SS-ygo(5)
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自分の傍を行き交う人々を見つめながら、遊星は病院と言えども色んな人々や雰囲気があるのだと観察していた
病院と言うのは暗い雰囲気だというイメージが付きまとっていたが、ここへ通い詰める中で病院へ通う人々は案外と誰よりも生きようとする活力に満ちている
それを遊星が知る事が出来たのはたった今 診断室から出てきた押し止める事が出来ない笑顔を隠し切れない少女のおかげだろう
「何事もなく終わったみたいだな」
「…まだ何も言ってないのに、どうして分かったの?」
「その顔を見ればわかるさ」
指摘されるまま、素直に自分の顔に両手をぺたぺたと触る華月の幼さに遊星は笑みを深める
いつも通りに処方された薬を受け取って帰るだけ、そんなローテーションが今日はロビーにある笹に華月が目を奪われた事で崩れ去った
「大きな笹!短冊もいっぱいかかってるね」
「そういえば、さっきここに入院している子供達も吊るしに来ていたな」
「遊星、声とかかけられなかったの?」
「いや。…どうしてだ?」
「今の遊星はデュエルチャンプだから、サインとかいっぱいお願いされたかなーって」
デュエルチャンプが病院に来ているなんて誰も思わないのか、華月が考えた事は残念ながら起こらなかったがサインなどは考えていた方がいいか―そんな事をぼんやり遊星は考える
色とりどりの短冊や折り紙で作られたであろう飾りを感慨深そうに見つめ、その中の一枚を指先で華月は撫でる。壊れ物を扱うかの様な繊細な動作に、暫く目を奪われた
「私よりも大変な日々を送ってる子達のお願い事が、叶うといいな」
ロビーを行き交う人達の雑踏にかき消されてしまいそうな祈りは、華月自身ではなく笹を彩る無数の願いに向けられていた
「華月」
「ん?」
「少し、寄り道していこう」
きょとり、丸々と目の輪郭から零れ落ちそうな満月が見開かれた
遊星にしては珍しい、有無を言わせない寄り道への誘いに断る理由もなく、華月は小さく頷いて了承した
「人、沢山いるね」
「そうだな、嫌だったか?」
「嫌じゃないよ、遊星と一緒にいられるならどこでも嬉しいから」
繋がれた手は分厚いグローブ越しの筈なのに、自分を気遣う様にどこか温かい。そして自分の言葉にそうか、たったの一言なのに籠った優しさは愛しさを感じる
どこで知ったのか遊星が寄り道先にと決めたのは小さなプラネタリウム、今日が七夕という事もあってか小さな子供を筆頭に穏やかな暗闇に包まれていく
『ご覧ください、東の方向で三角形の形で繋がり合って輝く星
ベガ、アルタイル、デネブ…七夕の夜空を彩る代表的な星々、神話では──』
「プラネタリウムなんてシティに来て、初めてだったから楽しかった!」
長らく暗闇にいたからか、夕日がいつもよりも瞳に染みて痛いくらいだ
もうすぐしたら先程までいた空間で見た星々が実際に見えてくる時間を訪れる、プラネタリウムで教えてもらった神話を知った今ならもっと楽しく見れるだろうか──
「…ここに華月を連れてこようと思ったのは」
「!うん」
「さっき病院で言っていただろう?『入院している小さな子達の願いが叶うといい』と
お前は優しいから、今夜の願い事にそれを使いそうだと思ったんだ。だったら俺は『華月の願いが叶うように』、そう願おうと思ってここへ来た」
「────」
「俺が取った行動は華月にとって、お節介だっただろうか?」
「ううん。そんな事、全然、絶対にない」
ああ、この人は本当に。夕日が染みて痛いだけの瞳から、遊星の優しさを知ってしまったせいで涙を流しそうになる
零れ落ちそうになる涙をぐっと飲みこみ、勝手に入院している小さな子供の願いが叶う事を自分の願い事にした―それだけなのにそれを優しいと言ってくれた遊星に微笑みかける
「でも、そうしたら遊星の願い事が叶わないから
だから今年はあの病院の子達に使っちゃった分、来年は遊星の願い事が叶いますようにってお願いするね」
「…実の所、俺の願いというのはもう叶っているんだ」
「え?!ジャックとの決着がついたから…?」
「いいや」
ジャックとの決着の為、シティに来て、それから色んな出来事に遭遇して──その間に遊星の願いは叶ってしまったのか
それなら自分がこの人に出来る事なんて何も、胸を詰まらせそうになる華月の髪を風とは違う、温かさを伴った指先が撫でて掬い取る
「俺の願いは、この先の未来もずっと変わらない」
―華月が俺の隣で笑ってくれれば、それでいい