chapter:61 今は遠き無垢な日々に思いもせず
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「きゃあ」
「えっ」
「あいたたた!やめて、噛まないで!」
普段は大人しく、子供にも目をかけるラピードがカロルに噛み付くという事に呆気に取られていると逃げ出すカロルを更にラピードが追いかけて行く
もしかしたら、ラピードはカロルがこの状況から逃げてしまうのではないか、と考え、彼を叱咤しているのだろうか
「落ち着いて、ラピード。カロルは少し不安になっただけだよ」
「だいじょうぶです、ラピード。今は少しとまどってるだけです」
「ちょっとぐらいびびってもいいでしょ~。逃げたりしないよ、絶対!」
「ワワン!ワン!」
「あはは……相棒に似ちゃったのかな?」
カロルを叱咤し、奮い立たせようとする姿はドンが亡くなってすぐ後のユーリの姿を思い浮かばせられた、しっかりとラピードは彼の性格を受け継いだ様だ
ノードポリカとナッツ達の近況を確認し、闘技場をアルシア達は後にすると先程のナッツの様子にベリウスの後任が板についてきた事を知る
「ナッツさん、がんばってたね」
「ああ、ベリウス亡き後、うまくまとめてるみたいだな」
「ウンディーネと会わせてあげたいです、きっと喜びます」
「今は止めとけ。けど全部ケリがついた時には驚かせてやろうぜ」
「はい」
「ウンディーネとナッツさんを引き合わせる為にも星喰み、何とかしないとね」
「にしても、あの化け物……「戦士の殿堂」の手練が太刀打ちできてなかったな。どうも解せないねぇ」
「凛々の明星」は倒せた、「戦士の殿堂」達と自分達の違いがあるとしたらそれはつい最近誕生した精霊 ウンディーネの存在か
「星喰みはエアルに近いってんなら、精霊の力が影響した可能性はあるわね」
「それじゃ、あと三体そろえればもっと対抗できるってことか?」
「どうだろう……エアルを抑えるだけなら、属性そろえれば十分だろうけど、相手はあの星喰みだから何とも言えないわ」
「うーむ、聖核だってそこら辺に転がってるもんじゃないしなあ」
「始祖の隸長ももう数少ないみたいですし……」
抑えるだけなら、かつての満月の子達と同じ事だ、今度こそあの星喰みを二度と発現させない様に倒さなければならないだろう
その為には四属性の精霊だけでは数は心許ない、始祖の隸長の命の結晶である聖核も早々に生成出来るものではない、それらを踏まえて考えている中でアルシア、ある事を思い出す
「……ねえ魔導器の魔核って聖核のカケラ、なんだよね?」
「はい。クリティア族の長老さんがそう言っていました」
「だったら、さ……」
その先を言う事を口籠るアルシアが言おうとしている事を察し、ユーリがその後を引き継いだ
「もし精霊四体で足りないんなら世界中の魔核を精霊に変えたらいいんじゃないか、アルシアはそう言いたいんだな?」
「そう、なんだけどね…」
「ううむ、そうなったら海辺の砂粒みたく精霊だらけになるかもしれんの」
「無茶なこと言うわね、だいたいどうやってやるのよ」
「仮に方法がわかっても、魔導器ひとつひとつを回るのかしら?星喰みは待ってくれないと思うけれど」
「どうにかしてくれるよな?専門家さん」
実現出来なくはない話だがリスクが大き過ぎる、そう言われているのにリタへ視線に促すユーリの行動に彼女は眉を潜め、簡単に言うなと釘を刺す
それに魔導器の魔核を使い、精霊を生み出すとなると世界全体が変革することになる
「……もしアルシアとユーリの言った方法が実現したとして……そしたら魔導器は全部使えなくなっちゃわない?」
「魔核がなくなるわけだから、そうなるわな」
「どんな世の中になってしまうんでしょう?」
「結界によって約束されていた安全はなくなり……」
「魔導器にまかなわれてた生活に必要な機能が失われて、相当不便な生活になるでしょうね」
「武醒魔導器も駄目になるんだよね、うーん……」
「常に危険と隣り合わせになるってことになるよね、今も結界魔導器に頼り切ってるから……」
結界によって約束された平穏、その中で過ごしていた者達にはアルシア達の様に魔物に立ち向かう術は持ち合わせてはいない者が大半だろう
世界を救う為に、星喰みを討つ為に果たして何人の者が魔導器を、約束された平穏を捨てるという選択を取るのだろうか
「なに、魔導器がなくなっても、うちはオール一本で大海原を渡ってみせるのじゃ」
「その気概、素敵だわ。パティ」
「あんたたちがそれでよくても……」
「嫌がるヤツは大勢いるだろうな、それでもやらなきゃ……世界は星喰みのもんだ、オレはやるべきだと思う
たとえ仲間以外の誰にも理解されなかったとしても」
「最後の最後まで説得を試みて、理解されなくてもこの方法しかないならやるしかない、よね
それに……ずっと魔導器に依存し切りのこの状況にも新しい切り込みがいると思う、私」
世界あってこその日常、その基盤を守る為にミョルゾの様に魔導器を放棄しなければならない
何も知らない者達から魔導器を取り上げる、という事は人々からの敵意の矛先を全て受け止めなければならない、という事かもしれない
今は遠き無垢な日々に思いもせず
(こんな日が来るなんて考えついたかい)