chapter:60 蒼麗たる産声、汝が名は
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『ジュディスか。ベリウス、そうわらわは……いや違う
かつてベリウスであった。しかしもはや違う』
「どういうことだ?」
「まさか、聖核に宿っていたベリウスの意志が……?すごい……」
蒼穹の水玉が生命体となり、しかもそれはかつてのベリウスであった…思ってもいなかった状況を目の当たりにし、これを上手く飲み込めずに呆然と立ち尽くすばかり
起こった現象について考え込んでいたリタだったが、単純に今起こった現象に笑みを零し、ベリウスの意思を宿す存在に彼女の命を取った責任を抱え込んでいたアルシアは涙ぐむ
「それってベリウスが転生した、ってこと……?」
『すべての水がわらわに従うのが分かる、わらわは水を統べる者』
「なんか分からんけど、これ成功なの?」
「せ、成功っていうかそれ以上の結果……まさか意思を宿すなんて」
「驚け!自然の神秘は常に人の想像をはるかに超越するものなのじゃ!」
「そうね……どうやら、それは認めざるを得ないみたい」
いつもなら直ぐさまにパティの言葉に鋭敏な切り返しをするリタもこの状況は素直に受け入れざるを得ず、誕生した存在を認めた様だ
エアルを効率よく物質化する為の変換機を作り出す為の実験の過程で生まれた存在は自分の存在を生み出した者達へ問いかける
『人間よ、わらわは何であろう?もはや始祖の隸長でもなければ、ベリウスでもないわらわは
そなたらがわらわを生み出した、どうか名を与えて欲しい』
「物質の精髄を司る存在……《精霊》なんてどうだ?」
『して我が名は』
「ざぶざぶ水色クイー……」
名を欲する精霊に応える為に名前をつけようと善意を働かせるも、カロルのネーミングセンスにユーリ達が無言の圧力をかけ黙らせてしまった、流石にない、と誰もが思った様だ
そしていつぞやのギルドの名前を命名したときと同じく、エステルが代わりの名前をそれらしい響きで提案した
「古代の言葉で水を統べる者……"ウンディーネ"、なんてどうです?」
『ウンディーネ……ではわらわは今より精霊 ウンディーネ
おお……力がみなぎる……そなたらがわらわのために多くのエアルを集めてくれたからじゃ』
「……がんばったもんね……」
「ウンディーネ!オレたちは世界のエアルを抑えたい、力を貸して欲しい」
ユーリの言葉に緩慢とした動作で頷くウンディーネだが、彼女は自分だけでは世界のエアルを抑えるには足りないと告げてきた
最低でも水以外の属性を統べる属性、基本元素である地水火風がいなければエアルを抑える事は出来ないらしい、水はウンディーネがいるので良いとして残るは後三元素
「それってやっぱり始祖の隸長をなんとかするしかないってこと?」
「素直に精霊になってくれるといいんじゃがの」
「訳を話したら分かってくれないかな?少し骨が要りそうだけど」
「もう存在している始祖の隸長も数少ないわ。フェロー、グシオス……」
「あと、バウルだね」
「バウルはだめ、まだ聖核を生成するほどのエアルを処理していないわ。それに、私が認められそうにない」
長年連れ添って来たからこそ、個人的な思い入れがアルシア達よりも強くバウルを精霊にするのは認められそうにない、と素直に告げたジュディス
バウルへの思い入れはテムザ山で目の当たりしたからこそ、彼女を一概に責めようとする者はここにはいなかった
「ウンディーネ、心当たりはないのか?」
『輝ける森 エレアルーミン、世界の根たる レレウィーゼ
場所はそなたの友、バウルが知っておろう』
バウルを精霊に出来ないとなれば、残る後一体の始祖の隸長を探すしかない、その在処をウンディーネはユーリ達へ託すと音もなく、自分達の前から姿を消すもので驚き、辺りを見渡し彼女を捜す
「いえ、……います。感じます」
「うん、私達の傍に……いる」
自分の胸に手を当て、ユーリ達とは違い、ウンディーネと何らかの繋がりを持ったらしいエステルとアルシアの言葉は信憑性が高いものに感じ取られた
ウンディーネが消失した訳ではないと知り、安堵する中でジュディスは背後のエアルクレーネを見上げ、先程までの二人の変化に誰よりも早く勘づく
「エアルクレーネも落ち着いたよう……アルシアの力が働いている訳でもなく、二人の力を抑制してないのに」
「え!」
その言葉に初めて気付かされたリタは再びアルシアとエステルを対象に解析術式を展開し、目を丸くする
抑制術式を外したままだと言うのに二人の力の数値が落ち着いているのだ、思い当たる節は一つ
「これって……ウンディーネがアルシアとエステルの力を制御してくれてる……?」
「じゃあ、アルシアとエステルは本当に自由になったの?」
「ええ……ええ!よかった、エステル……」
「アルシア、よかったな」
「うん!これで私、また戦えるんだね」
抑制術式で命を削ることもなくなった事を祝福され、アルシアとエステルは嬉しそうに頷く
二人の力の事に関しても、世界、星喰みの事も新たに生み出された精霊の存在によって収束の兆しが見え始めた
「なんだか不思議な成り行きになってきたねえ」
「確かに想像もしてなかったことばかりだ、けど光が見えてきたじゃねぇか」
「わずかな光じゃ。でも深海から見える太陽くらいに嬉しい光なのじゃ」
「今は小さな光だけど、これから大きくすれば……星喰みにだって対抗できるよ!」
思ってもいなかった事が次から次へと起こるも、それは全て事態の回復への兆候
自分達に運は回って来た、と喜んでも良い様だ
蒼麗たる産声、汝が名は
(世界をたゆたう水治めし者)