第六十一幕 深蘇芳に結ばれし縁
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ーリクオの野郎…バカか
何、無防備に背中を見せてやがる。畏をとくなってあれほど…
鬼纏という業に力を貸す事を了承したイタクの眼前には、リクオの背中が無防備に開け広がっている。雪と翼だろうか、それらを象った真新しい刺青以外に何一つ成長していないと眉を寄せる
遠野を出る前から言っていた事をこの男は何度忘れる気なのか、先程は自分の首を含めた背後を取った事に見直したというのにこれでは台無しだ
だが――いや待て、とイタクは自分の思考を制する。リクオは畏を解いてなどいない、そしてこう思う自分の畏が彼と一体化している事に気付いた
―――違う
こいつ、オレを背負ってやがるのか――――
「いくぜ、土蜘蛛」
背負われていれば、自分を背負う相手の背中だけしか見えないのは当然だ。潜入感を捨てて見れば、無防備に晒していたとされる背中はイタクに預けているというのが正しい
遠野の地で短くも師弟関係を結んだ二人の信頼関係は鴆や氷麗との強い信頼関係にも値すると、鬼纏によって証明された今、イタクの畏は祢々切丸に大きな変化を齎した。風上に立つ全てを切り裂く為の刃――鎌の形へと
「……リクオが…!!」
「イタクの畏を背負った!?」
「あれが…鬼纏ってやつか――――!?」
「フ」
今までつまらなさそうに事の一部始終を見ていた土蜘蛛に表情が戻る、リクオの持つそれに満足そうに笑うのだ。随分待たせてくれた、我慢させられた分、満足させてくれるものに仕上がっているか楽しみな所だと
興奮し過ぎない様に体中を帯びる熱を吐き出しながら、腰を深く、更に深く落とし込む。尚、全てを吐き出し切れぬ畏によって掌握された場の空気が語る、次の一瞬で決着が着くと
「必ず斬る!」
「こっちもイクゼ、
発破と化した特攻で後方に爆音を残し、巨体が自身と対峙するリクオへ飛びかかる。その攻撃は大砲の弾丸という例えでは小さすぎた。それを例えるなら、あらゆる全ての光を遮るかの様な巨大な城壁が打倒だろう
どこまでも巨大で、今までまともに傷一つついた事のない壁が一歩を十歩の速度で迫り来る。それを待ち受けるリクオの背中へイタクは一言も挟まず、自分が半人前と思っていた頃のリクオを思い返していた
ーイタクの畏、オレに纏わしちゃくれねぇか
『畏をとくなって言ったろうが!!』
ぬらりひょんという妖、自分を理解する事に成功したリクオが遠野に現れた京妖怪 鬼童丸を退けた後日譚。あれ程までに畏をとくなと言い続けたにも限らず、油断によって彼は畏を解いてしまい、危うく反撃を喰らう所だった
もし、冷麗達が駆けつけなかったらどうなっていたか…その事実を招いたリクオの未熟さにイタクは彼の襟首を掴み、怒号を浴びせた。畏を解くという事がどんなに危険なのかを知っているからこそ、彼は本気で憤っていた
ここだけではない、他の戦場でも、それが例え自分の縄張りでも畏を解く事は遠野の戦士である彼らには有り得ない話なのだ。現に今この時もイタク達は決して畏を解かず、リクオを冷静に見下ろしている
『イタクもみんなも…すげぇな…
お前らが…味方になってくれたらいいんだけどな』
『……………遠野は傭兵集団だぜ。遠野には「弱い大将」についちまって痛い目を見た奴が何人もいる
だから、オレたちはお前にはつかねぇよ。お前はどんな妖怪でも』
ー強くならなくちゃ、認めねぇ――――
『イタク、オレの刃になれ』
京都の出入りに着いて来たのも、まだ済んだとは思っていないリクオの修行を続ける為。心の奥底ではまだ自分達に届かない未熟者と扱っていた、けれどそんなリクオが自分の背後を取る技量を身に付けた
認めざるを得なかった、その成長を、奴良リクオは自分の力を貸すに足る「強い大将」なのだと。仲間の事を忘れた訳ではないが、この出入りに参加してよかったとイタクは微笑む。おかげで彼の著しい成長を目に出来たのだから
一度は氷麗と鴆が進む事を躊躇う威力を持った土蜘蛛の張り手がそこまで迫っている。だが鬼纏を発動しているからといって、リクオ本人の鬼憑が使えなくなるという訳ではない