第五十五幕 幄覆いのその向こうに
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あまりにも可笑しい状況下に警戒するリクオは天狗達、一人一人から放たれる殺気に気付く。彼らの目的は修行などではない、自分達を殺す事にあると
この天狗達とこれを差し向けた誰かの思惑を把握するや否や、リクオはこの状況を牛鬼に指図された修行と取る鴆を力任せに引っ張る。それを合図に飛びかかる天狗達の一斉攻撃に一網打尽、と思われたが――
「ム…」
振り下ろした刃から通じる手応えに一人の天狗は眉を顰めた。――生身の人間を切ったにしては、いやに響く。これはまるで、
彼が自分が切ったのは人間ではなく、地面だと気付いた瞬間にはその羽根は鋭利なもので捥がれ、地へ伏していた。どうやらリクオの畏を良く理解していなかった事が功を奏したらしい
「どうなってんだよ。さすがに休み無しすぎんじゃねーかぁ!?」
「下がってろ。こいつら…本気でオレらを殺そうとしている」
「何?」
「鴆…オレがこいつらのスキを作る。そのスキにお前はここから逃げろ!!」
「お…おい、リクオ!!」
鴆の呼び止めに耳を傾けるでなく、リクオは一人単独で天狗達へ向かっていく。――その、全てを一人で背負う行動こそ、彼の改めるべき性質だと気付かずに
そんな事が起こっているとは露と知らず、殆どが樹の屑と化した本堂に牛鬼は座していた。修行の再開の時を計っているのか、それともリクオが自分から来るのを待っているのか
「牛鬼…あのボウズはどうした」
「…一時休ませている、すぐに再開する」
「そうか。千年ぶりの出産は近いぞ…
転生妖怪 羽衣狐…最初の出産から約六百年で七度の転生。しかし九尾となったときに私の席はなかった。塵地蔵がおった!」
激情を露にしつつ、述べる鞍馬天狗の会話に牛鬼は静かに耳を傾ける。まだ修行再開まで時間の余裕があるからだろう
京妖怪間で築き上げた席を奪われた鞍馬天狗の怒りは本物だ。本来、敵である奴良組に鞍馬天狗がこうして力を貸しているのも、その席を奪い返す事と奪った相手に復讐する目的あってのものだった
「奴は一部の京妖怪の記憶をイジり、ワシのいるべき立場に立っておる…妙な力を使いおって…」
「…その塵地蔵という妖、羽衣狐もあやつっているのだろうか?」
「いや、それはないだろう。羽衣狐をあやつれるような妖はいない…
何を考えているか知らんが、やや子の出産の時、自分が都合のいい地位につきたいのだろう」
「目的はわからずか」
「…しかし、この鞍馬天狗をコケにしたことを…必ず後悔させてやる
今度の出産だけは認めるわけにはいかん、絶対に阻止する!!」
自身がその位置にいないというのに、その妖の功績となる様な出産は認められない。例えそれが京妖怪の宿願であっても、羽衣狐に楯突く結果になろうとも絶対に
憎悪さえも感じる圧力は今は見えない、自身を足蹴にした塵地蔵へ一身に向けられているのだろう。しかし出産を阻止したいという思いは牛鬼も同じ、両者はその思いで繋がったのだ
「ああ…リクオなら必ずや、そのための力を手に入れるだろう
協力に感謝する、もう少し待ってくれ…」
言葉の節々から滲むのは牛鬼が抱くリクオへの絶大なる信頼。人の血を半分引きながらも奴良組の最盛期を作り上げた鯉伴の息子、彼ならばきっと、という期待もそこには込められている
敵に回せば、厄介な鞍馬天狗だが、味方だとこれ程に頼もしいと思った事はない。この時だけは味方の鞍馬天狗の協力に牛鬼は感謝した。だがここで鞍馬天狗はここでおぞましい本性を露とする
「…おや?牛鬼、最初の約束の時間は今…過ぎようとしているぞ?
過ぎれば、後は我々がやる…祢々切丸は回収させてもらうぞ」
「何…」
牛鬼が鞍馬天狗の策略に気付いた頃、リクオは鴆を逃がす為の突破口を開こうと一人狭い小屋の中とは思えない敵の数に立ち向かっている所だった
鴆を背中に隠しながら、実質複数対単独の戦闘は畏の性質があってかリクオに分は傾いている様だ
「鴆!! 今だ!!!」
二軍として襲い来る大群の中の一人を切り払った先は偶然にも、この戦場の出口。大の男一人分が叩き付けられた衝撃に出口はいとも簡単に口を開く
――それを鴆も見ているというのに、彼は頑なに動こうとしないのだ。やっと開いた突破口、何を迷う事があるのかとリクオは座する自分の義兄弟に叫んだ。叫んで道を示した
「どうした!?鴆!?逃げろよ」
「ざけんな、リクオ…」
「鴆…?」
鍔さえも吐き捨て、リクオの行動を罵る鴆。義兄弟からの自分の扱いが不服な様だ
意図したものでなく自身の百鬼夜行を守る主として、リクオはそう言ったのだが、鴆は違う意味に受けとってしまったらしく、戦場を前に物申し始めてしまう
この天狗達とこれを差し向けた誰かの思惑を把握するや否や、リクオはこの状況を牛鬼に指図された修行と取る鴆を力任せに引っ張る。それを合図に飛びかかる天狗達の一斉攻撃に一網打尽、と思われたが――
「ム…」
振り下ろした刃から通じる手応えに一人の天狗は眉を顰めた。――生身の人間を切ったにしては、いやに響く。これはまるで、
彼が自分が切ったのは人間ではなく、地面だと気付いた瞬間にはその羽根は鋭利なもので捥がれ、地へ伏していた。どうやらリクオの畏を良く理解していなかった事が功を奏したらしい
「どうなってんだよ。さすがに休み無しすぎんじゃねーかぁ!?」
「下がってろ。こいつら…本気でオレらを殺そうとしている」
「何?」
「鴆…オレがこいつらのスキを作る。そのスキにお前はここから逃げろ!!」
「お…おい、リクオ!!」
鴆の呼び止めに耳を傾けるでなく、リクオは一人単独で天狗達へ向かっていく。――その、全てを一人で背負う行動こそ、彼の改めるべき性質だと気付かずに
そんな事が起こっているとは露と知らず、殆どが樹の屑と化した本堂に牛鬼は座していた。修行の再開の時を計っているのか、それともリクオが自分から来るのを待っているのか
「牛鬼…あのボウズはどうした」
「…一時休ませている、すぐに再開する」
「そうか。千年ぶりの出産は近いぞ…
転生妖怪 羽衣狐…最初の出産から約六百年で七度の転生。しかし九尾となったときに私の席はなかった。塵地蔵がおった!」
激情を露にしつつ、述べる鞍馬天狗の会話に牛鬼は静かに耳を傾ける。まだ修行再開まで時間の余裕があるからだろう
京妖怪間で築き上げた席を奪われた鞍馬天狗の怒りは本物だ。本来、敵である奴良組に鞍馬天狗がこうして力を貸しているのも、その席を奪い返す事と奪った相手に復讐する目的あってのものだった
「奴は一部の京妖怪の記憶をイジり、ワシのいるべき立場に立っておる…妙な力を使いおって…」
「…その塵地蔵という妖、羽衣狐もあやつっているのだろうか?」
「いや、それはないだろう。羽衣狐をあやつれるような妖はいない…
何を考えているか知らんが、やや子の出産の時、自分が都合のいい地位につきたいのだろう」
「目的はわからずか」
「…しかし、この鞍馬天狗をコケにしたことを…必ず後悔させてやる
今度の出産だけは認めるわけにはいかん、絶対に阻止する!!」
自身がその位置にいないというのに、その妖の功績となる様な出産は認められない。例えそれが京妖怪の宿願であっても、羽衣狐に楯突く結果になろうとも絶対に
憎悪さえも感じる圧力は今は見えない、自身を足蹴にした塵地蔵へ一身に向けられているのだろう。しかし出産を阻止したいという思いは牛鬼も同じ、両者はその思いで繋がったのだ
「ああ…リクオなら必ずや、そのための力を手に入れるだろう
協力に感謝する、もう少し待ってくれ…」
言葉の節々から滲むのは牛鬼が抱くリクオへの絶大なる信頼。人の血を半分引きながらも奴良組の最盛期を作り上げた鯉伴の息子、彼ならばきっと、という期待もそこには込められている
敵に回せば、厄介な鞍馬天狗だが、味方だとこれ程に頼もしいと思った事はない。この時だけは味方の鞍馬天狗の協力に牛鬼は感謝した。だがここで鞍馬天狗はここでおぞましい本性を露とする
「…おや?牛鬼、最初の約束の時間は今…過ぎようとしているぞ?
過ぎれば、後は我々がやる…祢々切丸は回収させてもらうぞ」
「何…」
牛鬼が鞍馬天狗の策略に気付いた頃、リクオは鴆を逃がす為の突破口を開こうと一人狭い小屋の中とは思えない敵の数に立ち向かっている所だった
鴆を背中に隠しながら、実質複数対単独の戦闘は畏の性質があってかリクオに分は傾いている様だ
「鴆!! 今だ!!!」
二軍として襲い来る大群の中の一人を切り払った先は偶然にも、この戦場の出口。大の男一人分が叩き付けられた衝撃に出口はいとも簡単に口を開く
――それを鴆も見ているというのに、彼は頑なに動こうとしないのだ。やっと開いた突破口、何を迷う事があるのかとリクオは座する自分の義兄弟に叫んだ。叫んで道を示した
「どうした!?鴆!?逃げろよ」
「ざけんな、リクオ…」
「鴆…?」
鍔さえも吐き捨て、リクオの行動を罵る鴆。義兄弟からの自分の扱いが不服な様だ
意図したものでなく自身の百鬼夜行を守る主として、リクオはそう言ったのだが、鴆は違う意味に受けとってしまったらしく、戦場を前に物申し始めてしまう