第四十八幕 朝靄に織られし六つ手の天災
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「ひでもと~~~~~~~~」
『ん』
「何やねん、急に飛び降りて――――!!
この牛車の式神、どしたらええんや―――――!!」
聞こえて来た方へと視線を上げてみるとそこには上空に停滞し、身動きが取れない牛車の中に取り残されたゆらが窓より乗り出していた
言うまでもなく、その牛舎は式神の類いに間違いない。現にそれを維持するだけで精神力が大分削られている様で声を荒げる彼女の頬には雫状の汗が伝っていた
『ゆらちゃんも下りてきたらええやんか』
「あんたなー!! 式神のくせに自由すぎるわ!!」
「…………ゆら?」
「ゆらちゃん?!」
「ゲ……奴良くん……それに月夜見さんまで……」
「へ」
本家でリクオと彼が連れる花雪と百鬼夜行が現れた報告は受けていた、だがその目で彼らの姿を確認し、報告が正しかったとゆらは知る
二人の姿を目の当たりにし、狼狽えるゆらの背後で今まで影に隠れていたもう一人分の後頭部が花雪達の名前に反応し、牛車の主を押しのけ、二人の見知った顔を出した
「ああ!! 花雪様、リクオ様~~~~!! お久しゅうございます~~~!!」
「つらら!!」
「え、え?どうしてゆらちゃんと一緒に!」
「んお」
「邪魔くさいな、アンタ」
そんな視線が、興味が働きかけている事を知らない当の本人達はというと式神の意地の為に精神力を削られ、ストレスが溜まる一方のゆらには氷麗の能天気さが勘に触った様だ
パァン、とハリセンを使う要領で「沈」と描かれた護符を氷麗へ張り付け、口論の始まりの切っ掛けを与えてしまった
「ひっどい!! 何てことを!! せっかくの再会なのにィ
人でなし!! この人でなし!!」
「なんだなんだ」
「妖怪に言われたないわ!! "消えろ"!! 滅したる!!」
『あ、消えろって言った』
口論がヒートアップの一途を辿る中でゆらはとうとう、その言葉を先走ってしまった。先程、男ー秀元が言った、牛車の式神を解除する単語の一言を
一度、言葉にしてしまったものは取り消す事は出来ず、ゆらが図らずも言葉にしてしまった解除の念を受けた式神は煙に巻かれ、取り残されていた二人は中空へと放り出される
「ひえっ!!」
「あ、危ない!」
「おおい」
「チッ」
このままでは地上に叩き落とされてしまう身内の危機にリクオと竜二が言葉少なく、地を蹴って飛び出す、全ては彼女達を受けとる為に
腕の中に収まる寸前、変化の術を解いた氷麗が雪女という妖怪の姿に帰化した反動を利用したおかげで事なきを得、久し振りとなるリクオと花雪の再会に心を綻ばす
「リクオ様♪」
「おっ…大丈夫か」
「つららちゃん!怪我、してない?」
「花雪様もお変わりなく…安心しました、共に遠野を出られたのですね!お体を案じておりました!
きっといらっしゃると信じておりましたよ」
氷麗が抱く、リクオと花雪に置いた全幅の信頼がその言葉の一つ一つから容易く汲み取る事が出来た。表に出しても尚、出し切っていない信頼は彼女の微笑から熱の様に伝う
だがそれは一見すると恋い慕う人との再会に胸を躍らせる少女の様で、花雪の手前とあってか首無が咳を置いた
「……つらら」
「あ!あの、清十字団の方は大丈夫です!! ずっと青田坊が見守ってますから
そ、それと。はい!! 文です」
「文?」
「ずっと書きためてました…着いたときに状況がわかるようにと!!」
「わっ、こんなにいっぱい書いてくれたの?」
首無に嗜められ、自分でも今の行動は場違いと悟った氷麗は自分の行動をもみ消すかの様に懐に忍ばせておいたものをリクオや花雪に手渡す
それは何通にも渡る文で文面を二人で改めた所、数多くしたためておいたというのに一切も同じ内容が記されていない所は何とも氷麗らしい、細やかな処置だと思わされた
[拝啓 花雪様。遠野は寒いところときいております]
[拝啓 リクオ様。私、ケーカイン家に入って今…]
[リクオ様、花雪様。京の都は今不吉な雲におおわれ、妖の気配でみちております
黒羽丸が再び本家にもどり…]
「……」
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