第六十二幕 一尾に戻りて童子丸を思ふ
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やはり、そう考えるのが打倒かとリクオは首無の言葉を黙って受けとる。花雪――月読の血肉は不老不死に繋がる秘薬と言われて来た、生き肝信仰に厚い羽衣狐がそんな彼女に目をつけない筈がない
先ず間違いなく、花雪は羽衣狐が出産の為に潜伏する弐條城にいると考えて間違いないだろう。だとすると今まで以上に急がなくてはならない、出産の為に花雪の命を奪われる前にこちらに取り返す――それがリクオの最重要課題
「!!」
「ヒッ」
「リクオ様、土蜘蛛がッ」
「…ひざをつかされたのは、"鵺"と闘って以来千年振りだぁ」
その場にいた妖達 誰もが瞳を見張った、その稼働に。地鳴の様な躍動を伴い、降り止んでいた筈の血の雨が再び地面を赤く濡らしていく
――嘘の様な話だが、リクオとイタクの鬼纏によって真っ二つにされた筈の土蜘蛛が動き出した事による変化だった。今までは死んでいたのではなく、仮死状態になっていただけなのだろう
「うそだろ…」
「まだ…死んでねぇのかよ」
「"鵺"…その妖が京の奴らの言ってる"宿願"ってやつか」
「そうだ。ワシァ、その"鵺"とまた闘りたくて闘りたくてしょーがねぇのよ…
ただ"鵺"ってのは得体の知れねぇものの、ふたつ名でな…」
その頃の弐條城、人気の失せた牢屋に取り残された花雪。非力な彼女自身に戦う力はないに等しい、月鳴がなければここから逃げる事も出来ない事を知っている京妖怪達は見張りさえも必要ないと判断したのだろう
悔しいと思わない訳ではない、けれど見くびられている事に口を出すのはそれこそ負け犬の遠吠えというもの。それに誰もいない事で考え事に集中出来るのは最大で唯一の利点だ
「……」
ー今まで起きたばかりだったから、混乱してるだけかと思った…
でもこうして考えてみても、微かな記憶を引っ張り出しても違う
「…お父さんとお母さんを殺したのは、羽衣狐じゃない…」
ー私があの時、見たのは二人の遺体と真っ赤な炎と…古びた刀
それを持っていた人をはっきりと思い出したわけじゃない、でもあの人…羽衣狐ではなかった
幼い自分が見た光景にはあの、一点の曇りない黒は存在していなかった。ただあったのは目を焼き尽くそうとする鮮明で、攻撃的な赤色とそこに倒れた二つの死体、言うまでもなく花雪の両親の成れの果てだ
もし、両親を殺したのが羽衣狐ではないとすると一体、誰が二人を殺したというのか。心臓が嫌な音を立てて軋む、もしかするとまだ羽衣狐以上に最悪な妖がこの一件で手を引いている…そんな感覚
ー私はもしかして、何かとんでもない思い違いをしているんじゃ…?
そして、自分は羽衣狐すらも気付かない黒幕を見たのではないか?それを忘れたのが痛恨の極みだ。自分の問題だけなら、自分が痛い目を見るだけで済む。だけどもしこれがリクオも巻き込む事になったなら、そうは行かない
どんどんと気の持ち様が下がっていく花雪の視界の端に鮮やかな色が咲いた、岩盤で作られた殺風景な牢に久しく見た彩色は――桜の花びら
季節外れのそれが一体、どこから入り込んだのかと探す花雪の瞳が見開かれた。見開かれた瞳に映り込んだのは階段を降りていく男の姿、その先には自分と羽衣狐が邂逅し、彼女が出産の体勢を取る池がある筈
「ぬらおじい様…?どうして、ここに…。!」
「ひ、姫様!お姿が見えたのでまさかと思いましたが、なぜこのような所に?!」
「カラス天狗…っ」
ぬらりひょんの側近であるカラス天狗が目の前にいる、という事は先程見た後ろ姿は本物なのだろう。思えば、羽衣狐との因縁はぬらりひょんから始まった、それに対して行動せずにはいられなかったと思えば、彼がここに来た理由も頷ける
驚いたもののこうやって順を追って考えていけば、冷静さを取り戻せる。牢に誰もいない事と合わせて、自分にも運が向いて来た様だ。カラス天狗と接触出来た事でやっと行動が起こせる
「ヤツは人としてはこう呼ばれた…」
ー千年前の京の闇を支配した男
安倍晴明
一尾に戻りて童子丸を思ふ
(かつて、陰陽の都に存在せし者)
(千年の時を越え、)
(今度は人へ弓弾く)
先ず間違いなく、花雪は羽衣狐が出産の為に潜伏する弐條城にいると考えて間違いないだろう。だとすると今まで以上に急がなくてはならない、出産の為に花雪の命を奪われる前にこちらに取り返す――それがリクオの最重要課題
「!!」
「ヒッ」
「リクオ様、土蜘蛛がッ」
「…ひざをつかされたのは、"鵺"と闘って以来千年振りだぁ」
その場にいた妖達 誰もが瞳を見張った、その稼働に。地鳴の様な躍動を伴い、降り止んでいた筈の血の雨が再び地面を赤く濡らしていく
――嘘の様な話だが、リクオとイタクの鬼纏によって真っ二つにされた筈の土蜘蛛が動き出した事による変化だった。今までは死んでいたのではなく、仮死状態になっていただけなのだろう
「うそだろ…」
「まだ…死んでねぇのかよ」
「"鵺"…その妖が京の奴らの言ってる"宿願"ってやつか」
「そうだ。ワシァ、その"鵺"とまた闘りたくて闘りたくてしょーがねぇのよ…
ただ"鵺"ってのは得体の知れねぇものの、ふたつ名でな…」
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その頃の弐條城、人気の失せた牢屋に取り残された花雪。非力な彼女自身に戦う力はないに等しい、月鳴がなければここから逃げる事も出来ない事を知っている京妖怪達は見張りさえも必要ないと判断したのだろう
悔しいと思わない訳ではない、けれど見くびられている事に口を出すのはそれこそ負け犬の遠吠えというもの。それに誰もいない事で考え事に集中出来るのは最大で唯一の利点だ
「……」
ー今まで起きたばかりだったから、混乱してるだけかと思った…
でもこうして考えてみても、微かな記憶を引っ張り出しても違う
「…お父さんとお母さんを殺したのは、羽衣狐じゃない…」
ー私があの時、見たのは二人の遺体と真っ赤な炎と…古びた刀
それを持っていた人をはっきりと思い出したわけじゃない、でもあの人…羽衣狐ではなかった
幼い自分が見た光景にはあの、一点の曇りない黒は存在していなかった。ただあったのは目を焼き尽くそうとする鮮明で、攻撃的な赤色とそこに倒れた二つの死体、言うまでもなく花雪の両親の成れの果てだ
もし、両親を殺したのが羽衣狐ではないとすると一体、誰が二人を殺したというのか。心臓が嫌な音を立てて軋む、もしかするとまだ羽衣狐以上に最悪な妖がこの一件で手を引いている…そんな感覚
ー私はもしかして、何かとんでもない思い違いをしているんじゃ…?
そして、自分は羽衣狐すらも気付かない黒幕を見たのではないか?それを忘れたのが痛恨の極みだ。自分の問題だけなら、自分が痛い目を見るだけで済む。だけどもしこれがリクオも巻き込む事になったなら、そうは行かない
どんどんと気の持ち様が下がっていく花雪の視界の端に鮮やかな色が咲いた、岩盤で作られた殺風景な牢に久しく見た彩色は――桜の花びら
季節外れのそれが一体、どこから入り込んだのかと探す花雪の瞳が見開かれた。見開かれた瞳に映り込んだのは階段を降りていく男の姿、その先には自分と羽衣狐が邂逅し、彼女が出産の体勢を取る池がある筈
「ぬらおじい様…?どうして、ここに…。!」
「ひ、姫様!お姿が見えたのでまさかと思いましたが、なぜこのような所に?!」
「カラス天狗…っ」
ぬらりひょんの側近であるカラス天狗が目の前にいる、という事は先程見た後ろ姿は本物なのだろう。思えば、羽衣狐との因縁はぬらりひょんから始まった、それに対して行動せずにはいられなかったと思えば、彼がここに来た理由も頷ける
驚いたもののこうやって順を追って考えていけば、冷静さを取り戻せる。牢に誰もいない事と合わせて、自分にも運が向いて来た様だ。カラス天狗と接触出来た事でやっと行動が起こせる
「ヤツは人としてはこう呼ばれた…」
ー千年前の京の闇を支配した男
安倍晴明
一尾に戻りて童子丸を思ふ
(かつて、陰陽の都に存在せし者)
(千年の時を越え、)
(今度は人へ弓弾く)