chapter:40 真実は道標として機能しない
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「その先の言葉は…ここまで来てくれた皆とベリウスに反する事になるから言っちゃいけないよ
…フェロー、私もベリウスと会って私なら自分の運命も受け入れられるだろうって言ってくれた、その為にもあなたの口から真実が聞きたいの、運命を確かめ受け入れる為に
どうしてあなたは私を世界の贄と称しながらも哀れむのか、何故エステルを殺そうと疎むのか…私達は全てを知りたい…!それがどんなに辛くても!お願い、あなたの知っている事全てを教えて…!」
乞う様にフェローを見上げ、真実を求めるアルシアの想いが通じたのかフェローはこの岩場もかつてはエアルクレーネの恵みを受けた豊かな土地であった事を語り出す
それはかつてこの場所にエアルクレーネがあったこと、だが今はその昔の面影も見る事も叶わない命が耐えた場所へと変化している事に当然疑問が沸く
『エアルの暴走とその後の枯渇がもたらした結果だ、何故エアルが暴走したか……それこそが満月の子が世界の毒たる所似よ
そしてその暴走したエアルが行き着く先こそが陽月の子が世界の贄たる故』
「え……」
『満月の子の力はどの魔導器にも増してエアルクレーネを刺激する
その刺激されたエアルクレーネは陽月の子の力に救いを求め、陽月の子は命を削ってまでもそれに応える』
「どういう事だ?」
「……魔導器は術式によってエアルを活動力に変えるもの、ならその魔導器を使わずに治癒術が使えるエステル、魔術や技を使えるアルシアはエアルを力に変える術式をその身に持ってるって事……
ジュディスが狙ってるのは特殊な術式の魔導器……つまり……エステルはその身にもつ特殊な術式で大量のエアルを消費する……
そしてエアルクレーネは活動を強め、エアルが大量に放出される……」
専門的な知識を持たないユーリ達にエステルとアルシアがその身に持つ術式を苦々しく、そして口に出す事も嫌悪しているかの様にリタは辿々しく独り言の様に説明する
だが一息エステルの術式、フェローの言う世界の毒、満月の子の力の説明をした所でその重い口は更に重々しい言葉を口にした
「でもアルシアの術式は何かが違う、あたしが求めるリゾマータの公式に近い術式……だからアルシアの術式はエアルクレーネは刺激しない
けど……その術式は活動を強めたエアルクレーネから放出されたエアルを大量に呼び寄せ、エアルを還元し暴走を抑えようと調整してしまう……
大量のエアルが一気に体内に流れ込んでしまうという事は、死んでしまうということ…今は気絶とかで軽く治まってるけど、いつかは……っアルシアの術式は命を削るもの……
あたしの仮説……間違ってて欲しかった……」
全てを話し終え、旅の中で彼女達を見て組み立てた仮説は奇しくも確証があったものとなってしまい、リタは自分の仮説が正しかった事に悲しみを帯びた
彼女が告げた自分の内に内包された術式が命を削っていっているものだと認識するにはそう時間も遅くなかった、だが自分の術式を彼女に判明させてしまった事の方がアルシアは苦しかった
「…じゃあいつか、私…」
「わたしは……」
『その者の言うとおりだ、満月の子は力を使うたびに魔導器などとは比べものにならぬ程、エアルを消費し世界のエアルを乱す
そして乱したエアルは全て陽月の子の負担となって現れる、世界、そして陽月の子にとって毒以外の何物でもない』
「だから消して、アルシアは手元に置くってか?そりゃ随分時が短いな、え?フェローよ」
『これは世界全体の問題なのだ、そしてその者はその原因、座視するわけには行かぬ』
「オレたちの不始末ならオレたちがやる」
「そうなのじゃ、勝手に押し付けはゴメンなのじゃ」
『おまえたちはことの重大さが理解できていないのだ』
お互いに譲れない意志をぶつけ合う中、エステルが死ぬ事でアルシアの事も何もかもは解決出来ないものの一つは問題を取り除く事が出来るとフェローはエステルの命を省みなかった
見極めの時間を彼から与えられたジュディスは彼女達を危険、哀れな存在とは思えなかったもののその時間の中でベリウスを失った事で彼は完全に二人を毒と贄という認識を改める事はなくなった
「ふーん、よくわかんないけど力を使うのがまずいなら使わなきゃいいだけじゃないの?そうすりゃアルシアちゃんだって命削られることないだろうし?」
『その娘が力を使わないという保証はない、保証がない事は陽月の子の安息も約束されぬも同じ』
「……そうね、この子は目の前のことを見過ごせない子、きっとまた誰かのために使って、その負荷をアルシアが背負うこととなるでしょうね
だけどその心があるかぎり、害あるものとは言い切れないはず、彼女達は魔導器とは違う、あなたにもそれがわかると思うけれど?」
『……心で世界は救えぬ』
「おいフェロー、おまえが世界とやらのためにあれこれ考えているのはよく分かった。けどな、なんでエステルがその世界に含まれてない?なんでアルシアをハナっから人柱としか見てない?」
『より大きなものを守るためには切り捨てることも必要なのだ、その者は生きる限り、贄という役目からは逃れられぬ』
「クソ喰らえだな、その何を切り捨てるかを決められるほど、生き方を決めるほど、おまえは偉いのかよ?」
「ユーリ…」
『我らはおまえたちの想像も及ばぬほどの長きに渡り、忍耐と心労を重ねてきたのだ。わずかな時間でしか世界を捉えることのできぬ身で何を言うか!!』
世界を愛するが故にその世界に害を成す者に容赦出来ないフェローは真っ向から全てを否定され、感情的に叫ぶ
確かに始祖の隸長と人間は見る視野は酷く狭いだろう、だがそれでもその狭い視野でも守るべきが何なのかは分かっている、だからこそユーリも苦言を呈するのだ
「フェロー、聞いて。要するにエアルの暴走を抑える方法があればいいのでしょう?まだそれを探すための時間くらいはあるはずよ」
「ジュディス……」
「それにもし……エステルの力の影響が本当の限界にきて、アルシアにも今よりも影響してきたら……約束通り私が殺してアルシアをあなたに引き渡すわ、それなら文句ないでしょう?」
「ちょちょっとジュディス、本気で言ってるの!?」
「あら、そうならないように「凛々の明星」がなんとかするでしょ?」
「え!?あ、そうか……うん、そうだ、そうだね!」
「私も…私も自分の存在、力は自分で責任を持つよ。それに自分の生き方は自分で決める、私は贄として命を落とさない!」
「一本…イヤ二本取られたな、そういう訳だ。エステルのこともアルシアのことも世界のヤバさもそれがオレたち人間のせいだってなら、オレたち自身がケジメつける
それでも駄目なら丸焼きでもなんでも好きにしたらいい」
『……そなた変わったな、かつてのそなたなら……』
「さあどうなのかしら?でもそう言われて悪い気はしないわね」
『……よかろう、だが忘れるな、時は尽きつつあるということを!』
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