第五十八幕 花の盛りも夜伽の頃
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物質が氷結した後は壊れるのを待つのみ、百鬼夜行の主の業を受けた土蜘蛛の拳は脆くも崩れ、二度と帰らない
百鬼夜行を好きなだけ破壊し、冷麗や土彦を筆頭に数々の犠牲者と氷麗や花雪を奪った報いを土蜘蛛は取り乱すでもなく、ただ呆気に取られた様子で見送るしかなかった
「あん?」
土蜘蛛の腕を砕いた、その刃こそ――
ー鬼纏 雪の下紅梅ー
「ほう…おもしれぇ業だな」
「…土蜘蛛、これがてめぇに届く刃だ」
「リクオ様。ちょ、ちょっと待って…今の…何ですかぁ?」
リクオに言われるがまま、半ば混乱気味で畏を発動させた氷麗の体は疲労にふらり、と揺らぐ。まだ彼女は自分に起こった事を正確に把握している、とはいえない状態だった
解放した畏を全てリクオに委ね、彼と一身となり刃となる感覚――あんなものを今まで氷麗は体験した事がなかった。その説明を求める氷麗の瞳が驚愕によって瞳孔が大きく開く
「リ…リクオ様!?何ですその背中の!?そんなのありましたっけ!?」
先程から体験した事がない、目や耳にした事もない事態が起こってばかりで氷麗は落ち着く暇がない。今は磨き抜かれた皿の様に平らにした瞳に映る背中に目を奪われていた
自分の記憶が正しければ、彼の背中にこんなものは存在しなかった筈だ。そんな――氷の結晶を象った刺青は
「あぁ…これは百鬼を率いる者が、百鬼と共に闘った証だ」
「共に闘った証……?」
ーえ……でも…それ、雪の紋様ですよ…?
「リクオ様…それって…もしかして
あの、私…またお役にたったと、そういうことでしょうか?」
取り返しのつかない失態を侵した自分がリクオの役に立てたと……再び共に肩を並べる事が許されるのか。少しの期待と大きな不安が、こちらを伺ってくる瞳から投げかけられるのをリクオは感じた
視線を交わす事、数秒。実際にはそんなにかかってない体感時間は永遠にも感じられて。やがてリクオの表情に変化が現れる、氷麗の言葉にそれ以上のものをもって応える為の微笑だ
「あたりめぇだ。…また、オレの背中についてきな」
――取り返しのつかない失態を侵してしまった、この事でまだ全てが許されたと失態を取り返せたとは思っていない。だが許された、共に肩を並べて闘う事を……リクオの為に闘う事を
まだ始まったばかりの挽回の道、だが最初の一歩としては充分過ぎる言葉を貰った。目の前に刻まれた雪の結晶の刺青が氷麗を見つめる、自分とリクオとの信頼の証。それは新たな自信へと繋がる
「はっ…はい!!」
それは、久方ぶりに見る氷麗の満開の笑顔となった
「リクオ様…やってくれた…」
「見ろ!! 土蜘蛛の腕が消失した」
「か…勝てるぞ…」
「リクオ様、勝てるぞ!?」
片側の三本の内の一本を喪失し、体のバランスを崩したままの土蜘蛛を囲んで百鬼夜行が沸き立つ。それ故に彼らと対照的にある土蜘蛛の動向が不気味な程に静かであった
つい以前までは土蜘蛛に太刀打ちも出来ずに、弄ばれていたリクオの鋭い反撃。これがあの時の様にまぐれの一撃でなければ、いける。伏目稲荷神社では実現出来ずに破れた夢。リクオの勝利を見るという事が
「………やっと…見つけた」
そのたった一言はリクオの耳に確かに届いていた。自分の腕を切り落とした恨みでもなければ、他の感情の類いでもない。例えるなら、嵐の前触れにある静寂
一言を呟き、土蜘蛛は懐に隠し持っていた煙管の雁首に残った刻み煙草に火を灯し、煙を噴かす。自分が不利な状態を前に、異常にも落ち着いた態度に見える
百鬼夜行を好きなだけ破壊し、冷麗や土彦を筆頭に数々の犠牲者と氷麗や花雪を奪った報いを土蜘蛛は取り乱すでもなく、ただ呆気に取られた様子で見送るしかなかった
「あん?」
土蜘蛛の腕を砕いた、その刃こそ――
ー鬼纏 雪の下紅梅ー
「ほう…おもしれぇ業だな」
「…土蜘蛛、これがてめぇに届く刃だ」
「リクオ様。ちょ、ちょっと待って…今の…何ですかぁ?」
リクオに言われるがまま、半ば混乱気味で畏を発動させた氷麗の体は疲労にふらり、と揺らぐ。まだ彼女は自分に起こった事を正確に把握している、とはいえない状態だった
解放した畏を全てリクオに委ね、彼と一身となり刃となる感覚――あんなものを今まで氷麗は体験した事がなかった。その説明を求める氷麗の瞳が驚愕によって瞳孔が大きく開く
「リ…リクオ様!?何ですその背中の!?そんなのありましたっけ!?」
先程から体験した事がない、目や耳にした事もない事態が起こってばかりで氷麗は落ち着く暇がない。今は磨き抜かれた皿の様に平らにした瞳に映る背中に目を奪われていた
自分の記憶が正しければ、彼の背中にこんなものは存在しなかった筈だ。そんな――氷の結晶を象った刺青は
「あぁ…これは百鬼を率いる者が、百鬼と共に闘った証だ」
「共に闘った証……?」
ーえ……でも…それ、雪の紋様ですよ…?
「リクオ様…それって…もしかして
あの、私…またお役にたったと、そういうことでしょうか?」
取り返しのつかない失態を侵した自分がリクオの役に立てたと……再び共に肩を並べる事が許されるのか。少しの期待と大きな不安が、こちらを伺ってくる瞳から投げかけられるのをリクオは感じた
視線を交わす事、数秒。実際にはそんなにかかってない体感時間は永遠にも感じられて。やがてリクオの表情に変化が現れる、氷麗の言葉にそれ以上のものをもって応える為の微笑だ
「あたりめぇだ。…また、オレの背中についてきな」
――取り返しのつかない失態を侵してしまった、この事でまだ全てが許されたと失態を取り返せたとは思っていない。だが許された、共に肩を並べて闘う事を……リクオの為に闘う事を
まだ始まったばかりの挽回の道、だが最初の一歩としては充分過ぎる言葉を貰った。目の前に刻まれた雪の結晶の刺青が氷麗を見つめる、自分とリクオとの信頼の証。それは新たな自信へと繋がる
「はっ…はい!!」
それは、久方ぶりに見る氷麗の満開の笑顔となった
「リクオ様…やってくれた…」
「見ろ!! 土蜘蛛の腕が消失した」
「か…勝てるぞ…」
「リクオ様、勝てるぞ!?」
片側の三本の内の一本を喪失し、体のバランスを崩したままの土蜘蛛を囲んで百鬼夜行が沸き立つ。それ故に彼らと対照的にある土蜘蛛の動向が不気味な程に静かであった
つい以前までは土蜘蛛に太刀打ちも出来ずに、弄ばれていたリクオの鋭い反撃。これがあの時の様にまぐれの一撃でなければ、いける。伏目稲荷神社では実現出来ずに破れた夢。リクオの勝利を見るという事が
「………やっと…見つけた」
そのたった一言はリクオの耳に確かに届いていた。自分の腕を切り落とした恨みでもなければ、他の感情の類いでもない。例えるなら、嵐の前触れにある静寂
一言を呟き、土蜘蛛は懐に隠し持っていた煙管の雁首に残った刻み煙草に火を灯し、煙を噴かす。自分が不利な状態を前に、異常にも落ち着いた態度に見える