第四十九幕 神奈備でさえも身を翻す
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「………オレの名は土蜘蛛」
ー土、蜘蛛…?!
「強ぇ奴とやりに来た次第、こんだけいりゃー誰か骨のある奴ぁーいるんじゃあねぇか?」
今までの傍若無人っぷりが嘘かの様に妖、土蜘蛛はこの地へ訪れた理由を語った。この百鬼の主であるリクオから目を反らさぬままに
一方、土蜘蛛という名を耳にした花雪の顔から表情と血の温かみが消え去る。その名前がはったりでなく、真実だとしたら…自分達は間違いなく"破壊されてしまう"
「お前か」
主から反れた目は幹部である首無を見、次に黒田坊を映す
「お前か?」
その他にイタクや淡島を見下ろし、土蜘蛛は凶悪に笑む
やはりこの場所は最高の餌場だと、自分の腹を満たすに相応しい場所だと確信を持ってしまったから
「女でもいいぜ、戦える奴ァ全員オレの敵だ」
「くっ…」
「貴様ー!!」
「なめないで」
あからさまな格下の扱いを隠しもせずに放つ土蜘蛛の言葉に容易く乗せられ、冷麗達がその言葉を後悔させんと買い言葉に売り言葉と凶悪に歪む面を睨む
「バァカ!! てめーらはすっこんでろ!! オレがやる!!」
「だめ、リクオ!一人じゃ…この妖には!」
今まで何を見てきた、とその力の前に今にも噛み付かんと闘気を昂る氷麗達を宥め、自身は祢々切丸に畏を纏い、土蜘蛛へと立ち向かう。彼女達を退かせたリクオも分かっていなかったのだ、土蜘蛛と自分の力の差というものを
奇しくもそれが分かっていたのはただ一人、小妖怪と同じ程の力しか持たない花雪だけだった。リクオと同じ場に立てない少女の声はぶつかる畏の流れの中で有耶無耶となった
「四百年振りの百鬼夜行"破壊"、強者は見つからなかったが…楽しいモンだ。ん…」
全てが破壊され尽くされた瓦礫の山が妖気の切れ目からこぼれる朝日に照らされている、最初の襲来が可愛いものと思い返される程にそれは印象深いものであった
白煙が名残として立ち上る山の上に腰を下ろし、悠々と煙管を吹かしていた土蜘蛛がただ一人、あの中で無傷で済ませていた秀元を見つけた
「てめーは…四百年前、オレを封じた…
土蜘蛛という災厄によって齎された惨状を目の当たりにしても、奴良組に向けられていた空腹感が自分に向けられても秀元の笑みは途絶えない。以前、土蜘蛛を封印出来た為に彼の敵にも見られないという事だろうか
秀元の背後にある事で土蜘蛛の目に届かずに難を逃れたゆらと彼女を守り抜いた竜二が瓦礫の下から顔を出す。難を逃れたと言っても、二次災害に巻き込まれ、彼の腕の一本が犠牲になった様だが
そして違う方向の瓦礫の下から朝日とは違う、それよりも尚柔らかい光が覗く。さながら太陽の出現によって存在が薄まった月といった所か
そこには守護に特化した花雪の鬼憑によって全滅を免れた奴良組の面々があの破壊の底から這い上がって来ていた
ーあかん!あかんで
ー土蜘蛛は戦ったらあかん…!!―
何故、這い上がって来てしまったのか
何故、瓦礫の下に隠れたままで厄が通り過ぎるのを待てなかったのか――秀元の表情がそう、物語っていた
神奈備でさえも身を翻す
(冥土にも行けぬままに)
(魂までも喰らい尽くされてしまうから)