第七十二幕 幾千里と時を越えて
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術を纏った魔魅流の手が羽衣狐の頭に触れるよりも早く、その巨体が後方へ吹き飛ばされる。羽衣狐の尾が先程の秋房と同じく、彼と竜二の式神を破ったのだ
ここまで段取り通りに進んでいたのもあり、ここで魔魅流との連携プレイが崩されるのは大きな痛手。秋房強襲からつけていた段取りも式神を無効にされ、魔魅流もいない今、竜二の策は完全に潰えた
「!! 魔魅流…」
「なんじゃ?お前は。妾をだまそうとしたのかえ?」
その場から退くのが一瞬遅れた間に竜二の目の前には我が子から離れ、わざわざ彼に興味を示した羽衣狐が佇んでいた
それだけならまだ逃げられる可能性はあるものの、その可能性を潰す為に念には念をと彼女は九本の尾によって、竜二の身を狭まっていた
「ウソをつく陰陽師か、今度はお前が楽しませてくれるのか?」
「………何言ってんだ?こっちはお前と闘う気なんて、毛頭ないんだが?」
「なに…?」
「羽衣狐さま、うしろぉぉ―――――!!」
異変に気付いたのは近くにいた狂骨が最初だった、その叫びに背後へ意識を引き戻された羽衣狐から余裕や表情に浮かべていた薄い笑みが瞬時に消え去る
今まで鵺以外に何もなかった筈の中空に存在する杭に花雪や奴良組は見覚えがあった。秀元によって作られ、京妖怪によって破られたらせんの封印ーそれを再び施していたのは他ならぬ竜二が筆頭だった
まさか、この為に死ぬリスクさえも省みずに自ら囮になったというのだろうか。封印の切っ先は鵺へ向けられているー我が子の危機に場を離れた羽衣狐は駆けつける事も出来ない、これこそが術者の狙いだったのだ
ーあれは封印…?!
「中央の地脈に巣食う妖よ、再び京より妖を排除する封印のいしずえとなれ」
「貴…様」
「滅」
衝撃によって羽衣狐の長い漆黒の髪が空で漂う、鵺を封印せんとする竜二の試みを彼女の他、京妖怪の誰も止める事は出来ずに杭は幼子である鵺へと無慈悲に突き立てられた
全ては竜二の手の内だったのだ、魔魅流や自分の式神が羽衣狐に通用しない事も彼は承知の上だった。竜二はそれら全てを読んだ上で妖達に最後の最後まで気取られる事なく、術を完結してみせたのだ
「オレはお前がこちらに気をとられる、一瞬の間がほしかっただけだ…」
「ばっ…」
「ばかな!!」
「何?」
「うそ?」
「お…陰陽師のヤロー、鵺を封印しやがったのか?」
あちこちから驚きと動揺の声が立ち、入り交じる。秀元からあれ程までに祢々切丸に月読、そして破軍なくして羽衣狐に勝つ事は出来ないと言われてきた奴良組にしてみれば、この結果は何とも呆気ない幕切れだった
けれど何故か、封印を施した筈の場所から声が聞こえる。それは聞こえてはならない筈の胎児の泣き声、やがて噴煙が晴れ、その全貌が全ての者達に明らかとなる
「あっぶねぇ」
そこには相克寺でリクオとの再戦に破れ、鵺が誕生するまでの間に眠ると言い残し、どこかへ旅立った筈の土蜘蛛が音もなく参上し、鵺を守るという手柄を立てていた
彼からすれば、生まれる前ー戦う前から鵺が死んでしまってはまた千年待つ事になる、それを防ぐ為の行動だったのだろう。この土壇場で土蜘蛛が来るとは読めなかった竜二の勝ち誇っていた顔が一瞬にして凍り付いた
「…!?土蜘蛛…!?」
「羽衣狐さんよ、子供から目ェはなすなよ…母親だろ」
我が子が土蜘蛛によって、守られたと無事を知った直後、安堵の心は一瞬にして殺意へと変貌し竜二へと向けられる
怒り狂う感情のままに動く羽衣狐の尾は竜二諸共、その背後に残骸として残る城の一部を粉砕し、彼を吊り上げた。煮ても焼いても、どうやってもこの男を許せる様な余分な部分を羽衣狐は残していなかった
「陰…陽師…」
「……チ…」
ここまでか、と自分を取り囲む九本の尾を見ながらも竜二は最後まで笑みを絶やさなかった。例え自分がこのまま、羽衣狐の尾によって突き刺され、八つ裂きにされる運命だと知っても
――それを阻むのは無限の刃、羽衣狐の間合いに飛び込んできたのはがしゃどくろの追跡を逃れてきた若き百鬼の主。今ここに二人の魑魅魍魎の主が邂逅する
「貴様…」
「……逢いたかったぜ、羽衣狐」
幾千里と時を越えて
(あの桜散る夜から幾年)
(この時を待ち続け)
(日々を生きてきた)
ここまで段取り通りに進んでいたのもあり、ここで魔魅流との連携プレイが崩されるのは大きな痛手。秋房強襲からつけていた段取りも式神を無効にされ、魔魅流もいない今、竜二の策は完全に潰えた
「!! 魔魅流…」
「なんじゃ?お前は。妾をだまそうとしたのかえ?」
その場から退くのが一瞬遅れた間に竜二の目の前には我が子から離れ、わざわざ彼に興味を示した羽衣狐が佇んでいた
それだけならまだ逃げられる可能性はあるものの、その可能性を潰す為に念には念をと彼女は九本の尾によって、竜二の身を狭まっていた
「ウソをつく陰陽師か、今度はお前が楽しませてくれるのか?」
「………何言ってんだ?こっちはお前と闘う気なんて、毛頭ないんだが?」
「なに…?」
「羽衣狐さま、うしろぉぉ―――――!!」
異変に気付いたのは近くにいた狂骨が最初だった、その叫びに背後へ意識を引き戻された羽衣狐から余裕や表情に浮かべていた薄い笑みが瞬時に消え去る
今まで鵺以外に何もなかった筈の中空に存在する杭に花雪や奴良組は見覚えがあった。秀元によって作られ、京妖怪によって破られたらせんの封印ーそれを再び施していたのは他ならぬ竜二が筆頭だった
まさか、この為に死ぬリスクさえも省みずに自ら囮になったというのだろうか。封印の切っ先は鵺へ向けられているー我が子の危機に場を離れた羽衣狐は駆けつける事も出来ない、これこそが術者の狙いだったのだ
ーあれは封印…?!
「中央の地脈に巣食う妖よ、再び京より妖を排除する封印のいしずえとなれ」
「貴…様」
「滅」
衝撃によって羽衣狐の長い漆黒の髪が空で漂う、鵺を封印せんとする竜二の試みを彼女の他、京妖怪の誰も止める事は出来ずに杭は幼子である鵺へと無慈悲に突き立てられた
全ては竜二の手の内だったのだ、魔魅流や自分の式神が羽衣狐に通用しない事も彼は承知の上だった。竜二はそれら全てを読んだ上で妖達に最後の最後まで気取られる事なく、術を完結してみせたのだ
「オレはお前がこちらに気をとられる、一瞬の間がほしかっただけだ…」
「ばっ…」
「ばかな!!」
「何?」
「うそ?」
「お…陰陽師のヤロー、鵺を封印しやがったのか?」
あちこちから驚きと動揺の声が立ち、入り交じる。秀元からあれ程までに祢々切丸に月読、そして破軍なくして羽衣狐に勝つ事は出来ないと言われてきた奴良組にしてみれば、この結果は何とも呆気ない幕切れだった
けれど何故か、封印を施した筈の場所から声が聞こえる。それは聞こえてはならない筈の胎児の泣き声、やがて噴煙が晴れ、その全貌が全ての者達に明らかとなる
「あっぶねぇ」
そこには相克寺でリクオとの再戦に破れ、鵺が誕生するまでの間に眠ると言い残し、どこかへ旅立った筈の土蜘蛛が音もなく参上し、鵺を守るという手柄を立てていた
彼からすれば、生まれる前ー戦う前から鵺が死んでしまってはまた千年待つ事になる、それを防ぐ為の行動だったのだろう。この土壇場で土蜘蛛が来るとは読めなかった竜二の勝ち誇っていた顔が一瞬にして凍り付いた
「…!?土蜘蛛…!?」
「羽衣狐さんよ、子供から目ェはなすなよ…母親だろ」
我が子が土蜘蛛によって、守られたと無事を知った直後、安堵の心は一瞬にして殺意へと変貌し竜二へと向けられる
怒り狂う感情のままに動く羽衣狐の尾は竜二諸共、その背後に残骸として残る城の一部を粉砕し、彼を吊り上げた。煮ても焼いても、どうやってもこの男を許せる様な余分な部分を羽衣狐は残していなかった
「陰…陽師…」
「……チ…」
ここまでか、と自分を取り囲む九本の尾を見ながらも竜二は最後まで笑みを絶やさなかった。例え自分がこのまま、羽衣狐の尾によって突き刺され、八つ裂きにされる運命だと知っても
――それを阻むのは無限の刃、羽衣狐の間合いに飛び込んできたのはがしゃどくろの追跡を逃れてきた若き百鬼の主。今ここに二人の魑魅魍魎の主が邂逅する
「貴様…」
「……逢いたかったぜ、羽衣狐」
幾千里と時を越えて
(あの桜散る夜から幾年)
(この時を待ち続け)
(日々を生きてきた)