chapter:65 語り部なる風雅、若草に芽吹きて
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「ふぃ~、やっと半分ってとこ?」
「せめて気流が安定していれば、バウルに来てもらえるのだけど」
ここに来た時と同じく気流は荒び続けており、バウルを呼ぶに呼べない状態が続き、この坂を上るしか選択肢は残っていなかった
休息の合間に会話を広げるアルシア達の目の前に覚醒した風の精霊が竜巻を伴い、現れるが彼女は精霊となった事で広がった視野に慣れずにいる様子だ
『……知覚が……これが精霊になるということ……
……これは……こんなにも多くのことが隠されていたとは……』
「おはようさんなのじゃ」
「目覚めたんだな、えっと……」
「そういえば、まだ名前なかったね」
彼女に名前をつけずにあの場を後にした事に気付く
「あなたは……クロームと呼ばれる方がいいかしら?」
『いえ……私はもう始祖の隸長のクロームではありません、新たな名を受けるべきでしょう』
「なら……シルフって名前はどうです?風を紡ぐ者、って意味です」
『シルフ……ではそれを我が名としましょう』
「それじゃ改めてよろしく、風の精霊 シルフ」
『ええ』
デュークを止める為にも自分達は彼のことをもっと知らねばならない、そしてその為にはクロームの記憶を持つシルフに聞く必要がある
「……シルフ、デュークがなぜ人間を嫌うのか教えてくんねぇか」
『……わかりました。……人魔戦争は知っていますね
始祖の隸長には人間と共に生きる道を選ぶものと、人間を拒むものがいました
人魔戦争は古代の禁を破った人間と人間を拒む始祖の隸長との戦いでした』
「で、戦いはデュークという英雄の活躍により人間は勝利を納め、人魔戦争は終結した」
「デュークが英雄?」
「そうだったんですか……」
「帝国が隠してた真相の一つってやつよ」
「都合のいい噂を流して都合の悪いことを隠す、単純だけど効果的なのじゃ」
レイヴンがその真相を知っていたのはアレクセイがシュヴァーンに伝えていたからなのだろうか、それよりもいつもと違う様子で帝国を批判するパティに視線が行ってしまう
「……パティ……?」
『あの戦争は人間の力だけで勝利をつかんだのではないのです
共存を唱える始祖の隸長の長、"エルシフル"が人間と共に戦い、人間に勝利をもたらしたのです』
「マジかよ……そんな話、俺も知らなかったぜ……
けんども……この話がデュークの人間不信にどう繋がるってのよ?」
「……その戦争の中で決定的な何かが起こって、人間不信になったってこと?」
『エルシフルはデュークの友でした。デュークはエルシフルと共に人を拒むものの長と戦い、倒したのです
しかし戦争が終結したとき、エルシフルの力を恐れた帝国は傷付いたエルシフルを襲い、命を奪ったのです。静観するとデュークに約束していたにもかかわらず』
「そんな……」
「なるほどな……人間を信じられなくなる訳だ」
帝国の為に戦争に身を投じ、勝利を勝ち取ったにも関わらず人間は身勝手にも戦友を始末し、絶対の安定を手にした人魔戦争の真相
彼が人間に反旗を翻したのは長い時を経ての因果応報なのか、それでも彼にこの世界の人々の命を勝手にさし出していい、という理由にもならない
人々を守る為に世界を救おうとする自分達、世界を守る為に人々を犠牲にするデュークは同じ志だというのに決して相容れない
「戦争の陰でそんなことがあったのね」
「デューク……哀れなのじゃ……」
「人間を守る為に力を貸してくれたエルシフルとデュークを騙した、なんて……」
「……あいつがどんなにキツい裏切りにあってたとしても、すべての人間の命を犠牲にする権利なんてねぇよ」
『デュークより先に星喰みを滅ぼさなければ、結局人間は滅びることになるでしょう。急ぎなさい
気流を抑えました。これでバウルもここまで来る事が出来るでしょう』
デュークの人間不信に繋がる過去を語り終えたシルフが姿を消すと同時に荒んでいた気流は落ち着きを見せた
「ありがとう、シルフ」
「精霊化は順調だけど……」
「ああ、デュークもなんかやばそげ」
「……そうだな」
精霊化を終え、こちらは星喰みと戦う準備は出来た
けれど今度はデュークを止める必要がある様だ、彼が全ての人々の命を犠牲にする前に自分達が星喰みを何とかしなくては、彼を思う精霊と共に
語り部なる風雅、若草に芽吹きて
(彼の者の真実を伝えん)