第五十一幕 唐紅、未だ消えず
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天から溢れる陽光によって、溶けていく畏がリクオの在りようを人の姿へと貶める。辛うじて残る夜の面影も後、何分持ちこたえられるかも分からない
その腕の中で真紅に彩られた花雪は土蜘蛛の重い一撃に耐えられず、意識を失ったまま。彼女に刻まれた傷の一つ一つが誰かを守ろうと願った想いを反映した欠片のようだった
ーみんな、やられちまったのか―――
頭から滴る血液の重さに塞がりそうになる目でリクオは周囲を見回す。凍り付いた煙管は無造作に踏みにじられた冷麗と土彦の最初で最後の反抗の証として、溶ける事はなく煌めいている
――蹂躙、この凄惨な状況を現す言葉はそれに尽きるだろう。肉食獣が逃げ惑う草食動物を執拗に追いかけ回す様に、百鬼夜行を好き勝手に弄くり回した土蜘蛛への怒りが、やがて彼の力へと転化する
ーふざけんな、させねぇ
「リクオ様…?」
ーさせねぇ
「リクオ…」
ーこれ以上、オレの百鬼夜行に手ェ出すんじゃねぇ!!
これ以上、犠牲を出させない為の最善の策は百鬼の主である彼自身が土蜘蛛へ立ち向かい、暗雲を斥するに他はなかった
胸の内の更に底から沸き上がる憤怒を撒き散らす様にリクオは大きく咆哮し、目の前の巨体へ飛びかかる。辛うじて妖の名残が伺えるもその大半は殆ど人の姿である
「リクオ様……!」
「ちょ…人間に戻ってない!?」
リクオの身に起こった変化によって、一同に混乱が沸き立つ。羽衣狐によって支配された妖の街、妖気が立ち込めていた為に今まで彼や花雪達は朝になっても夜の姿を意地していた、それが何故――
理由としては淡島がこの地、伏目稲荷神社を守護していた千手百足を倒し、続いて竜二の手によって再び妖気に栓が穿たれたからである。それによって陽の光がこの地に差し込んでいる
「封印だ、ここらは妖気が完全にはれた」
「え…そんなっ。奴良くん…人間の状態で土蜘蛛につっこむ気!?無茶や!!」
ーリクオ!! てめーの畏は土蜘蛛に通用しなかっただろーが!!
妖怪の技は恐怖で決まる、こいつが畏れるはずない…一人で百鬼夜行を壊滅する男だ
「つっこむな!! リクオ!!」
高度な策や考えが練られた訳でもないリクオが取った行動は何とも原始的な形をしていた。今、彼は怒りに身を任せ、完全に衝動だけで動いている状態だった
それがただの特攻と読み取った土蜘蛛は目の前に迫るリクオを容易く蹴散らそうと無造作に拳を打つ、平等な程にその攻撃も単純な造りとして振るわれる
誰もがリクオが土蜘蛛に押し負ける――そう思われた時に鈍い音が響いた。それは決してリクオが土蜘蛛の拳に討たれたものではなく――リクオが一閃によって土蜘蛛の指の一本が切り飛ばした際に生じた音だった
「ム」
今までただの一度も、誰の攻撃も受け止めてきた土蜘蛛の指を切り落とした。その事は一本の指をなくした本人も想定しなかった事らしく、気の抜けた声が漏れ出た
祢々切丸によって指を落とされたのか、そう考えが追いついた瞬間に切断面から浅黒い血液と妖の力そのものである畏が雨の様に噴き出した。リクオがとうとう、土蜘蛛へ太刀を届かせたのだ
「え…」
「な…っ」
ここに至るまでの間、好き勝手に百鬼を弄んでくれた鬱憤に漸く一矢を報いたリクオ。驚くべき所は彼の姿が妖ではなく、人の姿でやり返したという事実か
「リ…リクオ様……!!」
「斬った……!?」
「土蜘蛛を…斬った―――ッ!?」
妖の姿ならまだしも人の姿で土蜘蛛の虚を衝いた、まだ反撃の目は残っている――
小さな、けれど大きな一撃を目の当たりにした百鬼が攻撃を直に受けた土蜘蛛や土蜘蛛に一泡吹かせたリクオ以上に沸き立つ
「……」
「な、今何したんだ…?」
ー祢々切丸
『竜二…ゆら、見とけ。あれが祢々切丸や…』
「……なんだ…こりゃ」
体内から血と共に吹き出る畏、今までに目にした事のない力の正体に辿り着けずにいながらも、間髪入れずに土蜘蛛は目の前のリクオへと鋭い蹴りを放つ
だがその攻撃が今まで効かなかったリクオの畏の前に霧散する。今の反撃によって、土蜘蛛が片足程に彼の調子に飲まれた事を指していた。分はリクオへ傾き始めている
「リクオ様!!」
「土蜘蛛の奴…効き始めた!?」
ーこれは…見たことがある
以前…昼と夜が混ざり合い…
「うおおおお、おおおおお」
それは以前、東京へ四国八十八鬼夜行が襲来した時の事。その組長である玉章との最終決戦で起こった現象である
長い夜をかけて行われたその戦いの最中、夜が明けた事でリクオは妖怪から人の姿へ戻りかけた、言わば妖と人の中間にある状態――それが今回も土蜘蛛との戦いで僅かながら反撃の兆しを見せつつあった。しかし、
その腕の中で真紅に彩られた花雪は土蜘蛛の重い一撃に耐えられず、意識を失ったまま。彼女に刻まれた傷の一つ一つが誰かを守ろうと願った想いを反映した欠片のようだった
ーみんな、やられちまったのか―――
頭から滴る血液の重さに塞がりそうになる目でリクオは周囲を見回す。凍り付いた煙管は無造作に踏みにじられた冷麗と土彦の最初で最後の反抗の証として、溶ける事はなく煌めいている
――蹂躙、この凄惨な状況を現す言葉はそれに尽きるだろう。肉食獣が逃げ惑う草食動物を執拗に追いかけ回す様に、百鬼夜行を好き勝手に弄くり回した土蜘蛛への怒りが、やがて彼の力へと転化する
ーふざけんな、させねぇ
「リクオ様…?」
ーさせねぇ
「リクオ…」
ーこれ以上、オレの百鬼夜行に手ェ出すんじゃねぇ!!
これ以上、犠牲を出させない為の最善の策は百鬼の主である彼自身が土蜘蛛へ立ち向かい、暗雲を斥するに他はなかった
胸の内の更に底から沸き上がる憤怒を撒き散らす様にリクオは大きく咆哮し、目の前の巨体へ飛びかかる。辛うじて妖の名残が伺えるもその大半は殆ど人の姿である
「リクオ様……!」
「ちょ…人間に戻ってない!?」
リクオの身に起こった変化によって、一同に混乱が沸き立つ。羽衣狐によって支配された妖の街、妖気が立ち込めていた為に今まで彼や花雪達は朝になっても夜の姿を意地していた、それが何故――
理由としては淡島がこの地、伏目稲荷神社を守護していた千手百足を倒し、続いて竜二の手によって再び妖気に栓が穿たれたからである。それによって陽の光がこの地に差し込んでいる
「封印だ、ここらは妖気が完全にはれた」
「え…そんなっ。奴良くん…人間の状態で土蜘蛛につっこむ気!?無茶や!!」
ーリクオ!! てめーの畏は土蜘蛛に通用しなかっただろーが!!
妖怪の技は恐怖で決まる、こいつが畏れるはずない…一人で百鬼夜行を壊滅する男だ
「つっこむな!! リクオ!!」
高度な策や考えが練られた訳でもないリクオが取った行動は何とも原始的な形をしていた。今、彼は怒りに身を任せ、完全に衝動だけで動いている状態だった
それがただの特攻と読み取った土蜘蛛は目の前に迫るリクオを容易く蹴散らそうと無造作に拳を打つ、平等な程にその攻撃も単純な造りとして振るわれる
誰もがリクオが土蜘蛛に押し負ける――そう思われた時に鈍い音が響いた。それは決してリクオが土蜘蛛の拳に討たれたものではなく――リクオが一閃によって土蜘蛛の指の一本が切り飛ばした際に生じた音だった
「ム」
今までただの一度も、誰の攻撃も受け止めてきた土蜘蛛の指を切り落とした。その事は一本の指をなくした本人も想定しなかった事らしく、気の抜けた声が漏れ出た
祢々切丸によって指を落とされたのか、そう考えが追いついた瞬間に切断面から浅黒い血液と妖の力そのものである畏が雨の様に噴き出した。リクオがとうとう、土蜘蛛へ太刀を届かせたのだ
「え…」
「な…っ」
ここに至るまでの間、好き勝手に百鬼を弄んでくれた鬱憤に漸く一矢を報いたリクオ。驚くべき所は彼の姿が妖ではなく、人の姿でやり返したという事実か
「リ…リクオ様……!!」
「斬った……!?」
「土蜘蛛を…斬った―――ッ!?」
妖の姿ならまだしも人の姿で土蜘蛛の虚を衝いた、まだ反撃の目は残っている――
小さな、けれど大きな一撃を目の当たりにした百鬼が攻撃を直に受けた土蜘蛛や土蜘蛛に一泡吹かせたリクオ以上に沸き立つ
「……」
「な、今何したんだ…?」
ー祢々切丸
『竜二…ゆら、見とけ。あれが祢々切丸や…』
「……なんだ…こりゃ」
体内から血と共に吹き出る畏、今までに目にした事のない力の正体に辿り着けずにいながらも、間髪入れずに土蜘蛛は目の前のリクオへと鋭い蹴りを放つ
だがその攻撃が今まで効かなかったリクオの畏の前に霧散する。今の反撃によって、土蜘蛛が片足程に彼の調子に飲まれた事を指していた。分はリクオへ傾き始めている
「リクオ様!!」
「土蜘蛛の奴…効き始めた!?」
ーこれは…見たことがある
以前…昼と夜が混ざり合い…
「うおおおお、おおおおお」
それは以前、東京へ四国八十八鬼夜行が襲来した時の事。その組長である玉章との最終決戦で起こった現象である
長い夜をかけて行われたその戦いの最中、夜が明けた事でリクオは妖怪から人の姿へ戻りかけた、言わば妖と人の中間にある状態――それが今回も土蜘蛛との戦いで僅かながら反撃の兆しを見せつつあった。しかし、