chapter:28 蜃気楼先のアポクリファ
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「話はまとまった?」
「とっくに」
「どうするの?」
「行きます、砂漠の中央部に」
「私も砂漠に行くっていう事、変わりないよ」
「だと思って準備をお願いしておいたわ、宿屋で貸してくれるそうよ」
「ジュディス、読みが早いね…!」
「そうかしら?」
「この街から出る前に十分に休みを取った方がいいわね」
「おっさん、休んでばっかり」
「そうね、一緒に添い寝してくれる?あ、でもおっさん、個人的にはアルシアちゃんと…」
ジュディスはどうやら話の途中でアルシアとエステルの意志が変わらない事に勘づき、気を利かせていたらしい
彼女の行動の早さに驚いているとレイヴンの言葉にリタが一寸の力加減もせず、彼の足を踏みつけていた
「泊まれるか?」
「いらっしゃいませ、水と黄砂の街 マンタイクへようこそ」
場所は代わり、アルシアを休ませていた宿屋
一見普通の宿屋に見えるが横からの奇妙な視線にリタは怪訝そうにその視線の先を追った
「この騎士……何?」
「ええーと……」
「…………」
「訳有りっぽいね…」
「だな」
「……ご、ご宿泊ですか?」
「ああ、砂漠へ行くんで、その準備と少し休憩にな」
「先に連れの人がお願いしてたと思うんだけど…」
「ああ、砂漠に向かう準備をして欲しいと言うのはあなた方ですか。しかし……」
「危険なのはわかってる」
「そ、そうですか……では発たれる前までに準備できるものをご用意しておきます」
普通の宿屋にはいない騎士、それが発する気配に宿屋の主は挙動不審に言いたい事も言えない様であった
この街にも何かの陰謀が働いている様だ、宿屋の主にガルドを払い、アルシア達は各々休憩に入り、街の様子について会話する事に
「なんか変な雰囲気よね、この街」
「やたらと騎士が目につくし」
「とにかく今夜は寝よ、寝よ」
「でもさあ、騎士に入り口に立たれると落ち着かないよね……」
「気になります?」
「なるなる」
「騎士はもう慣れるしかないね…」
「ま、守ってくれるってんならいいんじゃない?」
「さ、みんな寝よ寝よ」
「ジュディスももう寝てるし…ね?」
「うーん……」
アルシア等に催促されるものの慣れない騎士の存在にカロルやリタは眉を顰めていたが、いつの間にか疲れが溜まっていたのだろう、眠っていた
だが催促したアルシア自身はと言うと昼間に倒れたのもあり、目が冴えていた為に宿の近くのオアシスへ抜け出していた
「アルシア?」
「あ、エステル…何を持ってるの?…それ、確かさっき私達の報酬にって…」
「ええ、母の形見なんです」
「お母さん……亡くなってるんだね」
「ええ、まだ子供の頃に。……アルシアのお母さんは……?」
「それがね私、ちょっとした記憶喪失なんだ」
「記憶、喪失…?パティと一緒なんです?」
「うん、十年前…だったかな?下町の入り口で倒れてたんだって、その時は下町の人達に助けて貰ったんだけど…
でも目を覚ました時に今まで住んでた所、家族がいたかも分からないでね?辛うじて自分の名前だけ覚えてたのが幸いだったけど
だから私はお母さんだけじゃなくて、お父さんの顔も知らないの。ううん本当にいたかも分からない」
「そう、ですか……自分が特別だと思ってました、お父さんもお母さんもいないって
でもアルシアもユーリもカロルもリタも独りでがんばってきたんですね」
至極あっさりとした口調で、どこかの誰かの話をするかの様にアルシアは自分の出生と見た事がない両親を話した
だが話している際に時々揺らいだ瞳の光は何処か悲しそうだったのをエステルは見ていた
「私には下町のみんなやユーリ、フレンもいたから、独りなんかじゃなかったよ?」
「わたしだって……お城の人が面倒見てくれてました、でも寂しいときもありました
その時はこれを見て、母を思い出して自分を励ましてたんです」
「そんな大切なものはエステルが持ってなきゃだめだよ、私達に渡したり…ましてやお金にしようとしちゃいけない」
「この旅を始めて、形見のこと、すっかり忘れてたんです。たぶんアルシアたちといたから……
もう寂しくなかったから……必要ないですよね……」
「……捨ててしまうの…?」
「古い思い出とは決別しないと、みんなそんなものなくても強く生きてるんです
わたしだって、こんなものに甘えてるわけにはいかないです」
「…でもきっと必要な時が来ると思う、エステル自身が自分の命を見つめ直す時にそれがないと後悔する
だからエステルが信頼してる人に預かってもらったらどう?」
「そう…かもしれませんね……だったらアルシア、預かってもらえませんか?」
「あ…えっと私は止めといた方が良いと思う」
「どうしてです?」
「良く私、ものをなくしちゃうの、ぬいぐるみとかグミとか…それで何回もフレンに怒られちゃったんだ、だから私以外に頼んで?」
「わかりました、ありがとうございます、アルシア」
「ほらほらっ早く寝た方がいいよ?」
「はいっ」
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