第五十三幕 研ぎ澄ますべくは盈虧
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妖であり、人である事を忘れてはならない――リクオが自身の父と同じく人間の血を持つ者なら尚更。今の彼は人としてのしなやかさを忘れている、それを思い出させようとしているのだ、牛鬼は
木へ叩き付けられた衝撃で開いた傷口は土蜘蛛の時に受けた痛みを彼へ思い返させる。後頭部に受けた衝撃も相当なものの筈だが、脳震盪も起こさないリクオの丈夫さがここでも垣間見えた
「お前の父は自らが妖であることも、人であることも認めていた。だからこそ強かった…
自分を、否定するな!認めることでお前は強くなるのだ」
開いた傷口を押さえ、その痛みに苦悶の表情を浮かべるリクオを構う暇もなく、牛鬼は彼を攻め立てる
祢々切丸でその刀を受け止めるリクオの背中で黒い羽根が、揺れた
「敵は牛鬼だけではない」
そこには寺院内で牛鬼とリクオの会話を見届け、この修行の開始を勧めた年老いた天狗が影の中から姿を現していた
先程の時と同じく、目の前の牛鬼から次々に放たれる攻めに専念していたリクオの背中は簡単にその天狗に奪われてしまった
「その身でワシらの畏を受け止めてみろ…!!」
その畏は永い年月をかけ、成長してきた巨大な大樹の様な存在感で見る者を圧倒させ、
リクオへとなだれ込む姿はまるで全てを飲み込んでいく津波の、二つの性質を内包させていた。その前にリクオは完全に飲まれた
「う……うわああああああああ」
――夜明け前の薄闇が山を最奥まで包んでいた。山の全体を象る森林の中で眠るリクオもその闇の中でまた眠りについていた、彼の傷はこの修行で癒える所か増える一方である
牛鬼と天狗の指南の元に始まった激しい修行の先で自分は"業"を見据える事が出来るのか、人間という血を受け入れて
今、自分と同じく人の血を引くしなやかさを持つ花雪に会いたいとリクオは恋しく思っていた、あの暖かな光に触れたいと
ー…あたた、かい…
『リクオ、またこんなに怪我して…』
ー花雪…?
声が、聞こえた気がした。自己主張が苦手で引っ込み思案な性格の中に微かに見える献身的な一面、過剰な程に誰かを心配する声が心地良くて、
目を覚ましたリクオは自分の傍に誰かの気配がある事に気付く、その人物は自分が描いた少女ではなく、彼女と同じ治癒に精通した自分の義兄弟だった
「鴆…くん?」
「じっとしてな。おめーの体ってすげーなぁ、なーんでこんな丈夫なんだよ?」
リクオが目を覚ますまでの間に大きな傷への処置は終わっているのだろう、目立った箇所にはすでに真新しい包帯が巻かれていた
殆ど手当を必要としない、する必要がない体に愚痴りながらも鴆は自身の一派である薬壷を呼び出す。その中から手際良く塗り薬を掬い取り、患部へ塗り込んで行く
「………たしかに、そーいえば…」
「花雪がいて、ただでさえないオレの出番が更になくなっちまわー」
薬壷の次に鴆からの呼び掛けに現れたのは竹壷くんと呼ばれる小妖怪、彼もまた鴆一派の一員である
その役割は手当を終えた傷口を塞ぐ為の包帯を運ぶ事、竹壷くんが鴆へ包帯を差し出す一連の動きを見ていたリクオはふと何故ここに彼がいるのかを疑問視する。牛鬼が連れて来たのだろうか?
「鴆くん…何でここに?」
「あん。オレはお前と盃交わした義兄弟だろーが、鍛えるにしても体治さねーとやってけねーだろ?」
「ゴメン…ボクが弱いせいで鴆くんやみんなに迷惑かけて。花雪も連れてかれて…」
当然だと言う様に笑ってみせる鴆とは裏腹にリクオはその顔に暗い影を落とし、治療の手当よりも先に今回の不始末についての謝罪を口にした。思った以上に彼の精神は今回の事で大きな打撃を受けているらしい
自分が強かったなら、京妖怪に立ち向かえる様な"業"を持っていたらこんな事には……そう自分を責めるリクオに鴆は鉄拳を見舞う。折角手当した傷も手当した本人によって台無しである
「いたっ…何すんだ、鴆くん!?」
「てめー、何言ってんだクルルゥアア!! 大将だろ―――がぁ!?
たとえ人助けでも、敵討ちでもてめーが大将なんだから、どーどーとやりゃあいーんだよ」
「鴆くん…」
「ま、どの道あいつらが天下とりゃ、オレらはきっと全滅だ。気にしねー
あ、牛鬼の奴、日が昇ったらすぐ来るらしーぜ。オレはさー人の姿で修行させんのも何かあると思うぜー?」
「そ、そーなんだ…」
どんな目的を持って、総大将が動くとしても自分は最後まで着いていく。だから自信を持てといった類いの言葉で叱咤激励したかと思えば、あっけらかんとする鴆の忙しさにリクオは拍子を抜かす
精神のケアも手当と共に終え、持参した薬の在庫を確かめる鴆の傍で腰を下ろすリクオは思考を巡らせる。牛鬼がここまでして自分に習得させたいものとは一体、
木へ叩き付けられた衝撃で開いた傷口は土蜘蛛の時に受けた痛みを彼へ思い返させる。後頭部に受けた衝撃も相当なものの筈だが、脳震盪も起こさないリクオの丈夫さがここでも垣間見えた
「お前の父は自らが妖であることも、人であることも認めていた。だからこそ強かった…
自分を、否定するな!認めることでお前は強くなるのだ」
開いた傷口を押さえ、その痛みに苦悶の表情を浮かべるリクオを構う暇もなく、牛鬼は彼を攻め立てる
祢々切丸でその刀を受け止めるリクオの背中で黒い羽根が、揺れた
「敵は牛鬼だけではない」
そこには寺院内で牛鬼とリクオの会話を見届け、この修行の開始を勧めた年老いた天狗が影の中から姿を現していた
先程の時と同じく、目の前の牛鬼から次々に放たれる攻めに専念していたリクオの背中は簡単にその天狗に奪われてしまった
「その身でワシらの畏を受け止めてみろ…!!」
その畏は永い年月をかけ、成長してきた巨大な大樹の様な存在感で見る者を圧倒させ、
リクオへとなだれ込む姿はまるで全てを飲み込んでいく津波の、二つの性質を内包させていた。その前にリクオは完全に飲まれた
「う……うわああああああああ」
――夜明け前の薄闇が山を最奥まで包んでいた。山の全体を象る森林の中で眠るリクオもその闇の中でまた眠りについていた、彼の傷はこの修行で癒える所か増える一方である
牛鬼と天狗の指南の元に始まった激しい修行の先で自分は"業"を見据える事が出来るのか、人間という血を受け入れて
今、自分と同じく人の血を引くしなやかさを持つ花雪に会いたいとリクオは恋しく思っていた、あの暖かな光に触れたいと
ー…あたた、かい…
『リクオ、またこんなに怪我して…』
ー花雪…?
声が、聞こえた気がした。自己主張が苦手で引っ込み思案な性格の中に微かに見える献身的な一面、過剰な程に誰かを心配する声が心地良くて、
目を覚ましたリクオは自分の傍に誰かの気配がある事に気付く、その人物は自分が描いた少女ではなく、彼女と同じ治癒に精通した自分の義兄弟だった
「鴆…くん?」
「じっとしてな。おめーの体ってすげーなぁ、なーんでこんな丈夫なんだよ?」
リクオが目を覚ますまでの間に大きな傷への処置は終わっているのだろう、目立った箇所にはすでに真新しい包帯が巻かれていた
殆ど手当を必要としない、する必要がない体に愚痴りながらも鴆は自身の一派である薬壷を呼び出す。その中から手際良く塗り薬を掬い取り、患部へ塗り込んで行く
「………たしかに、そーいえば…」
「花雪がいて、ただでさえないオレの出番が更になくなっちまわー」
薬壷の次に鴆からの呼び掛けに現れたのは竹壷くんと呼ばれる小妖怪、彼もまた鴆一派の一員である
その役割は手当を終えた傷口を塞ぐ為の包帯を運ぶ事、竹壷くんが鴆へ包帯を差し出す一連の動きを見ていたリクオはふと何故ここに彼がいるのかを疑問視する。牛鬼が連れて来たのだろうか?
「鴆くん…何でここに?」
「あん。オレはお前と盃交わした義兄弟だろーが、鍛えるにしても体治さねーとやってけねーだろ?」
「ゴメン…ボクが弱いせいで鴆くんやみんなに迷惑かけて。花雪も連れてかれて…」
当然だと言う様に笑ってみせる鴆とは裏腹にリクオはその顔に暗い影を落とし、治療の手当よりも先に今回の不始末についての謝罪を口にした。思った以上に彼の精神は今回の事で大きな打撃を受けているらしい
自分が強かったなら、京妖怪に立ち向かえる様な"業"を持っていたらこんな事には……そう自分を責めるリクオに鴆は鉄拳を見舞う。折角手当した傷も手当した本人によって台無しである
「いたっ…何すんだ、鴆くん!?」
「てめー、何言ってんだクルルゥアア!! 大将だろ―――がぁ!?
たとえ人助けでも、敵討ちでもてめーが大将なんだから、どーどーとやりゃあいーんだよ」
「鴆くん…」
「ま、どの道あいつらが天下とりゃ、オレらはきっと全滅だ。気にしねー
あ、牛鬼の奴、日が昇ったらすぐ来るらしーぜ。オレはさー人の姿で修行させんのも何かあると思うぜー?」
「そ、そーなんだ…」
どんな目的を持って、総大将が動くとしても自分は最後まで着いていく。だから自信を持てといった類いの言葉で叱咤激励したかと思えば、あっけらかんとする鴆の忙しさにリクオは拍子を抜かす
精神のケアも手当と共に終え、持参した薬の在庫を確かめる鴆の傍で腰を下ろすリクオは思考を巡らせる。牛鬼がここまでして自分に習得させたいものとは一体、