chapter:48 勇気は救いとなり、少年の手に
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「た、大変です、閣下!道が、道がなくなってて!!」
「!?」
「……エフミドの丘の向こうに巨大な穴が空いているんです、周囲は物凄い熱で近付くこともできませんでした」
「ううむ、にわかに信じ難いが……少し前の地鳴りの正体はそれか」
「仮に近づけるようになっても、あの大穴を越えることはとても……このままでは誰も丘の先には行けません!」
執政官と秘書の会話をユーリと同じ様に聞いていた住民の二人はノール港は孤立したのかと騒ぎ立て始める
あの時、自分達が必死になって照準を定めたヘラクレスの砲撃が思わぬ所で壁となり立ち塞がってしまった、この事をカロル達に知らせる為にユーリは宿へと踵を返した
「……よりによってえらいとこに当たっちまったもんだねえ」
「街に当たらなかったのがせめてもの救いね」
神妙な面持ちでユーリから聞かされた話に相槌を打つレイヴンとジュディスの背後で怪我のダメージが大きく、今まで眠っていたカロルとリタが目を覚ます
「もういいのか、ふたりとも」
「まだあちこち痛いけど……アルシアとエステルが危ないんだ、のんびり寝てられないよ」
「そゆこと」
「しかしどうするよ、実際」
「エフミドの丘を抜けられないなら、船で迂回するとか」
「それは無理だ、少し前に遠出できるような船は全部騎士団が持っていってしまったんだ。おかげで今、港は空っぽさ」
この港に船がないなら自分達のフィエルティア号を修理して、海から帝都へ回りこむという提案をレイヴンが立案するがパティがそれに腕を組み、眉を潜めた
彼女が言うには竜骨、という船にとって重要な箇所が満遍なく破損してしまっており、それを修理するには時間がかかると言う、その時間でさえも今の彼らには惜しいもの、思わず苦言が口から溢れた
「……方法がないこともない、あまりお勧めできないがね」
「手があるなら教えてくれ。オレたち、急いで帝都に行きたいんだ」
「大きく遠回りすることになるんだが……エフミドの丘の手前を北に行くと山と海に挟まれた細い海岸がある
その先は行き止まりなんだが今の季節、そこに流氷がたくさん流れつく」
「ゾフェル氷刃海ね」
今まで黙って会話に聞き耳を立てていただけのティグルはジュディスの口に出した地名に頷く、彼が言うにはその氷刃海の流氷は流氷同士が連なり、道になる事があると言う、ただし運が良ければ、の話だが
もしその運の女神がユーリ達に味方してくれれば、大陸の真ん中へと迂回出来る、だがその方法にカロルは表情に暗い影を落とした
「ゾフェル氷刃海か……あの辺りは気味悪い噂が色々あって、漁師も近づかないって話だよ」
「それに自然のことだから、必ず通れるとも限らない」
「自然はむしろ、人の敵であることの方が多いからの」
「なかなか穿ったことを言うわね、パティちゃん」
「それしか方法がないなら行くしかないでしょ」
「よし行こう。……世話になったな」
「いいって、あんたたちはうちの一家の恩人なんだから。その代わり、うちの子の期待を裏切らないでやってくれ」
「うん、まかせてよ!」
判断を下したユーリを筆頭にノール港を出た足でティグルから聞かされた山沿いの細い海岸へ向かうとこれまた彼が言った通りに流氷が連なり、海面上に道を作り上げていた海に出る
どうやら彼らは運に見放されていない事が分かったが流氷が連なっているという事で海は吹雪き、それと相成って気温は酷く冷たく、刃の様に肌を刺す
吹雪く白い視界の中で見える地面からはあちこちに錆びた剣が生えるのが見え、この低気温にレイヴンは人一倍に身を縮めていた
「うううううううう、寒い寒い寒い」
「おっさん、ウザイ」
「年寄りは体温高くないのよ、あー砂漠の暑さが懐かしいわ」
「無駄口叩いてるとこけるぞ……って言ってる側から」
呆れた様に苦笑するユーリの目の前でレイヴンはその背後で転けてしまったカロルに巻き込まれてしまい、一緒に転倒してしまった
「あたーしゃんとしてよ、年寄りは繊細なんだから」
「……ご、ごめん」
「しかしすげぇところだな、不思議っつーか不気味っつーか。氷から剣が生えてんぞ」
「あちこちにあるわよ、なんなのよここ!?」
「昔の海賊と帝国が争った名残なのじゃ」
「ん?そ、そう言や、なんかそんなのき、聞いたことあるな」
「よく知ってるな、そんなこと」
「……アイフリードのことを調べてた時に収集した情報なのじゃ」
「刃のように冷たいから氷刃海。……と思ってたけど、こういうことなのね」
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