第六十五幕 その娘の怒りに触れるべからず
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ー混乱している今なら…っ
城の外からやって来た侵入者達の騒ぎによって牢の見張りはいつになく、静けさが強まっている。花雪には侵入者達の正体がこの地下深い牢にいても分かる、遠くに感じていた彼の気配が教えてくれている
だからこそ、自分もこんな所で燻っている訳にはいかない。ここまでリクオが来るまで待つつもりはないと動き出した花雪の手には取り上げられていた筈の煙管入れが
かつて、亡き母が護身用に使っていたとされる弦が花雪の意志に応じて蛍耀石に纏い、小太刀へと変化を遂げる。これを実行に移す事が出来る切っ掛けとなったカラス天狗には暫く偉そうな口は叩けそうにない
『花雪様、ありましたぞ
しかし逃げるなら今の内の方がいいのでは?鍵も私めが探して…』
『鍵は多分、幹部が持ってる筈だから簡単にはいかない
カラス天狗はぬらおじい様の所に。大丈夫、おじい様の起こしてくれた混乱を無駄にはしないから』
「リクオ、今戻るからね…」
バキン、と鉄が折れた音を派手に鳴らし、花雪を捕らえていた牢の錠がその使命を終える。まさか本当に小太刀の形をしているとはいえ、元の弦が鉄に勝るとは思わなかった様で暫く呆然としてしまった
もしかしたら、母はここまで見越して天弦を遺してくれたのかもしれない。さて自由になった自分がどこに行くか、花雪はちゃんと分かっていた。道先はリクオの畏が教えてくれる、後は走るだけだ
「月読が逃げ出したぞ!」
「早く捕まえろ!羽衣狐様のとっておきの肝を逃がすな!」
「待て!牢に戻れ!」
「!邪魔は、しないでくださいっ」
「ぐあっ」
だがそう簡単に花雪を通してくれないのが、彼女が逃げ出した事に気付いた京妖怪の者達。侵入者の始末や羽衣狐の出産にだけ、集中していればいいのにと思うもそうはいかない
月読は出産に望む羽衣狐が最後まで残していたとっておきの肝なのだ。それをみすみす取り逃がしたとあっては、彼らもただでは済まないと必死になって、花雪を追いかける
現役な京妖怪と殆ど戦いの場で活躍した事がない花雪の足とでは直ぐに追いつかれ、その肩を掴まれる。走り出した足を止められる事を好ましく思わないと反射的に思った時には掴んできた腕を一閃していた
「い、いいんですか?あなた達の主が望んでいる命、ここで私が断つ事だってできるんですよ」
「ま、待て、落ち着け…!」
「そのままでいてください、ね。邪魔をしたら、斬りますから!」
鉄をも切り裂く天弦の刃は浅くない傷を妖の腕に刻み付けた、自分の首を切れば、先ず間違いなく即死だろう。勿論花雪に自害という選択はない、これはハッタリだ
そうとは気付かずに妖達は花雪に自害をされまいと引き下がる、どうやら彼女の決死な表情と口ぶりではやり兼ねないと判断した様だ。妖達が追って来ないのを確認し、花雪は階段を駆け上がる
ー動きが読まれた……?
「みえるみえる、先が見えるぞ。おう?
気をつけろよ…鬼一口、彼奴より"一刀両断の意志"を確認!はやてのごとく、来よるぞ!!」
「!!」
「いつでもどうぞ~~」
花雪が地下から脱出を試みる頃、リクオは本丸に続く門前で門番であるサトリと鬼一口との戦いを続けていた。その戦いは困難を極めている。二体の戦闘力はそこまで高くない、その能力に掌の上で遊ばれているのだ
サトリのバックアップがある限り、こちらの攻撃は鬼一口には通じない。心を読む能力を持つサトリは攻撃に転じる、僅かの合間に浮かんだ頭の中を読み、次の行動に対策を打ってしまう
ーやはりオレの心を読んでやがる…攻撃する前に動かれた…!!
「フフフ………見える…見えるぞ~~~」
「………」
ーだったら―――…
幾ら真正面から攻撃を仕掛けても、こうも先読みされては戦いに決着はつかないままだ。ならば、鬼憑で自分の姿を隠しつつ攻撃を仕掛けるしか手段はない。幻影を残し、リクオは自分に対する認識を鈍らせる
こうすれば、幾らサトリとて認識出来ない相手の心を捕捉出来ない筈だ。彼らの目的はリクオを城内へ入れさせぬ様にする為ともう一つある様に思えて仕方ない、それは羽衣狐が出産するまでの時間稼ぎ
「"鏡花水月"、勝負所じゃな。まどわされるな、鬼一口!アレは幻――…
こやつ、畏でそこにいるように見せかけているだけ!!」
「ほう」
「感じた…!! "うしろにまわり、稲妻のごとく刺す"。橋桁じゃ!!」
「!!」
ーこれも読まれた!?
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