第五十五幕 幄覆いのその向こうに
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「テメェリクオ…オレを足出まといみてぇにあつかいやがってよ…」
「はあ!?してねーよそんなん!!」
「してんだろーが」
「いーから逃げろ!!」
「アン!?やなこった」
「おいコラ」
目の前に敵がいて、脅威は去っていないというのに売り言葉に買い言葉。リクオは鴆からの喧嘩を買ってしまい、この状況で口論を初めてしまう。その間に切り開いた出口は塞がってしまった
同時刻、鞍馬天狗からリクオ達へ刺客を差し向けた旨を聞いた牛鬼は入り組んだ山道を疾走していた。約束した期間を過ぎたからとこんな強行手段に出るとは、牛鬼も考えつかなかった、完全なる誤算だ
ー今のリクオでは鞍馬の天狗たちにはかなわない…!
リクオは…ぬらりひょんの本質を遠野でつかんだ、土蜘蛛に攻撃されたときもその畏で認識を微妙にずらしていたのだろう…信じられんことだが…しかし…いまだ自分自身はつかめていない
人の柔軟さを忘れている
「だったら…下がってろよ、鴆!!……倒す!!」
口論の合間にも周囲に目を配っていた為、背後を狙おうと接近する天狗の存在に逸早く気付いたリクオ。叩き付けられる錫杖と受け止める祢々切丸とが金切り声をあげる
このまま、口論していても鴆は退こうともしないだろう。だったら無理に説得する時間を割り当てず、彼を守り切る方が早いとリクオは判断した。まだ、彼は頑なであり続けようとする
ー私もかつて人だった…だからリクオが周りに人の弱さを見せないようにしている気持ちもわかる。だが二代目は違った
仲間を信じ、頼ることが出来た
『オレは半分人間だから、てめーらに頼るのが一番だと思うんだ』
ー人である部分を認め…人にしか出来ぬことをやってのけた
『共に闘ってくれよ…なぁ。てめーらの力…オレにかしてくれよ』
「くそ…こいつら…めちゃくちゃ強ぇ…」
数が減る所か増えている様にも見える天狗達の前に形勢逆転され、隅にまで追いやられた二人。複数を相手にする事で消耗も激しいリクオの肩は大きく弾んでいた
集中力が切れるのが先か、それとも体力が尽きるのが先か――リクオは焦りを感じ始めていた。このままでは鴆を守り切る事も出来ないと
ー蹴散らす刃がねぇ…鴆を…守る刃が欲しい…!! 百鬼を…守る力が…
「リクオ。オレは下がらねェし…逃げたくもねぇ!! オレは役に立ちてぇんだよ…てめぇのな」
ーだが…三日では無理だったか…その業は…心から信頼されるような大きな畏の持ち主でなければならない
大きな畏が…より大きな畏を纏うための…"百鬼夜行の御業"
「オレはてめーと、杯交わした百鬼夜行だろーが!!」
「鴆…」
他の百鬼と力が見劣りするとしても、それでもリクオに守られるだけの存在にはなりたくない。かつて父が二代目の元で毒の翼を広げた様に自分も、
修行が始まった日に鴆が言ってくれた言葉を思い出す。今の百鬼夜行は自分だけ、だから自分が力になると言った激励が凄い力になる…目が覚める思いだった
「…わかったよ、ウルセェ下僕だぜ」
「わかりゃいいんだ」
ー百鬼を纏う業
「てめぇの毒の羽、オレの為に広げてくれ」
「まかしとけ、若頭っ」
その言葉を待っていた、とばかりに鴆はあの時と同じ様に背中を開け広げ、自身の翼を広げる
彼の父が二代目の元でそうした様に、子供達の世代が彼らに追いつこうとしていた
ーリクオよ、気付け
お前はもっと強くなれる!!
自分の出来る限界を認め、その先に至る為の"力"を信頼する仲間の力で補う――それこそが二代目総大将 奴良鯉伴が編み出した業
この時、全てを一人で背負うという殻を破ったリクオの畏に鴆の彼を信頼する力が重なり、巨大な力をリクオへと授けた
ー!! な…んだ……?これ……
「!!」
小屋に駆けつけた牛鬼の目の前で巨大な畏が小屋事、天狗達を外へと押し戻した
その衝撃は新しい星が誕生する際に発生する超新星爆発の余波の様に力強く、眩いものとして薄暗い山を包み込んだ
幄覆いのその向こうに
(亡き父の背中に)
(同じ黒羽根が信頼と共に)
(広がっていた)