第七十六幕 溢れ出す零墨に鯉が覗く
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「!!」
『!?あ…』
「晴…明?晴明!?晴明なの!?」
「うわぁあああ、われた!?」
「おお、ぬえが―――!?」
中空から生じた破裂音に戦いに投じていた妖や人々はその手を止め、空を仰ぎ見る。鵺であった入れ物が破裂した事で生まれた黒い欠片が、まるでその復活を祝福するかの様にこの場全ての者達へと余す事なく降り注ぐ
脚光の様にそれを全身に浴びる羽衣狐からは先程まであった、苛む様な頭の痛みも嘘の様にどこかへ消え去る。我が子の復活を喜ぶ母の思いの前に勝るものはない、彼女を苦しめていた依代の記憶もなりを潜めてしまった様だ
「おお…おお…晴明…待ちわびたぞ」
「そんな…」
ー届かなかった、間に合わなかった…
「まだだ、まだ…話は終わってねぇ…羽衣狐」
鵺復活を止める事が出来ず、茫然自失する仲間達とは打って変わり、この状況下でも手負いのリクオは希望を捨ててはいなかった。もしくは彼の頭の中では鵺の事など、二の次になっているのかもしれない
自分の中に存在する有り得ない記憶について、ちゃんとした答えを得るまでは彼は羽衣狐と戦う事を止めたりはできない。そんな風に戦意を失わないリクオと打って変わって、羽衣狐にとってはこの座興はもう清明が復活した時に終わっていた
「
我々の闘いなど、晴明の誕生前夜の盛大な余興にすぎないのだから…」
空間にただ降り注ぐだけであった漆黒の欠片が光を受けたかの様に照らし出され、ある光景を映し出す。そこに映し出されたのは様々な年代の、異なる時代を生きた女性達の姿。姿形は異なるが、いずれも全て羽衣狐であろう
――それは可視化した記憶。我が子 晴明復活という宿願だけを夢見て、幾度も転生を繰り返して来た母の――羽衣狐の千年分の記憶が鵺の欠片に映り込んでいるのだ
「長かった…千年の記憶がよみがえる」
「なんだこりゃ…!?」
「映像…!?」
「昔の…!?」
「これは…羽衣狐様の記憶…」
海岸に打ち上げられた女性や馬に跨がり、勇ましく男性達と共に戦いに赴く女武士の姿がそれぞれに鵺の欠片に映し出される
その他にも様々な時代で様々な人の姿を取り、彼女は裏から人の世を操っていたのだろう
「…」
『リクオ、これは一体…』
ー弐條城は思念の産んだ幻の城―――
「何度も何度も、晴明を思い――転生をくり返した」
ーそのたびに望みは何度も絶たれた、400年前―――
「やっと力を得たと思えば」
晴明復活に弾んでいた声がいきなり、低く重みを持った声質へと変貌する。その原因は忌々しい記憶を思い出した事にあるのだろう、その記憶は大きな欠片の中に浮かび上がった
若き日のぬらりひょんがその時代の羽衣狐ー淀殿を両断する記憶、された記憶といった方がいいだろうか。これこそが四百年前の忌々しい記憶、その記憶からは晴明復活の夢を踏みにじられた怨嗟が滲み出ていた
『あれは、ぬらおじい様と…』
「お前たちさえいなければ、晴明にもっと早く会えたのじゃ!!」
四百年前もぬらりひょんさえいなければ、晴明と会えたー思い出すだけで腸が煮え繰り返りそうになる。彼だけではない、その血筋さえこの世界に存在しなければ、千年も清明との再会を待たずに済んだのだ
欠片に映し出される記憶に気を取られ、無防備を晒していたリクオの体に羽衣狐の怨嗟がぶつけられる。壁に打ち付けられた体には一切の力が入らず、目の前に迫る羽衣狐の攻撃でさえも今のリクオでは避ける事はできないだろう
「これで、本当に
「おや…じ…」
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