Memoria:42 少女誘う白昼夢の声
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「少し昼寝でもするといいさ。さあ、そろそろ戻ろう」
「帰ったら、何か温かい飲み物を煎れてあげるね。きっとそれを飲んだら落ち着くわ」
「……うん」
ソフィの様子の変化は寝不足だと断定するアスベルに習う様にラティアは未だ立ち尽くす少女の元に歩み寄り、その背中を押しながら寄り添う様に踵を返した
墓地を後にする道中、ふとアスベルは先程の会話を思い出す、彼女は自分よりも早くに両親を亡くしたのだ、それに対する心配りが出来ていなかったと
「そういえば、ラティアの両親の墓参りに行かなくて良かったのか?」
「……何を思って参れば良いのか分からなく、て」
憂う様に視線を下に向け、ぽつり、と零すラティアの姿を痛々しそうにアスベルは見つめた、幼い頃に両親を亡くし、過ごす日々も少なかった彼女に墓参りを勧めることは酷なことだったか
同じ様に彼女の言葉を聞いていたソフィは彼女にそんな顔をして欲しくなくて、その服の裾を引き、自分に視線を注視させた、ラティアが見たソフィの表情は今にも泣きそうなものだった
「ラティア、大丈夫?どこか苦しいの?」
「ううん、大丈夫よ」
自分を見上げ、案じてくれるソフィにありがとう、と微笑み、その小さな頭を優しく撫で、自分の発言を反省するアスベルにもラティアは視界をあげる
確かに両親との思い出は少ないけれど、今はこうして自分を心配してくれる両親以外の大切なものがある、それだけで寂しさは紛れるのだから
「アスベルもどうかそんな顔を為さらないでください、私はもう大丈夫です。だってアスベルとソフィがいるのですから」
「そうか……ラティアがそれで良いなら、俺は何も言わないよ」
「ありがとうございます、アスベル、ソフィ……」
「ラティア、元気になった?」
「ええ!ソフィのおかげでね」
淡く微笑むラティアの言葉と顔に嘘がないことを知り、それから先の追求はしない事にした、彼女が自分達を家族として認めてくれたことを信じて
ふと屋敷に帰る道中、この穏やかな時間が訪れるまでの慌ただしい日々が自然と思い返された
「みんなと旅をしてから半年……か、あっという間の半年だったな」
「アスベルは特にそうでしょうね」
「いろんな事があったね」
「ああ、大変だった。ラント領をウィンドルへ戻すためにたくさんの人と話をしたし」
「アスベル、手、大丈夫?」
「え?ああ、そうか、うん、もう大丈夫だ
手が痛くなるまで何枚も書類を書いたからな、ラティアにも色々と手続きにマッサージもしてもらって……苦労をかけてすまない」
この半年の間に領主として慌ただしく各地に出かけ、交渉の席に立ち続けた、それだけでも疲労が溜まるというのにラントの中での仕事も待ち受け…時間の流れが早いと感じるのも仕方ないだろう
書類を片付ける間にも共にしていた手の痛み、それが早く治ったのも偏にラティアの献身的な補助があったからとアスベルは考える
「いいえ、それが秘書としての私の役目ですから。す、好きな人の役に立ちたいと思うのは普通、でしょう?」
「そ、そうか!」
「…?」
未だに恋人、という関係に慣れないでいるラティアとアスベルはお互いに顔を赤くし黙り込んでしまう、同時にこんな献身的な彼女が自分の手を取ってくれた、ということを夢かと何度頬を抓った事だろうと思い返す
黙り込む二人に首を傾げながらもソフィは無邪気にアスベルが忙しさと疲労で構成された日々を笑う
「でもわたしは楽しかったよ。アスベルのお手伝い、たくさんできるようになった」
「ソフィのおかげで私のお仕事もスムーズに出来ましたし、ソフィがいてくれて良かったです」
「本当?」
「ええ!またお手伝いを頼んじゃおうかな?」
手伝いへの意欲とソフィが退屈にならない様にという思いで構成されたラティアの言葉にソフィはまたも嬉しそうにうん!と頷くのだった
「ありがとう、ソフィ。……半年、か……」
自分がラティアに頼んだソフィの母親になって欲しい、という願いに同意し、それに近付くなってきた二人の会話に笑みを零す傍ら、自身の父と今の自分の在り方を比べるのを余儀なくされる
「……俺、親父がやっていたみたいにちゃんと領主をやれているのかな……」
「アスベル……」
領主として領民を守る、その中には勿論ラティアとソフィも組み込まれている訳で、この半年の間で自分はどれだけ成長出来ているのか、そもそも成長しているのかという不安が思わず口から滑り落ちた
彼の不安に対する答えを軽はずみに言えず、ただ見つめていたラティアとソフィと共にアスベルは領主邸へと足を進めた
「……お花、枯れてる」
花壇で自分が世話していた花が枯れている事に気付いたソフィは体を屈める、その様子は花の死をいつもより重く受け止めている様であった
「寿命みたいだな、仕方ない」
「仕方ない……」
自分の隣で同様に膝を折り、枯れた花を見つめるアスベルの言葉にソフィは受け入れられない様子で眉を潜める、それを宥める様にアスベルと後ろに佇むラティアが言葉を繕う
「大丈夫だ。ソフィが大事に育てたから、たくさん種をつけてる。来年も花を咲かせるよ」
「それでまた枯れて、種を咲かせての繰り返し、お花はなくならないからそんな顔しないで?」
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