第六十六幕 今ここに逢阪の関、設けよ
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術くらべの勝者決定に色めき立つ人々の中で道満は一人、先程の長持を目の当たりにした晴明と立場を逆にしたかの様に顔を青ざめる。だがそれは恥をかいた事へのものではない
かと言えば、宮中で嘘をついた罪に怯えている訳でもない。そう、この中で一人だけ道満は気付いていたのだ。晴明が死体を使い、何をしようとしていたのかを
「晴明…まさかおぬし…"反魂の術"に手を出したのか…」
「…なんのことやら、それではこれにて」
明言を避けた晴明は死体と言われ、連れて来られた子供を抱き上げ、未だ収まりがつかない宮中を颯爽と後にする。宮中の人間から見れば、彼はこの後、子供を親元へ返しにいくと見えただろう
外に置かれた牛車の傍にはこの話の語り手である鬼童丸が若かりし頃の姿で鎮座している、その表情からは無事に晴明が場を乗り切る事が出来た事に対する安堵が見え隠れしていた
「危のうございましたな…」
「ふん…いつもやっかいなジジィだ」
今度からは術の為に死体を探すにも周囲に気を配らなければいけない、でなければ今回の様に窮地に立たせる可能性が捨て切れなくなる。だが誰も思わないだろう、人々から信頼を寄せられる晴明が神の領域に手を出した等と
そして、彼がこの都に住まう妖達の頂点に立つ者などと気付く訳がない。主を乗せた牛車は魑魅魍魎達を率いて、月へと昇っていく。朝が人間達の領分だとするなら、今の時刻は彼らの領分だ
「見ろ鬼童丸、美しい都だとは思わないか。妖が空をかけ、人々は自然と共に生きる。光のうつろいを感じ――日が落ちれば闇を畏れる
"陰"と"陽"の完璧に交わったこの美しい都は…私が完成させた。…この陰陽の都を永遠の秩序にしたい、そのために私は永遠を生きなければならないのだ」
突如として晴明が腕に抱いていた子供に変化が現れる。その肉は土に、骨は骨として――元の形、死体として魂は闇に再び還っていった
そう、今まで子供が生きていたのは不完全な術による一時の復活に過ぎない。時間が経てば、こうして死体に戻ってしまう。これでは晴明の目指す完全なる術には程遠い
「なのに…なぜ人は"必ず死に"、"再び闇に還らねば"ならないのか」
百鬼夜行が連なり、見事な満月が臨まれる夜空はやがて暗い雨雲に包まれ、雨が降り始める。晴明を乗せた牛車は都の外れにある墓場に降り、術が解けた子供の骨も魂同様にあるべき場所へと帰る
生きている限り、いつか人は死に、土へと帰る――それが世の摂理というもの。だがこの男はその摂理に抗おうと執念を燃やす、その為に神の領域に踏み込む事を決意したのだ
「今の反魂の術は完璧ではない、復活しても再びこうなってしまう。なぜ私は千年を生きることが出来ないのだ…世の理にあらがう術があるはずだ
のう鬼童丸…私は必ず復活するぞ、必ず我が身を完全なる反魂の術で転生してみせる!!」
陰陽の都を永遠の秩序にする為、自分も永遠を生きる――その為には完全な反魂の術が必要だが、今のままでは不完全。これでは転生する事など夢のまた夢だ
ならどうするか、そう思考を巡らせる頭に耳から入った情報が光の様に差し込む。じゃばじゃばと着物の裾が汚れる事も厭わず、子供の様にはしゃぐ女が晴明の気配に姿を現す
「おぉ…晴明ではないかv 妾に会いに来てくれたのかえ?いとしき清明ェ、おぉ…近うよれ…」
「母上」
彼女こそが安倍晴明の母。かつて安倍保名という男と葛の葉として恋に落ち、信太の森に帰った白狐――羽衣狐である
ーそのとき、晴明様はふいに悟られたのだ…
「晴明や」
ー復活の術 "反魂の術"の完全なる方法を―――!!
「おお、そうだ…!"還る"なら"母"…羽衣狐、あなただ!」
ーその一言は千年に及ぶ京妖怪 の"宿願"の始まりだった―――
「母上…もう一度、私を産んではくれまいか―――」
今ここに逢阪の関、設けよ
(やっと会えた)
(再会を喜ぶ暇さえなく)
かと言えば、宮中で嘘をついた罪に怯えている訳でもない。そう、この中で一人だけ道満は気付いていたのだ。晴明が死体を使い、何をしようとしていたのかを
「晴明…まさかおぬし…"反魂の術"に手を出したのか…」
「…なんのことやら、それではこれにて」
明言を避けた晴明は死体と言われ、連れて来られた子供を抱き上げ、未だ収まりがつかない宮中を颯爽と後にする。宮中の人間から見れば、彼はこの後、子供を親元へ返しにいくと見えただろう
外に置かれた牛車の傍にはこの話の語り手である鬼童丸が若かりし頃の姿で鎮座している、その表情からは無事に晴明が場を乗り切る事が出来た事に対する安堵が見え隠れしていた
「危のうございましたな…」
「ふん…いつもやっかいなジジィだ」
今度からは術の為に死体を探すにも周囲に気を配らなければいけない、でなければ今回の様に窮地に立たせる可能性が捨て切れなくなる。だが誰も思わないだろう、人々から信頼を寄せられる晴明が神の領域に手を出した等と
そして、彼がこの都に住まう妖達の頂点に立つ者などと気付く訳がない。主を乗せた牛車は魑魅魍魎達を率いて、月へと昇っていく。朝が人間達の領分だとするなら、今の時刻は彼らの領分だ
「見ろ鬼童丸、美しい都だとは思わないか。妖が空をかけ、人々は自然と共に生きる。光のうつろいを感じ――日が落ちれば闇を畏れる
"陰"と"陽"の完璧に交わったこの美しい都は…私が完成させた。…この陰陽の都を永遠の秩序にしたい、そのために私は永遠を生きなければならないのだ」
突如として晴明が腕に抱いていた子供に変化が現れる。その肉は土に、骨は骨として――元の形、死体として魂は闇に再び還っていった
そう、今まで子供が生きていたのは不完全な術による一時の復活に過ぎない。時間が経てば、こうして死体に戻ってしまう。これでは晴明の目指す完全なる術には程遠い
「なのに…なぜ人は"必ず死に"、"再び闇に還らねば"ならないのか」
百鬼夜行が連なり、見事な満月が臨まれる夜空はやがて暗い雨雲に包まれ、雨が降り始める。晴明を乗せた牛車は都の外れにある墓場に降り、術が解けた子供の骨も魂同様にあるべき場所へと帰る
生きている限り、いつか人は死に、土へと帰る――それが世の摂理というもの。だがこの男はその摂理に抗おうと執念を燃やす、その為に神の領域に踏み込む事を決意したのだ
「今の反魂の術は完璧ではない、復活しても再びこうなってしまう。なぜ私は千年を生きることが出来ないのだ…世の理にあらがう術があるはずだ
のう鬼童丸…私は必ず復活するぞ、必ず我が身を完全なる反魂の術で転生してみせる!!」
陰陽の都を永遠の秩序にする為、自分も永遠を生きる――その為には完全な反魂の術が必要だが、今のままでは不完全。これでは転生する事など夢のまた夢だ
ならどうするか、そう思考を巡らせる頭に耳から入った情報が光の様に差し込む。じゃばじゃばと着物の裾が汚れる事も厭わず、子供の様にはしゃぐ女が晴明の気配に姿を現す
「おぉ…晴明ではないかv 妾に会いに来てくれたのかえ?いとしき清明ェ、おぉ…近うよれ…」
「母上」
彼女こそが安倍晴明の母。かつて安倍保名という男と葛の葉として恋に落ち、信太の森に帰った白狐――羽衣狐である
ーそのとき、晴明様はふいに悟られたのだ…
「晴明や」
ー復活の術 "反魂の術"の完全なる方法を―――!!
「おお、そうだ…!"還る"なら"母"…羽衣狐、あなただ!」
ーその一言は千年に及ぶ
「母上…もう一度、私を産んではくれまいか―――」
今ここに逢阪の関、設けよ
(やっと会えた)
(再会を喜ぶ暇さえなく)