第五十二幕 夜に几帳立てるべからず
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
突然、立ち上がった事で塞ぎかかった傷が開くのも構わない乱暴な起き上がり。例え、牛鬼に何か考えがあろうとそれを聞く時間すら惜しいと目の前に開けた出口に真っ直ぐ向かって行く
そんな頑固さすらも感じ取られる、リクオの足に張り付く畏がその歩みを縛り付ける。まるで言う事を聞かずに親の怒りを買った子供のように簡単にその足は強張り、一瞬の内に脳より伝わる神経が切断される
体中の熱が背筋から這い上がってくる恐怖心に奪い取られ、本能から伝わる逃走願望が考えるよりも早く彼の体を動かし、恐怖――覆いかぶさってくる畏から飛び出させた
「今のお前では無理だ。百鬼夜行配下の者の畏に、気圧されるようではな」
砂利を踏みしめ、逃げ出したばかりの巨大な畏は更にリクオを追い込みにかかる
全身を粟立たせる様な威圧感を含んだ畏に触れた事で彼の頭から花雪と氷麗の救出は優先順位が下降する。今、最も優先すべきは――この状況から逃げること
「う…うう………」
ーこ…これは…
「奴良組を率いる者は決して負けてはならんのだ」
ー牛鬼の、畏……!?
手負いの草食動物を歯牙にかける様に牛鬼がその刀を鋭く振り抜く。長い年月をかけ、磨き抜かれた斬撃から伝わる年月の重さがリクオの体の隅々まで響き渡る
斬撃の重みを受け止め切れず、動きを制御する神経に支障を来した彼の体は床を転がり、塞がりかけていた傷から血液が蓋を割って溢れ出る
敵対する相手の攻撃を交わし、隙を作り出す――それこそがぬらりひょんという妖の本質。けれど…交わした後は?
「かわして…そしてどうする」
「え…」
「リクオ、お前は花雪様と遠野に行き…"自分"をより理解できたようだな
だが"ぬらりひょん "という妖の本質は、そこまで…なのだ」
ー……!?
「畏を断ち、ふところに入ることは可能。そこまでが能力」
「え…どう…いう…」
牛鬼が何を言っているのか、リクオには分からなかった。自分達の本質が"そこまで"というのは一体どういう事なのか――けれど牛鬼はその問いかけに刀で応える
彼の斬撃を受け、地面に塵と化したのは立ち並ぶ仏像の一体。今、指摘された様に牛鬼の攻撃を交わした所でリクオに攻撃後に生まれた牛鬼の隙を突く手段は持ち合わせていない
「リクオ…お前はここ数ヶ月で花雪様と共にたしかに強くなった。しかし京ではそれでは足りんのだ
お前自身の刃を届かせるために、お前にはやらねばならん事が二つある…時間が無いのならば、三日だ。その間にぬらりひょん より強くなれ」
「……自分より…強くなる……?い…一体、何のこと…!?」
「牛鬼」
ぬらりひょんという妖の存在を理解し、それを自分の技として昇華し通用するのは遠野まで。土蜘蛛や羽衣狐に攻撃を通すにはぬらりひょんという存在よりも強くならなけばならない――
欠けた仏像の間を補う様に天狗の老妖怪がいつの間にか、そこに鎮座していた。天狗の存在はリクオの混乱していた頭を落ち着かせるに十分だった
「口で言っても伝わらん、実戦あるのみだ」
ー誰だ…?
「そうだな…リクオよ、刀を抜け。百鬼の主たるべき"業"を三日の内に手に入れるのだ…」
ー業…?
「業…!?"業"って何だよ!?牛鬼!?」
一度、落ち着いた筈の頭に取り込まれた単語は再びリクオの気を昂らせる。その単語から何の想像も出来ないというのに三日でそれを手にしろ、というのは無茶苦茶にも程があるといった言い分だ
次々に喚いて出る言葉をその口諸共に塞がんと彼の目の前を白い閃光が狭まり、建物事切り払う。この場で喋りは無用だと、手を動かす事を強いる様な動作にリクオは祢々切丸の白刃を鞘の間から微かに覗かせて応える
「刀を抜け、リクオ」
ーなん…だ、牛鬼…前と…全然違う……
これが牛鬼の本当の――
「己を、超えてみろ。リクオ!!」
夜に几帳立てるべからず
(届かぬ刃の波紋に)
(人の姿を掻き消すなかれ)
そんな頑固さすらも感じ取られる、リクオの足に張り付く畏がその歩みを縛り付ける。まるで言う事を聞かずに親の怒りを買った子供のように簡単にその足は強張り、一瞬の内に脳より伝わる神経が切断される
体中の熱が背筋から這い上がってくる恐怖心に奪い取られ、本能から伝わる逃走願望が考えるよりも早く彼の体を動かし、恐怖――覆いかぶさってくる畏から飛び出させた
「今のお前では無理だ。百鬼夜行配下の者の畏に、気圧されるようではな」
砂利を踏みしめ、逃げ出したばかりの巨大な畏は更にリクオを追い込みにかかる
全身を粟立たせる様な威圧感を含んだ畏に触れた事で彼の頭から花雪と氷麗の救出は優先順位が下降する。今、最も優先すべきは――この状況から逃げること
「う…うう………」
ーこ…これは…
「奴良組を率いる者は決して負けてはならんのだ」
ー牛鬼の、畏……!?
手負いの草食動物を歯牙にかける様に牛鬼がその刀を鋭く振り抜く。長い年月をかけ、磨き抜かれた斬撃から伝わる年月の重さがリクオの体の隅々まで響き渡る
斬撃の重みを受け止め切れず、動きを制御する神経に支障を来した彼の体は床を転がり、塞がりかけていた傷から血液が蓋を割って溢れ出る
敵対する相手の攻撃を交わし、隙を作り出す――それこそがぬらりひょんという妖の本質。けれど…交わした後は?
「かわして…そしてどうする」
「え…」
「リクオ、お前は花雪様と遠野に行き…"自分"をより理解できたようだな
だが"
ー……!?
「畏を断ち、ふところに入ることは可能。そこまでが能力」
「え…どう…いう…」
牛鬼が何を言っているのか、リクオには分からなかった。自分達の本質が"そこまで"というのは一体どういう事なのか――けれど牛鬼はその問いかけに刀で応える
彼の斬撃を受け、地面に塵と化したのは立ち並ぶ仏像の一体。今、指摘された様に牛鬼の攻撃を交わした所でリクオに攻撃後に生まれた牛鬼の隙を突く手段は持ち合わせていない
「リクオ…お前はここ数ヶ月で花雪様と共にたしかに強くなった。しかし京ではそれでは足りんのだ
お前自身の刃を届かせるために、お前にはやらねばならん事が二つある…時間が無いのならば、三日だ。その間に
「……自分より…強くなる……?い…一体、何のこと…!?」
「牛鬼」
ぬらりひょんという妖の存在を理解し、それを自分の技として昇華し通用するのは遠野まで。土蜘蛛や羽衣狐に攻撃を通すにはぬらりひょんという存在よりも強くならなけばならない――
欠けた仏像の間を補う様に天狗の老妖怪がいつの間にか、そこに鎮座していた。天狗の存在はリクオの混乱していた頭を落ち着かせるに十分だった
「口で言っても伝わらん、実戦あるのみだ」
ー誰だ…?
「そうだな…リクオよ、刀を抜け。百鬼の主たるべき"業"を三日の内に手に入れるのだ…」
ー業…?
「業…!?"業"って何だよ!?牛鬼!?」
一度、落ち着いた筈の頭に取り込まれた単語は再びリクオの気を昂らせる。その単語から何の想像も出来ないというのに三日でそれを手にしろ、というのは無茶苦茶にも程があるといった言い分だ
次々に喚いて出る言葉をその口諸共に塞がんと彼の目の前を白い閃光が狭まり、建物事切り払う。この場で喋りは無用だと、手を動かす事を強いる様な動作にリクオは祢々切丸の白刃を鞘の間から微かに覗かせて応える
「刀を抜け、リクオ」
ーなん…だ、牛鬼…前と…全然違う……
これが牛鬼の本当の――
「己を、超えてみろ。リクオ!!」
夜に几帳立てるべからず
(届かぬ刃の波紋に)
(人の姿を掻き消すなかれ)