Memoria:44 深海に沈むメランコリック
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「心配するな、リチャード。俺とソフィはうまくやってるよ、頼もしい仲介人もいることだしな
ラムダがこれからどうなるのかは正直俺にもわからない。けど、俺はラムダごと生きていくと決めたんだ。何が起きても乗り越えるつもりさ」
どうやらソフィ不在はアスベルがラムダに侵蝕され、それが理由でソフィが仲違いしたからだと思ったらしいリチャードにその不安は無用だと意味合いを込めて、アスベルは笑ってみせる
だがその脳裏ではラントでのソフィのあの不安げな表情と共に打ち明けられた、永遠の時を生きる事に対する言葉が思い返されていた
『アスベルのお父さんのようにラティアとアスベルもいなくなるの?』
『人じゃないから、みんなに置いていかれてしまうの?』
「何があっても……生きていくと……」
伏せ目がちにアスベルは弱々しく笑う、ラムダと共に生きるという決意は本物だ、けれどソフィという永遠の時を生きる存在を抱えて生きる覚悟が自分には足りなかったのではないかという壁にぶつかっていた
生きる、という言葉に反応したのかアスベルの左目の中の光の輪が脈打つ様に輝くが痛みをも発したのか、咄嗟に目を抑える
「……っ!」
「アスベル?」
アスベルを案じ、リチャードは彼に歩み寄る
「痛む、んですか?」
「落ちた時に怪我でもしたかな?」
「大丈夫なのかい?」
「ああ、大した事ないだろ。さあ、早く行こう」
「……お二人とも何かあったら仰ってください、すぐに治癒術をおかけいたします」
そう言って先へ歩き出したのはいいものの、治癒術をかけると言ったものの挫いたらしき足から響く痛みはとうとうラティアの歩みを止めてしまった
突然立ち止まったラティアに今度こそアスベルとリチャードの目に止まり、何かあったのかと注視するので逃げ場はなくなる
「ラティア?」
「い、いえ、その……」
かなり奥に歩いたのもあり、怪我をしていたと言い辛く口籠るラティアの瞳は自身の足に移動するものでリチャードが突然立ち止まった理由を察し、はっと察する
「もしかして、落ちる時に足をくじいたんじゃ……」
「……すいません」
「何でもっと早くに言わないんだ、悪化してからじゃ遅いんだぞ」
「そ、それには理由があって……っ」
足を挫いた事に眉を寄せ、言葉にしなかった彼女の対処に叱咤するアスベルが思っていた様に決して隠し通そうとした訳でないのだとラティアは慌てて言葉を取り繕うと手をわたわたと忙しなく動かす
けれど確かに胸にある言い出せなかった理由がアスベルからのじとっとした視線に詰まって言えず、あのその、と繰り返す彼女に助け舟が現れる
「確かにあそこじゃ、ラティアもちゃんと治癒術をかけられないからね
状況判断は間違ってないよ、寧ろ正しい。だからアスベルもあまり責めないであげてくれないか?」
「リチャードさん……」
「そういう意味だろう?」
「はい、決して隠そうとした訳ではないんです……ごめんなさい、二人とも」
ぺこりと自分の非を認めるラティアとリチャードの言葉にこれ以上、何も言えずにアスベルは苦笑を顔に浮かべ、分かったよと応えたのだった
「でもあまり無理をして歩かせる訳にもいかないね」
「よし、ラティア」
「?」
アスベルに呼ばれ、首を傾げるラティアは気がつけば、半年前の旅の時のソフィと同じ様に彼の背中に背負われる形となっていた
「これなら大丈夫だろ?」
「流石アスベル、名案だね」
「す、すいません、アスベル……重いでしょう?」
「ソフィを背負ったこともあるんだぞ?これくらい平気だ」
「さあ、先に急ごう。二人とも」
一体何が名案なのかと不思議に思ったものの、二人の雰囲気に流され、降りるという選択も忘れたラティアは大人しく彼の背中に背負われ、先へ向かい始めた
申し訳なさを感じる一方で自分の体を背負う大きくて広い背中はとても安心して、とても温かくてこんな状況なのに心地良く感じられた
深海に沈むメランコリック
(水面を目指すには仄暗く、まだ遠く)