第五十六幕 磨き上げし粗玉を纏いゆかん
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――だからこそ、最後まで手を抜く事は出来ない。その業を完全に仕立てる事がこの修行の最終調整
それを忘れ、これで京都へと思い馳せるリクオの言葉に牛鬼は小さく口元に笑みを浮かべる。まだまだそういう所は甘いと言わんばかりに、擦れる音と共に鞘から刀が抜き放たれた
「最後のしあげだ、リクオ…その業で私の畏を断ち切ってみろ」
「牛鬼……」
昼間は観光客で賑わう相克寺も今は夜、人の気もすっかり失せた寺院内で大きく鎮座するものがあった。巨大な観音像と見間違うかの様な影はリクオにとっての因縁の相手、土蜘蛛
氷麗と花雪を攫う際に言った様に彼はこの場で待っていた、自分に興味を抱かせるリクオとの再戦を願って。待つ間の退屈さが吹かす煙管から煙となり、寺院の中を漂う
「…………おっせぇなぁ…あのガキ、フフン…」
そのすぐ傍、土蜘蛛という巨体の影に隠れる形で氷麗が天井に行き渡された梁に紐で縛り上げられていた。その意識は依然として深く眠っており、自分が土蜘蛛に囚われている事も知らないままだろう
相克寺で待っている、と言った約束を守る土蜘蛛だが一つ破った誓いがある。それを、花雪を羽衣狐に明け渡したという事をまだリクオも氷麗も知らない
『リクオ様、花雪様』
『雪女―――今日、鴆くんが遊んでくれたよ』
『鴆さんね、物知りで色んな事を教えてもらったの』
伏目稲荷神社で負った傷の痛みを忘れる為の防衛本能としてか、氷麗は遠い日の事を思い出していた
あれはそう、まだリクオも花雪も小さい頃の記憶。花雪が漸く奴良組や氷麗自身に懐き始めた季節に交わした、大切な契り
『そうですか!あらまぁ、うれしそうに』
『鴆くんが総大将になるの応援してくれたよ』
『うふふ、私と花雪様もですよ。立派な総大将になるまで私がお守りしますからね』
『違うよ!ボクが守るんだい、つららと花雪を!!』
その言葉に一瞬、時を忘れたのを今でも覚えている
この時に氷麗は感じたのかもしれない、この人なら自分達を守る次の総大将として確かなもの…優しさを持っていると
『むー…私もふたりを守りたいよ』
『花雪には無理だよ』
『じゃあ…ふたりの、みんなの怪我は私が治すっ。みんながくるしい時は私が助ける』
幼い二人は無邪気に、まだこの世界の厳しさを知らずに容易くそんな事を口にする。何も知らないからこその強みなのかもしれない
けれどそれがただの口約束でも、思い付きの言葉でも氷麗はこの時に思ったのだ。一生この人達について行こうと、その時までは自分が二人を――
『大事な仲間を守る、立派な総大将に…
リクオ様の大事な仲間の道を照らす…姫君になって下さいね!!』
「土蜘蛛は相克寺にいる!」
畏の家紋が入った羽織がはためいていた
羽織を乗せる風は彼らの背中を押すものか、それとも逆風かはまだ分からない
「ずいぶん時間かかっちまった…まってろ。花雪、つらら
行くぜ!! 土蜘蛛退治だ、オレの後ろに…ついてこい!!」
傷が充分に癒えていないままにリクオはもう一度、京都へ踏み込もうとしていた。手土産に土蜘蛛を打ちのめす刃を持って
その背中に連なるは十にも満たない、鴆を含む小さな百鬼夜行――
磨き上げし粗玉を纏いゆかん
(掘り当てたばかりの原石、)
(これから先、色合いは)
(様々な色を得てゆく)
それを忘れ、これで京都へと思い馳せるリクオの言葉に牛鬼は小さく口元に笑みを浮かべる。まだまだそういう所は甘いと言わんばかりに、擦れる音と共に鞘から刀が抜き放たれた
「最後のしあげだ、リクオ…その業で私の畏を断ち切ってみろ」
「牛鬼……」
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昼間は観光客で賑わう相克寺も今は夜、人の気もすっかり失せた寺院内で大きく鎮座するものがあった。巨大な観音像と見間違うかの様な影はリクオにとっての因縁の相手、土蜘蛛
氷麗と花雪を攫う際に言った様に彼はこの場で待っていた、自分に興味を抱かせるリクオとの再戦を願って。待つ間の退屈さが吹かす煙管から煙となり、寺院の中を漂う
「…………おっせぇなぁ…あのガキ、フフン…」
そのすぐ傍、土蜘蛛という巨体の影に隠れる形で氷麗が天井に行き渡された梁に紐で縛り上げられていた。その意識は依然として深く眠っており、自分が土蜘蛛に囚われている事も知らないままだろう
相克寺で待っている、と言った約束を守る土蜘蛛だが一つ破った誓いがある。それを、花雪を羽衣狐に明け渡したという事をまだリクオも氷麗も知らない
『リクオ様、花雪様』
『雪女―――今日、鴆くんが遊んでくれたよ』
『鴆さんね、物知りで色んな事を教えてもらったの』
伏目稲荷神社で負った傷の痛みを忘れる為の防衛本能としてか、氷麗は遠い日の事を思い出していた
あれはそう、まだリクオも花雪も小さい頃の記憶。花雪が漸く奴良組や氷麗自身に懐き始めた季節に交わした、大切な契り
『そうですか!あらまぁ、うれしそうに』
『鴆くんが総大将になるの応援してくれたよ』
『うふふ、私と花雪様もですよ。立派な総大将になるまで私がお守りしますからね』
『違うよ!ボクが守るんだい、つららと花雪を!!』
その言葉に一瞬、時を忘れたのを今でも覚えている
この時に氷麗は感じたのかもしれない、この人なら自分達を守る次の総大将として確かなもの…優しさを持っていると
『むー…私もふたりを守りたいよ』
『花雪には無理だよ』
『じゃあ…ふたりの、みんなの怪我は私が治すっ。みんながくるしい時は私が助ける』
幼い二人は無邪気に、まだこの世界の厳しさを知らずに容易くそんな事を口にする。何も知らないからこその強みなのかもしれない
けれどそれがただの口約束でも、思い付きの言葉でも氷麗はこの時に思ったのだ。一生この人達について行こうと、その時までは自分が二人を――
『大事な仲間を守る、立派な総大将に…
リクオ様の大事な仲間の道を照らす…姫君になって下さいね!!』
「土蜘蛛は相克寺にいる!」
畏の家紋が入った羽織がはためいていた
羽織を乗せる風は彼らの背中を押すものか、それとも逆風かはまだ分からない
「ずいぶん時間かかっちまった…まってろ。花雪、つらら
行くぜ!! 土蜘蛛退治だ、オレの後ろに…ついてこい!!」
傷が充分に癒えていないままにリクオはもう一度、京都へ踏み込もうとしていた。手土産に土蜘蛛を打ちのめす刃を持って
その背中に連なるは十にも満たない、鴆を含む小さな百鬼夜行――
磨き上げし粗玉を纏いゆかん
(掘り当てたばかりの原石、)
(これから先、色合いは)
(様々な色を得てゆく)