chapter:34 惜しみなく奪い尽くすは悲涙の波
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「お、おさまった……」
「ベリウス様!!」
「今度はなに?」
「こんな結果になるなんて……」
アルシアによる渾身の一撃により、息を上げ衰弱していたベリウスの体は突然青白い光を発し出す
呆然とその光を見て、訝しげに呟くリタとは逆にジュディスはこの現象を知っているかの様に、それを望んでいなかった為に憂い気に呟いていた
そんな彼女達の声を背中で聞きながら、エステルは彼女をこんな目に合わせた自分の罪に耐えきれずにその場に崩れ落ち、今にも消えそうな声を発する
「ごめんなさい……わたし……わたし……」
『気に……病むでない……そなたは……わらわを救おうとしてくれたのであろう……』
「……でもごめんなさい、わたし……」
『力は己を傲慢にする……だがそなたは違うようじゃな、他者を慈しむ優しき心を……大切にするのじゃ……』
彼女はエステル達を背負う事をせず、ただ自分の運命を受け入れ、それに身を投じる
ふと自分の暴走を止める際に自分と心を通わせたかったと呟いてくれたアルシアがただ黙って、こちらを見ているのに気付く
『陽月の子よ…すまぬのう……そなたには…わらわの命を背負わせる事を強いてしまった……』
「…わ、たしは大丈夫…これは…自分で選んだの、ベリウスは…悪くない」
『そなたは迷いながらも…前に進む確かな心を持っておる……その心が思うままに…生きよ……その心があれば、そなた自身の運命も受け入れられるであろう…』
「ベリ、ウス…ッ!」
『フェローに会うがよい……己の運命を確かめたいのであれば……』
「フェローに?」
命を奪う傷を作った自分に彼女は「生きろ」と言ってくれた、その言葉に今まで塞いでいた込み上げて来たものが震える声となって出て来た
自分が伝えられなかったアルシア達の運命を示唆する言葉を最後にベリウスが発していた光は尚強くなる、さながら星の最期の様に
『ナッツ、世話になったのう。この者たちを恨むでないぞ……』
「ベリウス様!!」
「ま、待ってください!だめ、お願いです!行かないで!」
「ベリウス…………さようなら……」
「助けられなくて…ごめん、なさい…っ」
引き止める声と別れ、謝罪の言葉を受けながら、その体は光の中に溶けていき、凝縮した光は大きな結晶の様なものとなり、その場に浮いていた
結晶はアーセルム号で見つけた『澄明の刻晶』と色は違うものの形等はそれと同等の物質だった
「これは……幽霊船の箱に入ってたのと同じ……?」
「聖核だ……」
「どういう……ことなのじゃ……?」
―わらわの魂、《蒼穹の水玉》を我が友、ドン・ホワイトホースに
「これが…ベリウスの、魂…」
聖核から亡きベリウスの声が最期の想いを伝えてくる、皆が突然ベリウスの死と同時に現れた聖核に戸惑いを隠せない中、アルシアは《蒼穹の水玉》を両手で包む
彼女が《蒼穹の水玉》を手に取る事で光は収束し、再び夜の闇がその場を包み、エステルが再び耐えられずに座り込んでしまった
「ハリーが言ってたのはこういうわけか」
「人間……その石を渡せ」
「こいつがてめえらの狙いか、素直に渡すと思うか?」
「では素直に……させるまでのこと」
「アンタ達には、アンタ達にだけはベリウスの魂を…渡さない…!」
「そこまでだ!全員、武器を置け!」
「ちっ来ちまいやがった」
「貴様……闘技場にいる者をすべて捕らえろ!」
今まで倒れていたクリントが再び立ち上がるよりも先に第三者であるソディアが現れ、その背後から増援の騎士達がアルシア達を捕らえようと駈けてくる
「さっさと逃げないと俺らも捕まっちゃうよ?」
「あたしら、捕まるようなこと何もしてないわよ!」
「きっと何か捕まえる理由、こじつけられちゃうに決まってるよ!」
「そうね、逃げた方がよさそう」
「ワン!」
「逃げ道を確保したのじゃ!急ぐのじゃ!」
「パティ、ラピードありがとう、…エステル?」
騎士団に弁明をした所でこちらが一方的な罪人だと決めつけられるのがオチだ、パティが張った煙幕が騎士団の目を欺いている中でエステルがぴくりと動こうとしないのに気付く
早くしなければ煙幕が剥がされてしまい、全てが無駄と消えるだろう、ベリウスの意志も引き継げない、アルシアが彼女に近付くと共にユーリも後ろからついてくる
「エステル、行こう」
「今は逃げるぞ」
「嫌です……わたし、どこにも行きたくない。わたしの力……やっぱり毒だった……
助けられると思ったのに死なせてしまった、救えなかった……!」
「…エステル、それは違うよ」
「違わない!わたし、アルシアみたいには強くなれないんです!」
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