chapter:51 汚れきった白と屈託の無い黒
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「……呆れたものだ、あの衝撃でも死なないとは」
「あやうくご期待に沿えるとこだったけどな
アルシアとエステル返してぶっ倒されんのとぶっ倒されてアルシアとエステル返すのと、どっちか選びな」
「月並みで悪いが、どちらも断ると言ったら?」
「じゃあオレが決めてやるよ」
自分達の要求に応じる気配を見せないアレクセイへとユーリは鞘から剣を抜く、それでもアレクセイは彼らを煽る事を止めはしない
「姫の力は本当にすばらしかった、いにしえの満月の子らと比べても遜色あるまい。
娘の力もまた然り、数少ない伝承に残っていた陽月の子らに匹敵する、私の役におおいにたった、この後も役に立ってもらおう
人にはそれぞれ相応しい役回りというものがある、姫と娘はそれを立派に果たしてくれた」
「用が済んだってんなら、なおのこと返してもらうぜ。もちろんアルシアもな」
「いいとも」
やけに素直に応じたアレクセイはアルシアをそのままに今まで背を向けさせられていたエステルが術式が回転する事でユーリ達と対面する形となる
だがその瞳は暗く陰り、それは一切の感情を排された人形の面持ちの様でいて、異変に気付いたジュディスは顔色を変えた
「エステル!?」
術式から解放されたエステル、その手に剣と盾を持つとユーリ達目掛け駆け出す
突然の事で動けない仲間達よりも早く我に返ったユーリは慌ててその剣撃を自身の剣で受け止めた
「うおっ!!」
「エステル!どうしたんだよ!!」
「待って、操られているようよ」
「ぐっ……!卑怯じゃ……卑怯なのじゃ、アレクセイ!」
「取り戻してどうする?姫や娘の力はもう本人の意志ではどうにもならん、我がシステムによってようやく制御している状態なのだ
暴走した魔導器を止めるには破壊するしかない、諸君ならよく知っているはずだな。娘が諸君らの元にいれば、この状況も変えられたかもしれんが」
「エステルを物呼ばわりしないで!! そしてアルシアの命を軽々しく思うんじゃないわよ!」
物言いに憤怒するリタを何とも思わずにアレクセイは背を向ける、そこには未だに気を失い続けているアルシアの姿が
「ああ、まさしくかけがえのない道具だったよ、姫は。そして陽月の子は手放し難いほどの魅力だ
おまえもだ、シュヴァーン。生き延びたのならまた使ってやる、さっさと道具らしく戻ってくるがいい」
「シュヴァーンなら可哀想に、あんたが生き埋めにしたでしょうが。俺はレイヴン、そこんとこよろしく」
「役回りがあるってのは同感だけどな、その中身は自分で決めるもんだろ」
「それで無駄な人生を送る者もいるというのにかね、異な事を」
感情を排除され、一切の手加減を失ったエステルの剣撃を依然として受け止めながらユーリはレイヴンの言葉に続く様に反論する
今度はアレクセイがユーリの言い分を否定するが、今度はカロルとパティが更に反論を試みた、アレクセイの考えは受け入れられないと言う様に
「自分で選んだんなら受け入れるよ、自分で決めるってのはそういうことだ!」
「無駄かなんてどうかなんて、おまえに決める権利なんかないのじゃ!」
「残念だな、どこまでも平行線か」
話に起伏が起きない事をそう言うものの声色は酷く平坦で、アレクセイは聖核を組み込んだ剣を抜くとそれに仕込んだ術式を発動させてしまう
その術式はエステルに関与したのか、彼女の力は増々強まり、ユーリの剣は押され気味に抑え込まれ始める
「やめろ!!」
「…ッユー、リ…?」
「!アルシアッ!」
「今、このバカをぶっ倒して助けるから!アルシア!」
「リタ…」
雑踏に意識が覚醒を促したのか、漸く目を覚ましたアルシアへとユーリの視線は向かう
しばらく二人の視線が交錯していたが彼女の瞳に様子が可笑しいエステルが映ったのか、その瞳は微かに見開き、声は震えている様に鼓膜を振動させた
「エステ、ル…?何で二人、戦って…」
「よせ、エステル!くっそおお!!」
もはやエステルと戦う事は避けられない、その事に叫んだユーリはアルシアの目の前で戦う事にも躊躇いしか生まれなかった
汚れきった白と屈託の無い黒
(救うべき存在と何故剣を交えねばならぬのか、)
Title by:「飴玉ウサギの涙」様