第六十幕 流寓の民は篝火に集う
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「つらら!! やるぞ!! お前の畏を魅せてくれ!!」
「おことわりします。」
……拒んだりしない筈だった氷麗の拒否によって、場の空気は一気に氷結。流石雪女といった所か
「おい…つらら」
「はっ、ごめんなさい」
「そんなに体力つかうのか…?」
「おまえら」
そういうつもりではなかったのだろうが、つい口からぽろっと出た言葉に驚いたのは氷麗自身だった様で。リクオの要請を拒絶した事で居たたまれなくなり、氷麗は一時的に百鬼を離れていってしまった
今は無理、と叫ぶ氷麗の姿に鬼纏という業の全貌を目の当たりにした淡島達にイタクの忠告が飛ぶ。鬼纏が来るのを待っていたのか、今の今まで黙っていた土蜘蛛がいつの間にか、拳が届く距離まで近付いていたのだ
ーレラ・マキリ!!
「ぼーっとしてんじゃねぇ、で?どーすんだ?」
「………イタクは、やっぱすげぇなぁ
お前が欲しい、イタク」
「…あ?」
ぶっきらぼうな口調ながら、その体はリクオを守る様に土蜘蛛の前に立ちはだかる。先程は一人では勝てない、と言われたイタクの鎌が氷麗との鬼纏から久しく土蜘蛛の体に傷を負わせた
遠野の妖達は誰もが強く、傭兵集団である事を誇りに思う者達ばかり。惜しくも力を振るえなかった冷麗や土彦、雨造だって元々は一人で一個団分の戦力はあるだろう、今回は敵が悪く実力が発揮されなかっただけで
仲間が本気を発揮出来ない中、こうして土蜘蛛に手傷を負わせる事が出来たイタクの能力の高さを改めて目の辺りにした呟きに続き、リクオはその凛然たる姿に抱いた胸中を明らかにする
「てめぇの畏、オレに
「リクオ……どんな業か知らねぇが…オレは誰の風下にも立たねぇよ
第一、おめぇに畏を託すなんて危なっかしくてできるかよ!!」
まだまだイタクにとって、リクオは鬼憑・鬼發を身に付けたばかりの半人前の域から出ない。そんな彼に自分の畏を託すなんて事は文字通り、死活問題。冷麗や土彦の二の舞にもなりかねない
リクオに自身の畏を纏わせずとも、自分一人の手で遠野の仲間の仇を見事に討ち果たしてみせるとリクオからの要望を突き返し、再び土蜘蛛に向かおうとするイタクの足は二度止まる
「!! …リクオ、何のつもりだ」
「オレもちったぁ、やるようになったろ?」
こちらの話に耳を貸さずに飛び出そうとするイタクの背後に回り込み、首を取るリクオの行動。それは彼が遠野の里から飛び出そうとするリクオに仕掛けた、奇襲の再現そのもの
あの時、危なっかしいと彼はリクオと花雪を評した。自分を半人前と思っていたであろう教育係から初めて一本取ったリクオの声というのは、これで少しはイタクを見返せたのではとどこか弾んでいる
「オレの、刃になれ。イタク」
まだ、鬼纏とかいう得体の知れない業の厄介になる気になれない。例え自分が教育を施した生徒から一本取られたとしても
二人を押し潰さんと広げられた拳が咆哮を上げ、振り下ろされる。イタクの首を縦に動かすのに必要なものをリクオは知っている、たった一言でいい。彼はそれを叶える為に来てくれたのだから
「オレが、そう望んでいる」
風鳴りを含んだ鋭い畏がリクオの背中で唸りを伴って吹き荒れる。イタクが自分の畏を解き放ち、彼に託す事をその一言の内で決心したのだ
望むなら遠野は力になる、最初にそう言ったから。元々、この出入りはリクオのものでその力になる為にイタク達は遠野から出て来た。それに反するのは彼らの流儀と誇りを裏切る事になる
「……フン。しくじったら殺す」
イタクの武器がそうである様に、目の前に立ちはだかる全てを薙ぎ払う性質を含んだ彼の畏は祢々切丸の造形すらも、その形に歪めた
――太刀であった祢々切丸の刃先から伸びた、新たな切っ先。それはカマイタチの妖であるイタクをその背中に背負う証として、鎌としての新たな姿を現した
流寓の民は篝火に集う
(都の中を彷徨い、)
(身を隠した者達が)
(その時を待ち望んでいた)