第五十七幕 薄様は雪溶け水に浮かぶ
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それまでの平淡な空気がその一瞬の内に変わった、遠くにいた筈のイタク達でさえ、感じ取れる膨大な畏
らせんの封印を辿りながら、移動するそれは"群れ"。外部から入り込んだ異端者の存在に土蜘蛛も察し、意識が寺の外部へと向けられた。氷麗が待っていた隙が生まれたのだ
ー今だ
「やめとけ、お前じゃ何も出来ねぇよ」
待ち望んでいた好機に氷麗は敏感に反応し、動き出した。あの巨大な体躯と自分の小柄な体躯、例え逃げ出した事を気付かれてもそう簡単には――
けれど忘れていたのだ、蜘蛛の視野は広い事を。こちらを依然として見ていないのにその言葉一つで氷麗の体は、そこから一歩も動けなくなってしまうのだ
「……………」
ー逃げられない…こ…こうなったら………
リクオ様の、花雪様の…足出まといになるくらいなら……………
この場から逃げ出せないのなら、氷麗は冷たい薙刀の刀身を見つめる。その刃紋には必死な自分自身の顔が映り込んでいた
何に変えても守るべき二人をここにおびき寄せるエサになるくらいなら、自分に科した誓いすら果たせないなら――自害も厭わない、そんな決死の思いが自分の瞳から伺えた時だった
「ギャアァ」
「グハッ」
ーえ
幾つもの断末魔の叫びと共に入り口に張られた障子に鮮血が飛び散った、何者かがこの寺院に入ろうと試み、それを阻む妖を悉く斬り捨てていっているらしい
何度も感じた、触れて来た気配に氷麗が意識を向けた瞬間、鮮血の模様が描かれた扉が吹き飛んだ。自分の百鬼を連れ立ち、土蜘蛛を眼光鋭く見据える――氷麗が今最も会いたくなかった人物の仕業だった
「リクオ、様…?」
「フハッ、プイ~~~よおやく来やがったかい」
ー間に合わなかった
「ん?」
既にその出現を待ちわびていた間に何個も酒瓶を開けた土蜘蛛は酔いどれていた、その視界から不意にリクオの姿が掻き消える。酒の効能で焦点が合っていない訳でない現象に酔いが醒めていく
来た、来てしまった。自分のせいで、この地に誘ってしまった事への責任と自分の行動が間に合わなかった事実に氷麗の体が震える。またリクオを目の前で失う恐怖に慟哭した
「なんで…何で来たんですかぁ!!」
ー私じゃもう、お守り出来ないのに!!
「お前と花雪を助けるために来た、つらら」
誰にも気取られない内にリクオは氷麗の背後に現れた、氷麗の脱走を見抜いた土蜘蛛の目ですらも追えない動きは最早、今までのリクオを遥かに凌駕していた
自身の背後に現れた声に氷麗は口を閉ざす、かつて仲間を守る総大将になって欲しいと願った自分の願いがその姿に重なった
「すまねぇ…時間かかっちまったな」
自分が修行に費やした時間中、どれ程に氷麗が苦しんできたのかがその涙に詰まっている様な気がして、
けれど再会を喜ぶ時間は長くは続かない、二人の再会を無遠慮に土足で踏み込む男が同時にこの場に存在しているから
「ふん、ぬらりくらりと邪魔くせぇ。あとかたもなく…つぶしてやるぜ」
「よぉ土蜘蛛…今度こそ、てめーをたたっ斬る!」
薄様は雪溶け水に浮かぶ
(心の奥底に最も隠した想い)
(それは、雪女の涙となって)
(恋しいひとの元へ流れてゆく)
らせんの封印を辿りながら、移動するそれは"群れ"。外部から入り込んだ異端者の存在に土蜘蛛も察し、意識が寺の外部へと向けられた。氷麗が待っていた隙が生まれたのだ
ー今だ
「やめとけ、お前じゃ何も出来ねぇよ」
待ち望んでいた好機に氷麗は敏感に反応し、動き出した。あの巨大な体躯と自分の小柄な体躯、例え逃げ出した事を気付かれてもそう簡単には――
けれど忘れていたのだ、蜘蛛の視野は広い事を。こちらを依然として見ていないのにその言葉一つで氷麗の体は、そこから一歩も動けなくなってしまうのだ
「……………」
ー逃げられない…こ…こうなったら………
リクオ様の、花雪様の…足出まといになるくらいなら……………
この場から逃げ出せないのなら、氷麗は冷たい薙刀の刀身を見つめる。その刃紋には必死な自分自身の顔が映り込んでいた
何に変えても守るべき二人をここにおびき寄せるエサになるくらいなら、自分に科した誓いすら果たせないなら――自害も厭わない、そんな決死の思いが自分の瞳から伺えた時だった
「ギャアァ」
「グハッ」
ーえ
幾つもの断末魔の叫びと共に入り口に張られた障子に鮮血が飛び散った、何者かがこの寺院に入ろうと試み、それを阻む妖を悉く斬り捨てていっているらしい
何度も感じた、触れて来た気配に氷麗が意識を向けた瞬間、鮮血の模様が描かれた扉が吹き飛んだ。自分の百鬼を連れ立ち、土蜘蛛を眼光鋭く見据える――氷麗が今最も会いたくなかった人物の仕業だった
「リクオ、様…?」
「フハッ、プイ~~~よおやく来やがったかい」
ー間に合わなかった
「ん?」
既にその出現を待ちわびていた間に何個も酒瓶を開けた土蜘蛛は酔いどれていた、その視界から不意にリクオの姿が掻き消える。酒の効能で焦点が合っていない訳でない現象に酔いが醒めていく
来た、来てしまった。自分のせいで、この地に誘ってしまった事への責任と自分の行動が間に合わなかった事実に氷麗の体が震える。またリクオを目の前で失う恐怖に慟哭した
「なんで…何で来たんですかぁ!!」
ー私じゃもう、お守り出来ないのに!!
「お前と花雪を助けるために来た、つらら」
誰にも気取られない内にリクオは氷麗の背後に現れた、氷麗の脱走を見抜いた土蜘蛛の目ですらも追えない動きは最早、今までのリクオを遥かに凌駕していた
自身の背後に現れた声に氷麗は口を閉ざす、かつて仲間を守る総大将になって欲しいと願った自分の願いがその姿に重なった
「すまねぇ…時間かかっちまったな」
自分が修行に費やした時間中、どれ程に氷麗が苦しんできたのかがその涙に詰まっている様な気がして、
けれど再会を喜ぶ時間は長くは続かない、二人の再会を無遠慮に土足で踏み込む男が同時にこの場に存在しているから
「ふん、ぬらりくらりと邪魔くせぇ。あとかたもなく…つぶしてやるぜ」
「よぉ土蜘蛛…今度こそ、てめーをたたっ斬る!」
薄様は雪溶け水に浮かぶ
(心の奥底に最も隠した想い)
(それは、雪女の涙となって)
(恋しいひとの元へ流れてゆく)