしかかり、一人で背負い続けた暗い影を自分がいなくなった後のソフィに置いていく事になる未来をラティアはまた一人、静かに憂う
だがそこで気付くのだ、自分の時は寂寞と虚無感だっただけで他のものを置いていく事が出来るのではないかと瞬く瞳から鱗が落ちる
ー……置いていくんじゃなくて、残していくのはどうなんだろう。いつか来る終わりの時にソフィが孤独じゃない様に何かを残せてあげれば、きっと今の様な孤独を感じないんじゃ――
私の様な寂しさや虚無感じゃだめ。ソフィが不安にならない様に、寂しさを感じない様に……私やアスベル達の存在をずっと感じられる様な……そんな魔法の様な、何かを
微かな兆しが、その考えが浮かんだ瞬間にラティアの暗い心へ射し込んだ気がした
大蒼海石の騒動が収まり、魔物が暴れた跡を片付けている兵士達が奥から出てくるヒューバートに気付き、駆け寄ってくると二三言葉を交わす
「少し時間をください。彼らに大統領閣下への報告を任せてきますので」
本来ならば、騒動の収束に尽力したヒューバート自らが大統領へ報告すべきだが、そのままストラタに拘束される恐れをなくす為の対策らしい
彼が今回の報告を済ませた後にアンマルチア族の里に戻るまでの間、短い自由時間が図らずも設けられた
「フォドラとはどんなところなんだい?」
「そうか。リチャードは初めて行くんだったな」
空の果てにあるフォドラを見る様に顔を上げたアスベルに習う様にリチャードも顔を上げる
頭の中に残る星の憧憬を思い返してみる、記憶の中のフォドラは自分達が生きるエフィネアとは正反対の繁栄の跡地として記録されている
「フォドラは……草木も枯れ、大地も荒れ果てた物悲しいところだった」
「そこがラムダの故郷……」
「ああ」
「そしてソフィの生まれた場所でもあります」
不意に二人と会話している最中、アスベルの左目に何とも言い難い痛みが走り、思わず抑え込んでしまう、フォドラという自分の故郷の名に反応したのだろうか、それとも――
急かす様に痛みは引く事なく、アスベルをラティアとリチャードから引き離し、ラムダが脳裏に語りかけ始める、心を共有するラムダにとって、アスベルの胸中は既に手の内にあった
《心が乱れているな》
「(お前はすべてお見通しか。お前も聞いていたんだろう?ソフィの言葉を)」
《プロトス1は我を滅ぼすための存在、生きる事すなわち、我を滅ぼす事だった
その目的が失われた今、機能不全が起こるのは道理だろう。目的を持たず虚ろな心のまま、残された者はただ永遠を生きる。残酷な話だな
限りある人の身でどうやってプロトス1を孤独から救う気だ?》
「(それは……)」
今、正にその方法を探っている最中のアスベルにラムダからの鋭敏な問いかけに応える術もなく、言い淀んでしまう
《悩みが濃く深くなったな、お前は悩みの中から答えを見つけられるか?
人の身でせいぜいあがくがいい。楽しませてもらうぞ……》
そう言い残すとラムダは心の奥底へと姿を隠してしまった様だ
ラムダの言葉は嘲りの様にも聞こえたが、その言葉はアスベルが明確に捕らえ切れていなかったソフィの心情を分かり易くした説明でもあった
「残された者はただ……永遠を生きる……」
先程のラティアと同じ様に、今度はフォドラではなく答えを探る為に空を見上げ、半年前の出来事を思い返す
アスベルもまた残された者の一人だった、彼も半年前にかつての領主であった父 アストンを亡くし、深い悲しみに沈みかけた過去がある
ー……親父が死んだ時のあの時の気持ちが永遠に続くのだとしたら……
――深い悲しみに捕らわれ、虚ろな心のままで永遠にも似た時間をただただ、苦痛として感じ続ける事になるのか
領主に就任した矢先で実の弟に全てを奪われ、故郷を追放され、孤独の中で――そこまで考え、救いの手が差し伸べられた事を思い出す
ー何もかも失ったと思った時にもラティアとソフィが俺を支えてくれた……
わざわざラントから追い掛け、自分の行き場のない心を吐き出させてくれた二人の存在がどんなに心強かったことか
ーまるで、新しい家族が出来たみたいで嬉しかったな……
家族を失った矢先、アスベルはそう強く思わずにはいられなかった
そう、家族という支えはどんな絶望的な状況でも力を分け与えてくれる、温かく包み込んでくれる――
自分の言葉にある事を見出したアスベルはハッと表情を変える
ー家族……
「お待たせしました、行きましょうか」
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