第五十一幕 唐紅、未だ消えず
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「調子に乗るな」
微かに見え出した反撃の波に乗せる暇もなく、リクオの体は容易く土蜘蛛の手によって阻まれてしまう。分があっても土蜘蛛には手数では圧倒的に不利
数の暴力という言葉が示す通り、土蜘蛛は押さえ付けて動く事もままならないリクオの体へ凶悪すぎる制裁で返す。――体中の器官という部位から圧力に耐え切れずに血が勢いよく噴き出した
ー百鬼夜行破壊―――
それが土蜘蛛の"畏"である
「リクオ様ー!!」
その在りようは決して陥落しない難攻不落の城壁――土蜘蛛の前に門前払いを喰らったリクオを救出せんと首無や黒田坊が二人の戦場へ加勢に駈ける
微かに反撃の目を見せたリクオすらもその鉄壁の前に撃沈した事実、幹部クラスの彼らであっても主を助け出せずに生々しい殴打音、そして辺りを紅く染め上げる鮮血という境界が行く手を阻む
ー徹底的に大将を狙い続け…なぶり続ける
するとどうであろうか―――どのような強者が百鬼にいようが、力を発揮できなくなってゆく
百鬼が脆くも崩れてゆくのである
もしリクオが土蜘蛛の畏に耐えることが出来たなら…本当の大将の畏を纏っていたなら…事態は変わっていたはずなのだ
ー土蜘蛛は―――リクオにとってまだ会ってはいけない妖だった―
ー奴良組 本家
「はっ、はっ」
その頃、百鬼夜行がそんな状況に置かれている事を露とも知らない東京…浮世絵町に住まうぬらりひょんが木刀を一身に振るっていた。歳を取っても決して鈍らない鋭さがその太刀から伺える
東から昇ってきた太陽に照らされた雲はまるで、京都に立ち込める妖気を吸い込んだかの様にいつになく陰りが濃い
「総大将は一体、何をなさっています」
「さぁてな…羽衣狐の報をきいてから、ずっとあの調子」
「気がはやるのですな…ムリもない」
自分達の大将であるぬらりひょんが振るう木刀の音を背景に朝の一服にとカラス天狗と木魚達磨が交わす茶に舌鼓を打つ
復活した羽衣狐との因縁を断ちに向かったのは鬼憑を身に付けたばかりの齢12の若き大将。孫である彼の身を危惧し構えてもいられないのだろう、というのが二人の見立てだった
「京妖怪があばれ続ければ、いずれはワシら奴良組への復讐へと続くことになろう」
「そうなれば、奴良組も戦力の底上げが必要になってくる」
「止めるべきじゃった…今だ発展途上のリクオ様がなぜ、自ら向かう必要があったか?何も花雪様をお連れする事も……」
「陰陽師の娘を助けるなど……まだ人間の血の悪いクセじゃ」
奴良組の再興が軌道に乗ってきた、その成功は偏にリクオや彼に寄り添う花雪の働きあってのもの。今や彼らは組の再興に必要不可欠な存在、中心人物だ
そんな若い指導者に羽衣狐の討伐に向かわせる事をぬらりひょんはどうして簡単に受け入れたのか、またその選択に賛同した事に後悔を募らせる二人の陰気さは朝の清涼感とは正反対の性質をしていた
「な―――にを"マイナス思考"で"ネガ"っとるんじゃい、リクオと花雪がどこまで出来るか見てみたいとは思わんか?」
「総大将」
「自分の意志で「人をなぐりたい」と言ってきたのははじめてのことじゃぞ?尊重したいじゃろ~~」
素振りをそこそこに、庭まで聞こえてくる二人の会話にぬらりひょんは前置きと共に割り込む。元々、彼に聞かせる為に話していたカラス天狗達にはこうなる事は予想通りの顛末だ
確かに祖父であったら孫の意志は尊重したいものだろう。それはカラス天狗達にも分からない話ではない、だが些か安直過ぎたのではないかというのが素直な感想である
「まったく…しかしまだ早かったのでは!?リクオ様にも花雪様にも弱点がある…人間の血というー」
「今のワシは羽衣狐を倒せんじゃろーが、花雪と一緒のリクオならやるかもしれんぞ―――」
「え…」
「人間の血が弱点になるとはかぎらん…ワシはそう思うぞ、二代目と楓、錫兎の"死の真相"を知っておるのもあの子達だけじゃ…口に出さんが強い意思を感じた
心配するな…あやつらには「ワシの最も信頼を置く男」を送った」
「…ほう、やはり孫とその許嫁がかわいいのですな」
「"あいつ"がどーしてもと言うからじゃ」
「フン」
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