chapter:49 生憎、シニシズムは生きている
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「帝都は……ザーフィアスはもう人の住めない街と化しました」
「街の結界魔導器が光を発して……地震と落雷が街を襲った……」
「ですが本当の恐怖はその後でした、結界魔導器の根元から光る靄のようなものが現れて、全域に広がったんです
触れた植物が巨大化して、水は毒の沼のように……地獄のような光景でした」
「エアルの暴走だわ……」
「栄えある帝国の首都、ザーフィアスがよもやあのような事になろうとは……」
「帝都全部を満たすエアル……一体どれだけの負荷を……」
「あ、あれはアレクセイめの仕業に違いない!やつは我々に服従を要求してきた。断ると、それなら塵になれと言いよった!」
「アレクセイ……」
この問題に早くから接していたユーリ達にとってはその名前が出る事はもはや想定内、当時の事を思い出す側付きは尚も声を荒げる
帝都から脱出する彼らへとアレクセイは親衛隊をけしかけてきたらしいが、フレン隊が親衛隊を押さえ付けてくれた為に帝都の民達は全滅する事なく、ハルルにたどり着けたと言う
「さすがフレン、と言いたいところだが避難民の中に下町の連中が見当たらねぇのが気になる。連中はどうなった?」
「……すみません、私は見ていない」
「置いていったのね、エアルが溢れている中に」
「わ、我々も命からがらだったのだ。あの状況ですべての民を導くことはできなかった、仕方なかった!仕方なかったのだ!」
「……そうかい」
「あ……」
「宿屋に戻るぞ」
側付きの必死の弁明に冷めた返答を残し、ユーリは宿屋へと踵を返す
あまりにもあっさりし過ぎた彼の対応に付いていけず、立ちすくんでいるリタ達に有無を言わさずに無言で宿屋へ帰宅すると聞き込んだ事をレイヴンにも説明する
「ヨーデル殿下が……」
「帝都は丸ごとエアルに飲み込まれたらしい、中心にいるのは恐らく……」
「無茶苦茶よ!つまりそれ全部エアルを集めさせてるアルシアの負担ってことなのよ?ううん、アルシアだけじゃない、エステルだって……無理矢理、力使わされる度にどんだけの消耗を強いられるか
ただでさえ制御が危うくなっているのにそんな使ってたらどうなるか……もし……もし手遅れになったりしたら、アレクセイを倒したって……」
どんどん思考がマイナス方面に働き、思い詰めたリタの言葉に責任を感じたレイヴンは雰囲気を変えようと話題をすり替えようと試みる
「その……力を抑える方法ってのはないもんなのかね、アルシアちゃんには封印魔導器ってものがあったっしょ、まあもう壊れちゃったけど……」
「ある、きっとある。でもまだ……」
「あ……と、そうそう、騎士団はどうしてんの?」
「フレンが頑張ってるらしいがどうにもならんだろ、連中には宙の戒典もねぇ」
「ふーむ……」
「フェローに聞いてみるわ、まだどのくらい時間が残されているかって」
「…………」
「ユーリ……」
ふと話し声で目覚めた今まで眠っていたカロルの元へとユーリは歩み寄る
「悪ぃ起こしちまったか、調子はどうだ?」
「ごめん、また足引っ張っちゃって……帝都に行くんでしょ?」
「気にすんなって。オレたち助けてそうなったんだから、それより治すことに集中しろ」
「うん、でも置いてっちゃやだよ。アルシアとエステル、ギルドのみんなで助けるんだから……」
「ああ、分かってる。さ、もう少し寝とけ、な?」
「うん……」
置いていかれる事への不安を拭ってやるとカロルは再び瞳を閉ざし、眠りにつく
その傍らでナギーグでフェローと話を試みようとしていたジュディスが彼と繋がらない事を告げ、その理由はエアルが乱れているものの可能性が高いとの事だった
だがフェローと繋がらなくても彼には問題がない様に振る舞った
「いいさ、どっちみち、アレクセイの野郎をぶっ倒すだけの話だ。だろ?」
「……それだけ?」
「……ちょっと外の空気、吸ってくる。カロル、見ててやってくれ」
「ユーリ……」
「何そんな顔してるんだよ、心配いらねぇよ」
外に出て行こうとするユーリのただならぬ雰囲気に気付いたパティは深刻そうに表情を固め、腕に抱きつく事で引き止めるが彼はあやふやに笑い飛ばすだけだった
自分を引き止める腕を解き、今度こそ部屋を後にしたユーリの背中を追うのはラピードだけ、残った仲間達は深刻そうに表情を作っていた
「損な役回り、か……」
思い詰めた様な声色でその一言を呟くとラピードを連れ、ユーリは仲間達を置き去りにハルルを出て行こうと歩き出した
生憎、シニシズムは生きている
(こんな役割、自分だけで十分だと夜に溶ける)
Title by:「飴玉ウサギの涙」様