chapter:49 生憎、シニシズムは生きている
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「あいた!」
「カロルは狸寝入りが上手いの」
「この寒い中、おっさんに労働させるとはカロル君、君もなかなかやるではないか」
「もう大丈夫か、カロル」
「うん」
「心配したのよ、とても」
「うちもじゃ」
「そんな風には見えなかったけど?」
「おかしいわね」
狸寝入りについてはレイヴンが一番苦言を呈したい所だろうが、今はカロルを労る言葉の方がユーリ達は先に口々に出て行く
ポーカーフェイスが得意なのか、カロルを心配していた気持ちが表面に出なかったジュディスとパティをリタは呆れた様子で指摘すると彼女達はお互いに顔を見合わせ、不思議そうにするのだった
「とにかく、もう無茶なことしないでよね。サポートしきれないわ」
「うん」
「なーにニタニタしてんだ?」
「ひどいな、ユーリ。……ドンの言葉を思い出してたんだよ」
「仲間を守ってみろ、そうすれば応えてくれる……だったか?」
「うん、あれってこういうことだったのかなって」
「それがおまえの見つけた答えって事か。なら、きっと正解だよ」
「そうだといいな」
「さ、出口はすぐそこだ。とっとと抜けちまおうぜ」
仲間を守った事で仲間はカロルに応えてくれた、彼らを守る為に振るった勇気と見合ったそれはドンの死から悩み続けていた彼が漸く見つけた答え
出口へ向かおうという提案が下されたにも関わらず、何かを思惑しているリタにジュディスが気付き、言葉を投げかけた
「どうかしたかしら?」
「うん。ここの氷ってエアルから生まれたのかもしれないって」
「氷が?エアルから?」
「あらゆるものがエアルからできているなら当然ね」
「ここのエアルクレーネはある意味、すごく安定してた。魔物が操れる程にね
もしかしたら大量に物質化できたらエアルが安定するのかも」
「それってエアルの乱れを解消できて、アルシアの負担も何とかなるかもしれない、そう言うことか?」
「分からない、そのためにはもっと効率が必要だろうし、量だって……」
エアルを大量に物質化する事がエアルの乱れを解消出来るかもしれない、という仮説はまだまだ確立するには論理が足りない
その論理を集める為にもここのエアルクレーネを調査する必要があるが、今彼女がするべき事に調査する時間の猶予もないのは周知の事実だ
バイトジョーという想定外の事態に思わぬ時間を取られ、気分は誰が言うまでもなく急かされる
「アルシア、エステル、無事でいて……」
「……」
「ここを出たらどっかの街で帝都がどうなっているか聞いてみようよ」
「あいよう」
ゾフェル氷刃海を抜け、カロルが言った様に帝都の現状を聞き込む為にハルルに立ち寄ると以前とは違う様子に気付いたユーリは周りを見渡す
「……えらくごった返してんな」
「帝都から逃げてきた連中よ、キレイな身なりしてんでしょ?」
以前と違う様子というのは街の人口密度が増えている事だった、レイヴンに言われた通り、ハルルの街は貴族街で見慣れた風貌の人々で溢れかえっていた
アルシアとエステルが以前治したハルルの樹の様子を見たリタの見分では結界に異常は見当たらず、正常に働いているとの事
「……はあ……はあ」
「カロル、大丈夫?」
「大丈夫じゃないみたいね」
息も絶え絶えの様子のカロルを支えたレイヴンはその体が異常な熱を発しているのに気付き、ジュディスがその額に手を当てた事でカロルの体調不良は明るみに出る
「すごい熱、無理してたのね」
「あんな無茶するからよ、ったく……ユーリ……?」
「ん?ああ、悪ぃ。宿屋に行ってカロル、休ませてやろうぜ」
息も絶え絶えのカロルをレイヴンが再び背負い、彼を休ませる為に人々の間を抜け、以前にも世話になった事がある宿屋へと向かう
だがその道中、リタも不振に思った様にユーリは何処か様子が可笑しく視線を忙しなく動かしており、見兼ねたレイヴンがその事について彼に訪ねた
「さっきからきょろきょろと誰か探してる人でもいるわけ?」
「あん、別にきょろきょろなんてしてねえぞ」
「隠したって無駄よ、視線が左右に泳いでるもの」
「……まいったな。別にたいしたことじゃねえけど、帝都から来た連中の中に下町の住人がいねえなってさ」
「それが心配なのね、隠さなくてもいいのに」
「……余計な心配ごと、増やせる状況じゃねえだろ」
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