第六十二幕 一尾に戻りて童子丸を思ふ
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「リクオ様!!」
「!?首無たち」
「おー、おめぇら。遅かったじゃねぇか」
血の雨が降りしきる相克寺、この地で発生した因縁の戦いを終えたリクオの元へと伏目稲荷神社以来となる百鬼夜行が駆けつけた。異質な空間と今まで存在していた大きな畏が突然、消えた事が彼らにリクオの居場所を知らせたのだろう
久方ぶりに対面する百鬼の姿にリクオは笑みを浮かべ、その到来を歓迎する。そんな彼が倒したと思われる、この血の雨の正体である土蜘蛛は真っ二つとなって、もの言わぬ物体へと成り果てていた
「リクオ様が…倒されたのですか…?」
「……」
問いかけに応えない事が何よりの返答だった。京都に散らばっている間に何もしなかった訳ではない、だが京妖怪達を相手にしている間にリクオは因縁の敵を相手にしていた。最も百鬼夜行の力が必要だったという時に自分は、
自我を見失い、殺戮を繰り返す頃に戻り、毛倡妓達の手を煩わせただけに留まらず、リクオが最も力を必要としている時にも立ち会えなかった。その傷とて自分達がいれば、少しは数を増やさずに済んだかもしれない
初めて土蜘蛛と邂逅した時と同じだ、守ろうと決めた人の為に何も出来ずに怪我を負わせてしまった。その経験を何も生かせずに全てが終わった後に対面するなんて――これ以上にない恥だった
「申し訳ございません。側近として力になれず、あわせる顔がございま…」
皆を言わせまいと、首無の眼前にリクオの手がその言葉と意識を反らす。彼の心の内にある後悔と幹部故の重責、それから来る謝罪の言葉がリクオの手という壁によって遮られる
首無がリクオに謝ろうとしたのと同じ様に、リクオもまた首無だけでなく毛倡妓達――百鬼夜行に謝らなければならない事がある。それを言わずに仲間に先を越される事、謝られると面目がなくなってしまう
「オレの力が足りなかったばかりにお前達には苦労をかけたな」
誰が思っただろうか、この場で自分達の苦労を労われるなんて。寧ろ労われるべきは百鬼が殆どいないにも関わらず、土蜘蛛を撃破したリクオや氷麗達の筈。それを素通りしての言葉には首無、そして毛倡妓さえも呆気に取られた
何でもかんでも全てを一人でこなそうとするのではなく、自分を信じてくれる仲間を頼る事で還ってくる力の大きさ。その中には勿論、首無達も含まれていると鞍馬山の修行でリクオは気付かされたのだ
「首無、河童、黒田坊、毛倡妓。これからも…よろしく頼む」
「……リクオ様…」
仲間が自分の事を信じてくれる様に、自分もまた――それに気付くのが遅くなったばかりに首無達には苦労をかけ、危険な目に合わせてしまった
先ずは今までの自分の過ちを受け入れ、そこからまた始めようと決めていた、自分の百鬼と再会した時に。新しく百鬼を始めると宣言するリクオの姿に在りし日の二代目が重なり、やはりあの人の息子なのだと実感させられずにはいられない
その言葉を受けるまでは、存在していた後悔や謝罪の言葉が首無の胸の内から失せていく。新たな出発は一筋の光明の様に差し込み、百鬼の微笑を明るく照らし出した
土蜘蛛討伐に一役買い、鞍馬山の修行にも付き添った鴆もその様子を満足そうに見届ける。そしてこの人も忘れてはいけない大事な百鬼夜行の一人、遠目で見つめてくる彼女にもリクオは声をかける事を忘れない
「つらら、お前もだぜ」
「は…はい。あ、いえ。……知りません!」
氷麗の声が驚きによって声が不自然に上擦る。そういうつもりではなかったにしろ、土蜘蛛を前に鬼纏を断った手前、おめおめと首無達の会話に加わる事は出来ずにいた自分にまでといった、まさかの心境だろうか
けれどハッと我に帰り、思い出す。リクオは鬼纏が自分と二人だけで成せる業と勘違いさせてくれた、どうにも許し難く氷麗はつっけんどんとリクオを突き放した
自分を忘れずにかけられた言葉が嬉しかったのは事実だが、そういう事があった為に許す気になるまでこの態度を貫く事だろう
「リクオ様、花雪様は…」
「ここにはいないらしい、どうやら他の場所に連れて行かれたらしいが…」
「弐條城、ですか」
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