chapter:31 鋭眼の正義が胸を刺し貫いた夜
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「立ってないで座ったらどうだ」
「話があんだろ」
「……なぜキュモールを殺した、人が人を裁くなど許されない。法によって裁かれるべきなんだ!」
「なら法はキュモールを裁けたっていうのか!?ラゴウを裁けなかった法が?冗談言うな」
「ユーリ、君は……」
「いつだって法は権力を握るやつの味方じゃねぇか」
相容れない正義の衝突、幾度となくアルシアはこの場面を見た、だが今回のこの衝突はいつにも増して胸が痛む様にも思えた
それでも自分は見届けたい、ユーリが思っている事、フレンが思っている事を聞きたくて…この場にはいなくて良いと言ったフレンを押して、ここにいるのだから
「だからといって、個人の感覚で善悪を決め、人が人を裁いていいはずがない!
法が間違っているなら、まずは法を正すことが大切だ、そのために僕は今も騎士団にいるんだぞ!」
「あいつらが今死んで救われたやつがいるのも事実だ。おまえは助かった命にいつか法を正すから、今は我慢して死ねって言うのか!」
「そうは言わない!」
「いるんだよ、世の中には。死ぬまで人を傷付ける悪党が
そんな悪党に弱い連中は一方的に虐げられるだけだ、下町の連中がそうだったろ」
「それでもユーリのやり方は間違っている、そうやって君の価値観だけで悪人すべてを裁くつもりか、それはもう罪人の行いだ」
「わかってるさ、わかった上で選んだ。人殺しは罪だ」
「(やっぱりユーリは…分かっていた…だけど誰かを救う為に罪を背負う事にした、の…?)」
「わかっていながら、君は手を汚す道を選ぶのか」
「選ぶんじゃねぇ、もう選んだんだよ」
すでにユーリは選んでいたのだ、ラゴウを殺める際にフレンに会い、それを宣言していた、その言葉をフレンは思い出したのだろうか
顔を俯かせ、苦渋の表情を浮かべていたがそれをすぐに消し去り、ただ一つの想いが生まれた様にユーリを見つめる為に顔を上げた
「それが、君のやり方か」
「腹を決めた、と言ったよな」
「ああ、でもその意味を正しく理解できていなかったみたいだ……騎士として君の罪を見過ごすことはできない」
「っ…止めて!」
「アルシア…」
「…っそこをどくんだ、アルシア!」
「……、」
「隊長、こちらでしたか」
ユーリの罪を裁く為にその騎士の剣を引き抜こうとしたフレンと彼の間にアルシアは割って入る、動揺するフレンの言葉に彼女はただ首を横に振った
剣を引き抜く手を止められた彼に部下のソディアから声をかけられ、一触即発のその場の雰囲気は冷め、フレンは彼女に歩み寄る
どうやらノードポリカの封鎖が終わり、「魔狩りの剣」が動いている為にフレンは戻る様にとの事、了承してソディアを見送るがその場にはもうユーリとアルシアの姿はなかった
「ユーリ、君のことは誰よりも僕が知っている。あえて罪人の道を歩み、アルシアを悲しませるというのなら……」
その騎士は夜空を見上げ、何を思ったのか…答えはその胸の内にしか今はない
「…ユーリ、ごめん」
「何でお前が謝るんだよ」
「ごめん、ね…」
「…顔上げろって、アルシア」
フレンの前から姿を消した二人はまた違う湖畔にて、数時間前の会話の延長戦をしていた
顔を俯かせ、ただただ自分に謝るアルシアの頬に手を当て、その俯いた顔を上に上げれば…ユーリが思った様に紫水晶の様な瞳からその欠片の様な涙をぽろぽろと零していた
自分の為に流してくれているのだろう、それは自分には勿体ない程に綺麗すぎた
「…皮肉だよな」
「…?」
「オレはアルシアがこの事を知って、泣かせるのが嫌だったから隠してた筈だった
だけど…逆に隠していたから、お前を泣かせる原因になっちまった」
「…うん、悲しかった…ユーリが罪を犯した事を誰にも言わないでいた事が
でも…っでも、一番悲しかったのは…ううん悔しかったのは傍にいたのに、ユーリをその罪の中に一人にいさせてしまったこと…!
ごめん、ね…気付けなくて…支えるって自分から言った約束守れなくて…独りにさせて、逃げてごめんなさい…っ」
「もう良い、良いから…アルシア」
自分をひたすらに責めて呟く彼女の涙が痛々しくて、その涙を拭おうとする手を引っ込めようとした、だがその手をアルシアは両手で壊れ物を扱う程の力で握り締めて来た
「…怖くないのか?」
「怖くない、さっきはびっくりしたけど…ユーリとフレンの話で分かったの、ユーリの変わらない…優し過ぎる正義に
だからもう怖くない、もう…この手から逃げたりしない。いつか罰されられる時が来ても、世界中が貴方を拒絶しても…私は最期まで貴方の味方でいるよ」
「…ありがとな、アルシア」
.