第五十一幕 唐紅、未だ消えず
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勇ましい声と共にブシュッ、と血と血がぶつかり混じり合う音を立て、土蜘蛛はリクオによって切り落とされた指を乱暴に接合させる。常識では有り得ないその方法は規格外の土蜘蛛だからこそ出来るものだ
受けた傷といえば、指を一本切り落とされただけに留まり、その周囲はこの一帯だけに爆撃が落とされたかの様に以前の姿は見受けられない。辛うじてここが神社だったと知らしめるのは赤い鳥居の存在
足下に敷き詰められた瓦礫、その下に自分の食べ散らかした百鬼夜行の半数は押し潰されている事だろう
一体何人の者が生き残っているかも分からない状況でもう、土蜘蛛の目に適う存在はいない
「飽きたな、帰るか」
「リク…オ…様…」
「こんな…ところで…負けられるか…」
――そう、彼の目に適う存在はいない筈だった。今、この時までは
祢々切丸を支えに何とか持ちこたえ、闘気を失わないリクオが掠れた喉からその言葉を振り絞り、懸命に自身を奮い立たせようとしていた
土蜘蛛の手にかかりながらも決して心までは挫けさせない、という意志に応える様に体内から流れ出る血から暖かな光がその傷を癒す。立ち上がってみせろと
「……なんなんだ、おめ―――なぜ壊れない?」
「若…もう……立たないで…」
「……ダメ…だ…ボクは…大将なんだ…から…」
ーなんだよ、これじゃ百鬼もまだ破壊 れてねぇな
これ程までにやられておきながら、主も百鬼も破壊されない――この状況は今までに幾つもの百鬼夜行を破壊してきた土蜘蛛でさえも初めて目の当たりにするケースだった
それ故に興味が沸く。リクオも今まで通りに自分が破壊してきた百鬼夜行の主と同じものだと思っていたが、彼はどうやら、まだまだ自分を楽しませてくれるに足る存在らしいと
ー―――――こいつ
「おい、お前…やるじゃねぇか」
今までの健闘を讃えるかの様な口ぶりを使用する土蜘蛛。これまでに抱いていたリクオへの認識を改め、自分の畏に耐え切った事を評価しているかのようだ
けれど、その態度とは裏腹に取った行動はリクオにとって最悪の状況を生み出す引き金を引いた。顔を上げた彼の前に気絶し倒れていた二人の少女を吊るし上げたのだ、氷麗と花雪を
「いいひまつぶしになりそうだ」
「……!?あっ……う…
て…てめ…何しやが……る!!」
「オレは相克寺ってとこにいるぜ、来いよ。自慢の百鬼を連れてな…」
「おいっ…まて…ふざけん…土蜘蛛ッ…」
憎たらしい笑みを表情に張り付け、二人を百鬼から引き離し歩いて行く土蜘蛛。花雪と氷麗、リクオの間の距離はその歩数に応じて引きはがされて行く
相手をするなら、自分だけで充分の筈だと彼女達は何も関係ないと二人が奪われるのを阻止せんと目の前の巨体を追いかけようと残った全ての力を足に込め、一歩前に身を乗り出し、手を伸ばす
――伸ばされた手に握られたのはどちらかの柔肌ではなく、花雪の腕から滑り落ちた月鳴の手触り。そして二人を助けられなかった後悔とやるせなさだった
「土蜘蛛ぉおぉおおお」
全てを奪い尽くし、百鬼を至る所まで喰らい尽くし充分に満足して去って行った悪鬼が齎した被害は妖気の渦の合間から差し込む朝日によって、強く照らし出される。晴れ渡った空はあまりにもコントラストが強過ぎた
そこかしこで被害状況の確認および、復旧に追われる中で積み重なった瓦礫の上で小妖怪達が黄昏れていた。彼らの姿こそが今の奴良組の心境そのものなのかもしれない
「おかしいなぁ、いつもならもっと力が出るはずなのになんだか力が入んなかったんだよ」
「あーあ、すげぇキズだぜ。リクオ…
花雪がいたら、こんなキズあっという間だってのに…」
すぐにでも土蜘蛛によって連れ去られた氷麗と花雪を助けに向かいたかった筈のリクオは緊張の糸が解けたのか、土蜘蛛が去って数刻もしない間に意識を手放してしまった
無理もない話だ、これ以上自分の百鬼夜行に手を出さない為に単身、土蜘蛛へ向かった苦労は計り知れない。人間の姿ながらこうして生きている事を手当に当たっていた鴆も奇跡、否不思議だと言葉を抱いた
ーリクオ…よく生きてた、頑丈だぜ…不自然なくらい
でも…どうする。オレたちは何も知らずに…飛び出しすぎたんじゃねーか……?
「リクオ…それでも貴様、奴良組の長となる気か」
「え…」
静かな低音から響く重厚さは一本の老木を彷彿とさせる、歴史深ささえも感じさせるようだ。一体誰がこんな声をと声の主へ振り返った鴆は目を見開き、体を硬直させた
何故、この男がここに存在するのか…その理由がどうしても見当たらない間にその男はリクオの元へ辿り着く
「お前たちの大将、私があずかる
立て、リクオ」
ぬらりひょんが最も信頼する男、捩眼山の牛鬼がその目でリクオを捉えた
唐紅、未だ消えず
(少女らに刻まれた赤は)
(点々と撒き餌となり)
(いつか、彼を誘う)
受けた傷といえば、指を一本切り落とされただけに留まり、その周囲はこの一帯だけに爆撃が落とされたかの様に以前の姿は見受けられない。辛うじてここが神社だったと知らしめるのは赤い鳥居の存在
足下に敷き詰められた瓦礫、その下に自分の食べ散らかした百鬼夜行の半数は押し潰されている事だろう
一体何人の者が生き残っているかも分からない状況でもう、土蜘蛛の目に適う存在はいない
「飽きたな、帰るか」
「リク…オ…様…」
「こんな…ところで…負けられるか…」
――そう、彼の目に適う存在はいない筈だった。今、この時までは
祢々切丸を支えに何とか持ちこたえ、闘気を失わないリクオが掠れた喉からその言葉を振り絞り、懸命に自身を奮い立たせようとしていた
土蜘蛛の手にかかりながらも決して心までは挫けさせない、という意志に応える様に体内から流れ出る血から暖かな光がその傷を癒す。立ち上がってみせろと
「……なんなんだ、おめ―――なぜ壊れない?」
「若…もう……立たないで…」
「……ダメ…だ…ボクは…大将なんだ…から…」
ーなんだよ、これじゃ百鬼もまだ
これ程までにやられておきながら、主も百鬼も破壊されない――この状況は今までに幾つもの百鬼夜行を破壊してきた土蜘蛛でさえも初めて目の当たりにするケースだった
それ故に興味が沸く。リクオも今まで通りに自分が破壊してきた百鬼夜行の主と同じものだと思っていたが、彼はどうやら、まだまだ自分を楽しませてくれるに足る存在らしいと
ー―――――こいつ
「おい、お前…やるじゃねぇか」
今までの健闘を讃えるかの様な口ぶりを使用する土蜘蛛。これまでに抱いていたリクオへの認識を改め、自分の畏に耐え切った事を評価しているかのようだ
けれど、その態度とは裏腹に取った行動はリクオにとって最悪の状況を生み出す引き金を引いた。顔を上げた彼の前に気絶し倒れていた二人の少女を吊るし上げたのだ、氷麗と花雪を
「いいひまつぶしになりそうだ」
「……!?あっ……う…
て…てめ…何しやが……る!!」
「オレは相克寺ってとこにいるぜ、来いよ。自慢の百鬼を連れてな…」
「おいっ…まて…ふざけん…土蜘蛛ッ…」
憎たらしい笑みを表情に張り付け、二人を百鬼から引き離し歩いて行く土蜘蛛。花雪と氷麗、リクオの間の距離はその歩数に応じて引きはがされて行く
相手をするなら、自分だけで充分の筈だと彼女達は何も関係ないと二人が奪われるのを阻止せんと目の前の巨体を追いかけようと残った全ての力を足に込め、一歩前に身を乗り出し、手を伸ばす
――伸ばされた手に握られたのはどちらかの柔肌ではなく、花雪の腕から滑り落ちた月鳴の手触り。そして二人を助けられなかった後悔とやるせなさだった
「土蜘蛛ぉおぉおおお」
全てを奪い尽くし、百鬼を至る所まで喰らい尽くし充分に満足して去って行った悪鬼が齎した被害は妖気の渦の合間から差し込む朝日によって、強く照らし出される。晴れ渡った空はあまりにもコントラストが強過ぎた
そこかしこで被害状況の確認および、復旧に追われる中で積み重なった瓦礫の上で小妖怪達が黄昏れていた。彼らの姿こそが今の奴良組の心境そのものなのかもしれない
「おかしいなぁ、いつもならもっと力が出るはずなのになんだか力が入んなかったんだよ」
「あーあ、すげぇキズだぜ。リクオ…
花雪がいたら、こんなキズあっという間だってのに…」
すぐにでも土蜘蛛によって連れ去られた氷麗と花雪を助けに向かいたかった筈のリクオは緊張の糸が解けたのか、土蜘蛛が去って数刻もしない間に意識を手放してしまった
無理もない話だ、これ以上自分の百鬼夜行に手を出さない為に単身、土蜘蛛へ向かった苦労は計り知れない。人間の姿ながらこうして生きている事を手当に当たっていた鴆も奇跡、否不思議だと言葉を抱いた
ーリクオ…よく生きてた、頑丈だぜ…不自然なくらい
でも…どうする。オレたちは何も知らずに…飛び出しすぎたんじゃねーか……?
「リクオ…それでも貴様、奴良組の長となる気か」
「え…」
静かな低音から響く重厚さは一本の老木を彷彿とさせる、歴史深ささえも感じさせるようだ。一体誰がこんな声をと声の主へ振り返った鴆は目を見開き、体を硬直させた
何故、この男がここに存在するのか…その理由がどうしても見当たらない間にその男はリクオの元へ辿り着く
「お前たちの大将、私があずかる
立て、リクオ」
ぬらりひょんが最も信頼する男、捩眼山の牛鬼がその目でリクオを捉えた
唐紅、未だ消えず
(少女らに刻まれた赤は)
(点々と撒き餌となり)
(いつか、彼を誘う)