chapter:53 信義と忠義、そして盲目的な服従
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「しっかし近くで見るといよいよでけえな」
「これ全部でひとつの魔導器!?信じらんない……」
「きっと世界のみんなを脅すための兵装魔導器なのじゃ」
「きっと想像を絶する力でしょうね」
フェローをも退けた力を目にしたがそれもザウデの力の一部に過ぎないのだろう、まだまだ力を秘めたザウデは世界を脅かすものとして存在感を強めた
ふとユーリ達と同じ様にザウデを見上げていたカロルは自分達が乗り込んできた逆の岩陰を覗いてみると巨大な船が一隻止まっているのを見つけた
「ねえ、あれ!船だよ」
「騎士団でしょうか?」
「いえ、そんなに早く来れるとは思えません。親衛隊でしょう」
「ってことは、だ」
ある程度、予測したレイヴンはパティに尾行されながらも岩陰からザウデの入口の方へ偵察に向かうとすぐに踵を返してきた
彼の予想通りに入口はパティにフナムシと称された親衛隊によって固められ、突破は無理だと判断がつく
「あれくらいなら、まとめて吹っ飛ばせそうよ?」
「慌てんなって、そう言う派手なのはオレたちの役目じゃねぇ。他に入れそうなとこがないか探そうぜ」
強硬手段を取ろうとするリタを制止し、ユーリ達は波打ち際からザウデの下へ回り込んでみると人が何とか入り込めそうな警備の穴を見つけた
「風が流れている……通風孔だな」
「それならボクの出番だね!」
「ここから入るつもりかい?」
「騎士様にはちょっと相応しくないかもしれねえけどな」
ユーリによるフレンへの皮肉を背で聞きながら、カロルは早速通風孔を取り外そうと道具を手に体を屈ませ、作業に取りかかった
その作業を見守っているエステルはふと横から感じる視線に気付き、彼女の心配を落ち着かせようと微笑む
「リタ、そんなに心配しないで。全然大丈夫ですから、アルシアもきっと無事です」
「べ、別に心配なんかしてないし」
「どう見ても心配してるわ」
「じゃの」
「あ~もう、うるさい!さっさと開けなさいよ!」
「うるさいのはおまえだ」
「開いた!」
「お見事。んじゃ、いってみよーか」
羞恥からの八つ当たりで親衛隊に見つかる危険を潰す為にユーリが一刀両断している間にカロルは通風孔を止めていた金具を外してしまう
開いた通風孔を通り、踏み込んだザウデ内部は薄暗くそこかしこから海水が流れ込んでいる音や自分達の足音以外の音はなく、ここに親衛隊がいない事を示唆していた
だが古い構築物なのか上へ登る為の階段が途切れ、どうにかしなければならない
そこで目についたのは赤い宝玉が嵌め込まれた玉座と対照的に何もついていない玉座、何らかのギミックがある事は明らかでそれに当てはまる宝玉を探す事に
散策している内に人目がつかない区切られた部屋の隅で青い宝玉を見つけ、それを何もついていない玉座へ嵌め込むとギミックが働き、水位が上昇し壊れた階段の先へ登る事が出来た
「前から気になってたんだが」
「なによ?」
「親衛隊の連中、なんであんなにアレクセイに忠実なんだ?」
「確かに。いい加減、もう目を覚ましてもよさそうなもんなのじゃ」
「騎士団の大部分が貴族の門弟で占められてるってのは知ってるでしょ?」
「ああ、嫌というほどな」
「んで騎士の中から優秀なの集めて皇帝の警護やらせた、これが本来の親衛隊」
だがその親衛隊が守るべき皇帝の席は皆が知っている通り、何年も空いたまま、本来ならその時点で親衛隊の意義はなくなっているのだが、アレクセイはこの数年の内に私兵化してしまったというのだ
けれどその理由があったとしても彼らの盲目的なまでの忠義の理由には足りない気がした
「あの忠犬ぶりはそれだけとは思えねえな」
「掲げた理想はそれなりに恰好よかったからね、我々が帝国を導くんだぞーってね」
「みんな、彼に惹き付けられて本気で信じていたんだ、今でも信じているんだろう。僕には彼らを責めることはできない」
「でもフレンみたいに他の人だって……」
「みんながみんな、自分で気付けたら、世の中もうちっとマシになるんだろうけどねえ」
「……」
フレンはアレクセイが掲げた理想に吞み込まれる前にその歪みに気付き、脱出出来たが親衛隊の彼らはもう手遅れだろう
彼らが信じるのは忠義を示すアレクセイ、そのアレクセイに楯突くユーリ達の説得に応じる可能性はなかった
信義と忠義、そして盲目的な服従
(自分達が信じるもの、彼らが信じるもの)