第七十五幕 厚き煙に覆われし無月
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ー!?また――この記憶が――――……
リクオの父とされる二代目の名を聞いてから、断片的に蘇る記憶が羽衣狐の心臓を騒ぎ立てる。思い出すのは決まって幼い自分が無邪気に差し伸べられた手に応える記憶
それはまだこの体が羽衣狐になる前ー人間だった頃のものだが、依代が自分になった時にその頃の記憶は全て消えた筈。それなのにこうして依代の記憶が蘇るなど、過去にも例がない。羽衣狐にとっては有り得ない話だった
「人間のあんたと話をさせてくれ、オレの中の…ありえねぇ記憶のことだ」
ーオレと―――あんたのこと
「………かんけい…ない…千年を転生し続ける妾とは、関係のない話じゃ…!!」
ー妾には依代の記憶など、ない―――――
「オレ達はどうしたらいい?裏技とかねーのかい、十三代目ェ。あんたの封印だろ」
羽衣狐とリクオの戦いが激しさを増す様に、彼らの下僕達が織り成す戦いもまた熱を増している事を秀元はその耳や肌で感じていた。同時に自分が見上げる鵺の生誕が近いという事も
万策尽きた今の竜二には秀元を頼る他に方法はなかった。天才と称され、京都を守る封印も作り上げた十三代目なら何か秘策があるのでは――一縷の望みをかけて尋ねるが、この状況に似合わない軽い口調で秀元は無力を煽って来た
『そんなもん、なーいどすえよv』
「ハ……破られたあとはその時代の人間任せか、そりゃそうか…
まあ死人に任せっきりじゃな、あとはオレたちの仕事だ…」
『結局
だからこのまま
「…わかってるよ」
『ならええんや』
背をこちらに向けている為に竜二の顔を窺い知る事は出来ない。妖を絶対的な悪と見てきた彼、リクオの手助けをどうあってもしなければならない事に苦虫を潰した様な顔をしているのではないだろうか
それでも京都を守る為にリクオに手を貸す事に理解を示してくれた竜二に安堵する秀元だが、自分の知る四百年前の羽衣狐と今の彼女では戦い方が異なる。九度転生し、力を蓄えて来た彼女に果たして力及ぶ事ができるのか彼にも分からない
『でも羽衣狐はボクの知っとる奴より戦い方も増えて、強くなっとる
もう倒せない妖になっとるかもしれん』
「……オレたちだって、ただ手をこまねいてたわけじゃないさ」
『へぇ、そいつは見物やな』
ーでも―――
何かにイラだちはじめてる…ような…
「リク…オ様…」
ーくそ…鬼纏の直後は動けぬ
鬼纏の弱点、それは全力を業に費やす為に解除したすぐ後は下僕は動けないという事か。例え自分の主に何が起きようともすぐ様、駆けつける事が出来ない歯痒さが黒田坊の全身を駆け巡っていた
黒田坊がそうである様に彼との鬼纏の後、続け様に花雪との鬼纏を成した事、そして羽衣狐に傷付けられた腕の止血もままならない事がリクオの体力を戦いとは違う場所で徐々に消耗させていた
「どうした?目に見えて、力を失っているぞ」
間合いに飛び込んでくる体力がリクオにないと見抜いた羽衣狐は好機とばかりに、彼へ太刀を振り上げるもリクオは失っていく体力を振り絞り、それを紙一重で避けてみせる
幾ら体力がないとはいえ、避けなければ次はないと分かっている攻撃をリクオがむざむざ受ける筈がない。だが相手もリクオが太刀を避けると分かっていたらしく、次の一手は決まっていたも同然だった様だ
四尾の槍 "虎退治"!!
「ぐ…」
羽衣狐の四尾目から放たれた槍がリクオの腹部を貫通し、口の中に広がる鉄の味と共に声が漏れる。先程の様に鏡花水月で羽衣狐の一撃を避ける事は間に合わなかったと見える
元々、太刀を囮にするつもりで羽衣狐は太刀を振るったのだろう、尚かつリクオが自分の攻撃を避けると分かっていた。全てを見透かした上で羽衣狐はここまでの流れを、リクオが隙を生み出す様に操作していたのだ
「ねずみ、おとなしくしておれ!」
「く…」
「リクオ様!!」
『リクオ!』
ーこんなにも自分の力が使えない事が歯痒く思うなんて…っ
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